昨年のワールドカップに出場した日本代表選手や世界のスターが共演し、盛り上がりをみせているラグビー「トップリーグ」。1月18日に行なわれた第2節では、王座奪還を狙うパナソニック ワイルドナイツ(昨季6位)と初優勝を狙うトヨタ自動車ヴェルブリ…

 昨年のワールドカップに出場した日本代表選手や世界のスターが共演し、盛り上がりをみせているラグビー「トップリーグ」。1月18日に行なわれた第2節では、王座奪還を狙うパナソニック ワイルドナイツ(昨季6位)と初優勝を狙うトヨタ自動車ヴェルブリッツ(昨季4位)の強豪同士が激突した。



W杯で人気者となった稲垣啓太と姫野和樹が激突

 会場は愛知・豊田スタジアム。ラグビーの試合はワールドカップ以来で、トップリーグでは今シーズン唯一の開催となる。

 トヨタ自動車はキャプテンのFL(フランカー)姫野和樹など日本代表3人、パナソニックはPR(プロップ)稲垣啓太、WTB(ウィング)福岡堅樹ら日本代表6人。強豪国のスター選手も合わせればワールドカップ戦士14人が出場することもあって、豊田スタジアムには37,050人もの大観客が集った。この数字は、17年目のトップリーグで史上最多記録である。

 地元開催で前売り券がほぼ完売したことについて、姫野は「ガッキー(稲垣の愛称)人気じゃないですか?」とコメント。強敵との対戦について、「パナソニックを倒すことしか考えていない。たくさんのホームのファンに喜んでもらえるように、勝ちにこだわってやっていきたい」と腕を撫した。

 一方、その「ガッキー」こと稲垣も日本代表のチームメイトと戦うことに関して、「敵ですから」と気持ちを切り換えていた姿が印象的だった。

 試合は、攻守ともにスキルの高いすばらしいものとなった。

 先制したのはパナソニック。前半2分、ワールドカップで南アフリカ代表の優勝に貢献したCTB(センター)ダミアン・ディアリエンディがトライを挙げて7−0とする。

 しかし、その後はホームの大声援を背にしたトヨタ自動車が主導権を握る。守備でパナソニックのアタックをしっかり止め、攻撃では南アフリカ代表FB(フルバック)ウィリー・ルルーのキックによるゲームコントロールも冴えた。前半だけで2トライとPG(ペナルティゴール)を決めて、逆転に成功する。

 後半早々、パナソニックにトライを許したものの、トヨタ自動車は後半14分、ルルーの裏へのキックをWTB小原政佑が拾ってインゴール。再び6点ものリードを確保した。

 だが、残り25分頃からパナソニックに流れが傾く。トヨタ自動車にとって痛かったのは、ニュージーランド代表でキャプテンを務めていたNo.8(ナンバーエイト)キアラン・リードが前半で負傷交代したことだ。選手たちに疲れが見えてくると、パナソニックの圧力の前に反則を繰り返すようになった。

 また、パナソニックの選手層の厚さも、後半になって盛り返せた要因のひとつだろう。

 主将のHO(フッカー)坂手淳史が「リザーブの選手がすばらしい仕事をしてくれたので、相手との差をつけられた」と誇ったように、HO堀江翔太やSO(スタンドオフ)松田力也の日本代表、さらにはオーストラリア代表FLデービット・ポーコックが後半から入ってチームに勢いを与えたことも大きかった。

 パナソニックは後半22分、31分と連続してトライを挙げて28−20と逆転。トヨタ自動車も意地を見せて姫野が自陣ゴール前でジャッカルを成功させたが、後半37分にパナソニックの「韋駄天」福岡にインターセプトからトライを許してしまい勝負あり。

 その後、ラストプレーでもパナソニックはトライを挙げて、終わってみれば計6トライ。スコアも40ー20で3トライ以上差となるボーナスポイントも加え、勝ち点10で首位に立った。一方、トヨタ自動車は開幕節のヤマハ発動機ジュビロ戦に続き、苦しい連敗スタートとなってしまった。

「ボーナスポイントを取って勝てたのが、今日一番の成果。たくさんのお客様が来てくれて、そのなかでパナソニックのラグビーを見せられた」

 試合後、稲垣は決して笑顔を見せることなく話し、こう続けた。

「(日本代表との違いについて)あえて変えないようにしている。今までやってきたことをやるだけ。準備から高いレベルでやることを代表で経験したが、とくに(パナソニックでも)変えたりはしていない。

 日本代表があれだけ応援されたのは、全勝で(予選プールを)勝ち上がったからだと思う。選手はグラウンドでしか表現、アピールできない。だから、結果にフォーカスする」

 相手チームには姫野を含めて日本代表が3人いたが、試合は楽しかった? そう聞いても、稲垣の表情は変わらない。

「敵ですから(プレーしていても)楽しいと思ったことはない。まだまだ2試合目で、試合は続いていきますから」

 同じ質問を、姫野にも投げかけてみた。すると、姫野は表情を崩し、こう答えた。

「変な感覚でしたが、面白かったですね! 試合前はたわいもない話をしました。(福岡)堅樹にやられて最悪でした。ガッキー、笑わなかったですね!」

「笑わない男」稲垣と「ジャッカル」姫野——。ともにFWということもあり、身体をぶつけ合うシーンもあった。ふたり対決は、今回は稲垣のいるパナソニックに軍配が上がった。