NFLプレーオフはワイルドカードとディビジョナルラウンドが終わり、いよいよ今週末にはスーパーボウル進出を賭けたカンファレンス・チャンピオンシップが行なわれる。

 ワイルドカードとディビジョナルラウンドが行なわれた週末は、ともに驚きを隠せない結果となった。



AFC決勝ではQBマホームズとRBヘンリーが激突

 ワイルドカードでは、過去6年で3度の優勝を誇る「常勝軍団」ニューイングランド・ペイトリオッツ(12勝4敗/今季レギュラーシーズン成績)が敗退。スーパーボウル常連のQB(クォーターバック)トム・ブレイディが早々にポストシーズンから消えることになった。

 ディビジョナルラウンドでは、今季のリーグを席巻してきたQBラマー・ジャクソンが率いるボルチモア・レイブンズ(14勝2敗)が敗れた。だが一方、同じく優勝候補のカンザスシティ・チーフス(12勝4敗)は24点差から大逆転劇を演じ、なんとか生き残った。

 あらためて、一発勝負のポストシーズンの怖さを知った週末だった。

 いずれにせよ、ついに4強が出揃った。AFCは第2シードのチーフスと第6シードのテネシー・タイタンズ(9勝7敗)、NFCは第1シードのサンフランシスコ・49ers(13勝3敗)と第2シードのグリーンベイ・パッカーズ(13勝3敗)という顔ぶれとなった。

 第54回となるスーパーボウルの開催地は、フロリダ州マイアミガーデンズ。今回は試合のカギを握る選手を挙げつつ、各チームが武器とする「勝利の方程式」を紹介したい。

 まず、チーフスが誇る”ワンツーパンチ”は、昨季のリーグMVPを受賞したQBパトリック・マホームズと、今季レシーブ1229ヤードとワイドレシーバー(WR)並の距離を記録したTE(タイトエンド)トラビス・ケルシーだ。このコンビはNFLでも1、2を争うホットラインである。

 強肩、走力、クリエイティビティ……マホームズはQBとしての能力をすべて兼ね備えている。そんなQBが信頼を寄せる相棒が、196cmの長身ながら卓越したスピードを誇り、抜群の捕球力も有するケルシーだ。このふたりのコンビネーションを止めるのは、非常に困難だ。

 ディビジョナルラウンドのヒューストン・テキサンズ(10勝6敗)戦は、まさにこのふたりで勝ったと言っても過言ではない。序盤に0−24という絶望的なリードを許してしまう展開となったが、マホームズからケルシーへのTD(タッチダウン)パスを第2クォーターだけで3本通して逆転。最終的に51得点も奪い、恐ろしい爆発力を見せつけた。

 マホームズは今季、20ヤード以上のロングパスTDをリーグトップの12本も決めている。それは、ケルシー抜きには考えられない数字だ。1試合平均得点リーグ1位のレイブンズがディビジョナルラウンドで消えた今、チーフスに第4回大会以来となるスーパーボウル進出のチャンスが訪れた。

 対するタイタンズは、AFCで最下の第6シードながらワイルドカードでペイトリオッツ、ディビジョナルラウンドでトップシードのレイブンズを撃破し、最も勢いに乗っている。

 その快進撃の源は、今季ランでNFLトップの1540ヤードをマークしたRB(ランニングバック)デリック・ヘンリーだ。ペイトリオッツ戦では182ヤード、レイブンズ戦では195ヤードと大暴れ。スターQBによるパス重視の時代が続くなか、タイタンズは重戦車のような男のグラウンドゲームで勝ち上がってきた。

 ヘンリーは身長192cm・体重112kgと、現代のNFLでは異例と言えるほどの巨体を誇る。だがその一方、40ヤードを4秒5で走る俊敏性も兼ね備えている。

 ヘンリーを止めるために、相手チームはボックス(攻撃ラインの前方5~10ヤードに仮想される箱状のエリア)に通常よりも多い8人もの守備陣を配置して対処しようとするが、それでも突破されてしまう。ボックス内に8人のディフェンダーがいる状況で、今季のヘンリーはラン1回平均5.0ヤードを記録。これはリーグ1位の数字だ(米フットボールサイト『プロフットボールフォーカス』調べ)。

 そのヘンリーの影に隠れる形ながら、今季驚くべき働きを見せているのがQBライアン・タネヒルだ。タネヒルは今季マイアミ・ドルフィンズ(5勝11敗)から移籍してきたが、開幕時は2015年ドラフト全体2番目指名のマーカス・マリオタの控えだった。

 しかし、マリオタの不調で出場機会を得ると、そのチャンスを活かしてチームを蘇らせる働きを見せた。パサーレーティング(117.5)でリーグ1位をマークするなど、31歳にして本人も驚く奇跡的なシーズンを送っている。

 対戦するチーフスは、ランディフェンスがさほど強くない(今季1試合平均ラン喪失距離128.2ヤードはリーグ26位)。ヘンリーを中心としたタイタンズ・オフェンスが機能すれば、勝負できるかもしれない。1999年シーズンのポストシーズン、タイタンズは第4シードからスーパーボウルへと到達した。低いシードから再び、大舞台まで駆け上がることができるか。

 一方、NFCのチャンピオンシップ・カンファレンスは「第1シードvs第2シード」という順当なカードとなった。

 今季の49ersは、ペイトリオッツ時代に「ブレイディの後継者」と称されたQBジミー・ガロポロを中心に、高い得点力(リーグ2位の今季平均29.9得点)で白星を積み重ねてきた。ただ、パッカーズとの決戦ではディフェンスがカギを握っていると見る。

 49ersの今季平均喪失ヤードはリーグ2位(281.8ヤード)。パスディフェンスにいたっては1位(169.2ヤード)と優秀な成績を残している。強烈なパスラッシュを武器とするディフェンス陣において、注目すべきはニック・ボーサとディー・フォードのDE(ディフェンシブエンド)コンビだ。

 パッカーズとの試合では、プロ1年目のボーサのパフォーマンスを見逃してはならない。ディビジョナルラウンドのミネソタ・バイキング(10勝6敗)戦で、49ersは相手オフェンスに147ヤード、7度のファーストダウンしか与えなかった。その中心にいたのが、2サック、3度のQBヒットを記録した22歳のボーサだ。

 そのボーサが「相手に恐怖を与える存在」とリスペクトするフォードは、ハムストリングの故障でシーズン終盤になって欠場を強いられていた。しかし、ディビジョナルラウンドで1か月ぶりに復帰し、1サックをマーク。フォードの心強い復帰によって、ボーサはさらにグラウンドで暴れまわりそうだ。

 今季のレギュラーシーズンでは、49ersがパッカーズを圧倒して37-8と完勝。パッカーズのエースQBアーロン・ロジャースから5サックを奪い、パスもわずか104ヤードに抑え込んだ。得意のパスラッシュが炸裂すれば、第47回大会以来となるスーパーボウル出場も自ずと見えてくる。

 それに対抗するために、ロジャースはWRダバンテ・アダムズとのホットラインの精度をより高めないといけない。

 歴代パサーレイティング1位(102.4)を記録しているロジャースは将来、間違いなく殿堂入りするだろう。だが、今季の個人成績は自身のスタンダードを下回り、やや衰えた印象を与えた。

 しかし、そんな周囲の雑音をロジャースは意に介さない。ディジョナルラウンドでは「ロジャースがロジャースたる」ところを証明するかのような、満点のパフォーマンスを披露した。

 ハイライトは第4クォーターだ。相手のシアトル・シーホークス(11勝5敗)に5点差まで追い上げられ、試合時間は残り2分19秒、サードダウン、残り9ヤード。ここでファーストダウンを更新しなければ、シーホークスに逆転の余地を与えてしまう状況だった。

 だが、ここでロジャースは難しいパスをアダムズに通し、ファーストダウンを獲得。全盛期に何度も見せてきた超一流のパスで、試合を決定づけた。

 スナップされる直前、ロジャースは事前に決められていたプレーアクションを瞬時の判断で変更し、アダムズへピンポイントパスを通した。その時の映像を見返してみると、ロジャースはアダムズとアイコンタクトを取っていた。

 試合後の会見で、ロジャースはアダムズとの呼吸を「何も言わなくても伝わる」と話した。49ersは強力なパスラッシュで襲いかかってくるであろうが、熟練の経験を有するロジャースがそれをどうさばくのか注目したい。

 果たして、どのチームが「勝利の方程式」を機能させてスーパーボウルの舞台に進むのか。緊張と興奮の「ファイナル4」の幕がいよいよ上がる。