Why JAPAN? 私が日本でプレーする理由ベガルタ仙台 シマオ・マテ(3)Jリーグは現在、じつに多くの国から、さまざまな外国籍選手がやってきてプレーするようになった。彼らはなぜ日本でのプレーを選んだのか。日本でのサッカーや、日本での生活…
Why JAPAN? 私が日本でプレーする理由
ベガルタ仙台 シマオ・マテ(3)
Jリーグは現在、じつに多くの国から、さまざまな外国籍選手がやってきてプレーするようになった。彼らはなぜ日本でのプレーを選んだのか。日本でのサッカーや、日本での生活をどう感じているのか? この連載では、彼らの本音を聞いていく。
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パトリック・エムボマ(カメルーン/元ガンバ大阪、東京ヴェルディ、ヴィッセル神戸)、セイドゥ・ドゥンビア(コートジボワール/元柏レイソル、徳島ヴォルティス)、ピーター・ウタカ(ナイジェリア/現京都サンガ)──。
「Jリーグにもっとアフリカ人が増えてほしい」と語る、シマオ・マテ
ベガルタ仙台の元モザンビーク代表シマオ・マテは、これらアフリカ出身の先達を心から尊敬している。彼らが切り開いてくれた道によって、自身がJリーグでプレーできるようになったと感じているのだ。
「彼らはアフリカ人選手にJリーグへつながる道筋をつくってくれた。先人たちの活躍があったからこそ、アフリカ人の能力が認められたんだと思う」
古くからJリーグを観てきた人は、エムボマらが披露した数々の超人的なパフォーマンスを覚えているはずだ。とくにリーグ5年目の1997年シーズンに、”浪速の黒豹”の愛称で親しまれたエムボマが見せた圧巻のプレーは、ファンの記憶に刻まれただけでなく、Jリーグ全体のレベルを上げることにもつながったと言える。
優れたフィジカルと運動能力、柔軟性を備えるアフリカ人選手たちは、時に我々の想像を超えるプレーを見せてくれる。現在のJリーグにアフリカ人選手は多くいるが、その数が増えれば、きっと特別な彩りを与えてくれるのではないだろうか。
「うん、僕もそうなってほしいと思うよ」とシマオはにこやかに同調する。
「アフリカには現在も、大きなポテンシャルを宿す選手がたくさんいるんだ。ヨーロッパのクラブはずいぶん前にそれに気づき、アフリカのさまざまな場所にスクールをつくったり、現地のクラブと提携を結んだりしている。モザンビークやアンゴラといったポルトガル語圏では、主にポルトガルのクラブがそうした活動を展開しているよね。ベンフィカやスポルティング、ポルトといった名門を筆頭に。
だから日本からも、同じようなことをするクラブや人が現れるといいと思う。地理的に遠く離れたアフリカが、もっと身近になると思うんだ。それは将来的に、日本のクラブやリーグの利益につながるはずだよ。最初は当然、リスクがあると思うけど、いずれよかったと思える日が来るんじゃないかな。Jリーグには南米、とくにブラジル出身の外国籍選手が多いけど、反対側の大陸にも目を向けてくれるようになればいいな」
では、もし縁があって日本行きの可能性を検討している外国籍選手に、シマオはどんな言葉をかけようとするのか。
「とにかく、おいでよ」と言ってシマオはまた声を出して笑った。
「ここには質の高い生活とフットボールがある。何も不自由のない安全な日々と、競争力が高くやりがいのあるリーグ、そしてプロフェッショナルなクラブとチームメイト、たくさんのすばらしいファン……。これ以上に、何が必要だと言うんだい?(笑)。もし迷っているのなら、すぐに決断して、ここでハードワークを続けたほうがいい。ピッチ上で存在価値を証明すれば、サポーターはさらにリスペクトしてくれるよ。このメッセージが本当に届けばいいんだけど」
それはシマオ自身が経験したことでもある。1年目の序盤戦はやや適応に苦しんだものの、6月以降は完全にチームの主軸になった。ただし本人は、まだまだ日本のことを知りたいと言う。
「すいぶん慣れたけど、今も毎日、日本と仙台のことを理解しようとしているよ。僕がよりこの国を知るようになれば、日々はもっと楽しくなるはずだし、ピッチ上でもっと活躍できるようになると信じているからね」
シマオ・マテは日本人選手たちに
「もっと自分を信じて恐れずに進んでほしい」と語る
これまでの経験から、シマオはそう確信を持って言う。そして、逆に日本から海外へ渡って挑戦する選手たちにも、次のようなアドバイスを送る。
「ここ数年、日本からヨーロッパのクラブへ移籍する選手が増えているよね。その多くは、若手選手たちだ。彼らは非常に高い能力を備えているので、それを発揮できれば、大抵のリーグで重宝されることになると思う。ただし、そのためには、異なる文化や生活、メンタリティーに順応しなければならない。いくら良質のクオリティーを備えた選手でも、そこがうまくいかなければ、成功はできないだろう。
それから、これは日本人選手全般に言えるけど、もっと自分の能力を信じたほうがいい。自信を持てないと、プロでは成功できない。僕が思うに、日本人はプロ選手でも、周囲のことを気にしすぎてしまうところがある。でもこの世界では、何かを待っているようではダメなんだ。自分で決めて、自分で行動し、自分の意志を貫いていく。サッカーはボールの奪い合いであるだけでなく、チャンスの奪い合いでもあるのだから。自分のやっていることに集中して、自分と仲間を信じ、恐れるずに突き進んでいく。これが大事だと僕は思うな」
(おわり)
シマオ・マテ
Simao Mate/1988年6月23日生まれ。モザンビーク・マプト出身。ベガルタ仙台所属のMF&DF。19歳の時にギリシャのパナシナイコスでキャリアをスタートさせ、ヨーロッパとアジアで活躍。2019年シーズンから仙台でプレーしている。パナシナイコス(ギリシャ)→山東魯能(中国)→レバンテ(スペイン)→アル・アハリ(カタール)