現WBA世界フライ級王者のプロボクサー、井岡一翔(かずと)選手。2011年2月に国内史上最速となる7戦目で世界チャンピオンに輝いたのを皮切りに快進撃を続け、2015年4月には世界最速となるプロ18戦目での三階級制覇を成し遂げた。ボクシング界…

現WBA世界フライ級王者のプロボクサー、井岡一翔(かずと)選手。2011年2月に国内史上最速となる7戦目で世界チャンピオンに輝いたのを皮切りに快進撃を続け、2015年4月には世界最速となるプロ18戦目での三階級制覇を成し遂げた。

ボクシング界で注目され続ける逸材は、リング外では試合で見せる鋭い表情は消え、おだやかな口調で話す27歳だ。これからの試合も気になるが、世界チャンピオンは日々をどのように過ごしているのだろうか。井岡選手のライフスタイル、好きなファッション、音楽、そして今後のプランを聞いた。

井岡一翔選手
---:ボクシングを始めたきっかけは何ですか?やはり元世界二階級王者である叔父の井岡弘樹氏の存在が大きかったでしょうか?

井岡:そうですね。それがやはり一番影響としては大きかったですね。始めたのは中学1年です。

---:それまでほかのスポーツはしていましたか?

井岡:野球もサッカーもしていましたね。

---:ボクシングを始めてから、どんな選手に注目していましたか?

井岡:身近に叔父さんがいた。僕がボクシングを始めた頃には現役を引退していましたが、残っている映像で観ていました。国内で試合をした日本の世界チャンピオンの方の試合を観ることもありましたが、目が行くのは海外の選手が多かったですね。

---:印象に残っている海外の選手は?

井岡:ここ最近ですと、フロイド・メイウェザー選手ですね。

井岡一翔選手 (c) Getty Images
■休日はボクシングのことは考えない

---:ボクシングは年間で数試合しか行いませんが、普段はどのような生活をしていますか?

井岡:普段はトレーニングの積み重ねですが、体を休めたりケアもします。食事に関してもそうですが、すべてが今のボクシングに通じるものがある。ほとんどの時間はボクシングという職業に費やしている感じ。

---:週に休みは?

井岡:日曜日は休んでいます。

---:体のトレーニングのほか、メンタルを鍛えるためにしていることはありますか?

井岡:すべてが気を抜けないので、気持ちのメリハリだとか、オンオフの切り替えも大事だと思う。これをやると決めたことは、練習以外でもそうですが、やると決めたことはしっかり一日のスケジュールのなかでやっていく。それが僕は大切だと思います。

---:オンオフという言葉がありましたが、休日はどのように過ごしていますか?

井岡:休日はボクシングのことは極力考えずに、試合から離れている時は買い物に行ったり映画を観たり、自然と触れ合ったり。ボクシングから離れたことをしますね。

---:趣味はショッピングだそうですが、今欲しいものはありますか?

井岡:今は欲しい時計があって、それを買おうかなと思っています。

---:時計はたくさん持っているのですか?

井岡:21歳でチャンピオンになれた時から時計はいろいろ買いました。今はシックで歴史のある、歳をとっても着けられる時計を好むようになりましたね。

---:買おうと思っている時計のブランドは?

井岡:AP、オーデマ ピゲです。

【次ページ リングに上がった瞬間に会場と一体化したい】

■リングに上がった瞬間に会場と一体化したい

---:普段のファッションについて教えてください。どんなスタイルが好みでしょうか?

井岡:自分の個性というか、似合う似合わないがあると思うのですが、シンプルでカッコいいのが好きですね。着てる格好がガチャガチャしていない、さりげないカッコ良さが好き。

---:今日はアディダスの新作『Z.N.E. HOODIE(フーディー)』を着ていますね。アスリートが集中できるように開発されたウエアと聞いています。使用感はどうですか?

井岡:まずデザインがカッコいい。コンセプトとしている「集中」が選手のメンタルに寄り添っている部分が、僕たちには嬉しい。普段からどのアスリートも意識している部分だと思うので、内面的なところ以外でも、ファッション性の部分でも身につけたり寄り添ってもらえるのは、よりやりがいにつながります。

---:大きめのフードが特徴的ですが、フードのメリットは?

井岡:ボクサーはフードのイメージが強いじゃないですか。普段からもろに“フードを被っているボクサー”というのに酔いしれるのは好きじゃない。けど、僕は試合の時は、ほぼガウンでもフードを着けている。自分の空間で、リングに上がるまではそこだけを見ていたい。リングに上がった瞬間に、やっと会場と一体化したい。

リングに上がるまでは自分だけというか、もちろん控え室には自分のチームの人がいますが、関係者以外はシャットダウンしたい。でもリングに上がった瞬間には(会場と)リンクして、パフォーマンスとして出していくイメージです。

Z.N.E. HOODIEを着る井岡一翔選手
---:その時はヘッドフォンで音楽を聴いたりするのでしょうか?

井岡:フードだけですね。

---:ではプライベートで、音楽はどんなものを好んで聴いていますか?

井岡:いいと思った音楽は(こだわりなく)聴くので、ぜんぜん知らないアーティストでも、その曲を何かのきっかけで「これいいな」と思ったらケータイですぐダウンロードして聴くタイプ。邦楽も洋楽もどっちも聴きます。

僕はけっこうクルマを運転するのですが、静かな曲を聴きたい時もあるし、メッセージ性のある曲を聴きたい時もある。音楽的にカッコいい洋楽の時もあるし、その時によって(どんな曲を聴くか)ぜんぜん違う。

---:最近のドライブではどんな曲を?

井岡:最近はクルマではB’zしか聴いていないですね。たまたま後輩がCDを「クルマで聴いてください」と持ってきて。聴いてみたら、やっぱりあれだけ支持されている方だけあって、生きてきて初めて聴いたわけでもないし、学生の頃は聴いていたけど、このタイミングで聴いたら改めてカッコいいな~と。(以前聴いていた時と今聴いてる時では)歌詞の入ってくる感じが違う、それが楽しい。

---:今一番ハマってるものは何ですか?

井岡:なんだろ…。クルマはもともと好きだし、靴も好きだし…(と考え込む井岡選手)。

---:それでは、好きな食べ物は?減量など気にせず食べたくなるものはありますか?

井岡:唯一、旅行に行った時に食べるのはパンケーキですね。

---:パンケーキ!甘いものはお好きですか?

井岡:もともとは好きでした。ボクシングを始めて食に対する意識も高くなっているので(普段は)食べないですけど。試合が終わって、旅行に行って食べるパンケーキは美味しいですね。

【次ページ 自分の強さを、成長を感じたい】

■エネルギーをもらったリオデジャネイロ五輪

---:リオデジャネイロ五輪はご覧になりましたか?

井岡:もちろん観ていました。出場する選手はそこ人生をかけていたり、ストーリーがあると思うのですが、客観的に観る僕たちからすれば大きな楽しい大会として観させてもらいました。

そこにはぜんぜんルールのわからない競技があったり、オリンピック4度目の優勝とか、いろんなことがあってすごい刺激になる。あれを観て考えさせられるし、何気なくは観れない。すごいエネルギーをもらいました。

---:印象に残った競技は?

井岡:体操ですね。内村航平選手は同い年だし、スタートは鉄棒で落ちてしまったけど、大逆転で金メダルを獲って。どう言っていいかわからないですけど、言葉のつまる感動をもらいました。

井岡一翔選手 (c) Getty Images
■自分の強さを、成長を感じたい

---:ボクシングは他の競技と違い、対戦相手と直接拳をぶつけ合います。立ち向かっていく気持ちを奮い立たせる秘訣はありますか?

井岡:(試合の)当日に何を思ってもすでに遅いと思う。いかに自分と向き合って、自分に嘘をつかずにやってきたということが、それが事実になる。それがあれば当日の自分にどんな言葉をかけても奮い立つと思うので、普段の、毎日の積み重ねが自分を奮い立たせる一番のものじゃないかな。怖さというものは(試合当日は)なくなっている。

---:井岡選手にとって、ボクシングの一番の魅力は?

井岡:まずは男として生まれて、何か強さとか、何か特化したものを求めるなかで、ボクシングという格闘技で強さを証明することは男としてのステイタス、魅力という部分ではすごく強い魅力だと思う。それでなおかつ、ぼくは叔父さんが身近にいて、やりたいと思って、それが自分の職になったことはすごい幸せ。個人競技でリングにふたりだけが立って、どちらかが勝つということにも魅力を感じます。

---:今後の目標を教えてください。

井岡:具体的な目標というのはちょっとわからないですね。この階級で強さを証明したい、じゃあどうすればいいかというと統一チャンピオンとか、それは考えますけど。三階級を制覇したように、必ずこの階級で統一チャンピオンになるためにやっていきたいというこだわりはないし、目標というか、強くなりたいし、強くなれると思うから今はやっているので。

目標というより自分の強さを、成長を感じたい。感じるために頑張って、応援してくれる人や世の人に伝えられるものがあれば、それだけでやりがいはあるんじゃないかなと思います。

●井岡一翔(いおか かずと)
プロボクサー。1989年3月24日生まれ、大阪府出身。アマチュア時代に東京農業大学へ進学、北京五輪代表選考で敗れたことで2年で退学を決意。プロデビュー後は6戦全勝で日本ライトフライ級チャンピオンを獲得し、国内史上最速となる7戦目でWBC世界ミニマム級チャンピオンに輝いた。2012年12月にWBA世界ライトフライ級で二階級制覇、2015年4月にWBA世界フライ級で三階級制覇。

協力(取材):アディダス ジャパン

井岡一翔 参考画像(2015年4月22日)

井岡一翔 参考画像(2015年4月22日)

井岡一翔 参考画像(2015年9月27日)

井岡一翔 参考画像(2015年9月27日)

井岡一翔選手撮影:五味渕秀行

井岡一翔選手撮影:五味渕秀行

井岡一翔選手撮影:五味渕秀行

井岡一翔選手撮影:五味渕秀行