カタール戦で先発し3試合連続出場となった橋岡大樹「3試合全部出た者として、不甲斐ない結果に終わってしまったと感じています」 AFC U-23選手権の最終戦となったカタール戦後、橋岡大樹はそう話した。表情には悔しさが滲んでいる。ただしフィ…



カタール戦で先発し3試合連続出場となった橋岡大樹

「3試合全部出た者として、不甲斐ない結果に終わってしまったと感じています」

 AFC U-23選手権の最終戦となったカタール戦後、橋岡大樹はそう話した。表情には悔しさが滲んでいる。ただしフィールドプレーヤーで唯一、全3試合にフル出場した選手からは、自然と醸し出されるたくましさが感じられた。

 この大会の数少ない収穫のひとつが、現在20歳のこの守備者の存在にあった。持ち味の運動能力と身体能力がアジアの同世代のなかでも最高のレベルにあること、そして代表でもウイングバック、CB、SBをハイレベルにこなせることをあらためて示した。しかも五輪本番と同じ、中二日のハードスケジュールのなかで。

 これまでの2試合では右のウイングバックを任されていたが、この日は3バックの右に入った。高さと速さを生かして、右の低い位置を防御し、有事の際には鋭いスライディングや体を投げ出すディフェンスで相手を阻止。常に集中を切らさず、ポジショニングにもほぼ狂いはなかったように思える。

「もともとCBをやっていたので、3枚の右はまったく問題ないです。手応えとしては悪くなかった」

 そして前半終盤に田中碧が不可解なレッドカードで退場となると、後半開始から日本は4-2-3とも4-4-1とも表せる陣形を取り、橋岡はライトバックに。ひとり少ない状況で、「難しさはあった」と彼は打ち明けるが、全般的に及第点以上の働きを示せていたと思う。

「もちろんここで、SB、CB、WBができるところを見せられて、五輪(のメンバー入り)という点では、すごく良いアピールになったと思います。でもチームが勝てなかったので、ここに来ていないほかの選手たちにチャンスを与えることになってしまいました。そして僕たちがこういう結果を残してしまったことで、競争はまた激しくなるでしょう。もっと良い結果を残したかった」

 過去2試合のように攻め上がってクロスを上げたり、シュートを打ったりするシーンは見られなかった。それは物足りなかったというよりも、ひとり少ないなかで自身に与えられたタスクを全うしたと言える。

「こっちのサイドはあまり出て行く機会がなかったです。戦術的にも、まずはしっかり守備をしてほしいと言われていました。相手が前に残っていたこともあったので」

 身上の守備面に注文をつけるとするならば、55分にクロスを上げられた際と、相手の同点のPKにつながるシーンか。前者ではクロスにつながるパスを出した相手にもっと寄せたかったし、後者では相手の軽やかなドリブルにボックス内でかわされてしまった。そこは本人も自覚しているようで、「得意な守備面ももっと高めて、こいつなら絶対に任せられると思ってもらえるようになりたいです」と話した。

 ただし橋岡は昨年、浦和レッズの一員としてAFCチャンピオンズリーグを決勝まで戦い、リーグ戦でも負傷離脱期間を除いてフル稼働。12月にはE-1選手権にも参戦している。見る人が見れば、そうした過密日程や移動によって、コンディションが厳しそうだったと思われても仕方がない。実際、そうした質問をぶつけられると、シャープなアスリートは次のように返答した。

「それで済ませられれば、僕たちは簡単に逃げることができる。僕たちはここに戦いに来ているわけで、そんな言い訳をしても誰も認めてくれないと思います。だからそんな言い訳はしたくない。そんなことよりも、全員が個人のスキルを磨き、チームとしての団結をもっともっと高めていくべきだと思います」

 そうした意識の高い言動も、彼の長所だ。この代表では最も年上の世代から数えて4学年下となるが、チームを盛り立てようと声を出したり、手を叩いたりする姿は頻繁に見られた。この日キャプテンマークを巻いた杉岡大暉や後半から出場して熱を感じさせた齊藤未月、そして橋岡といった1998年と1999年組の世代に、リーダーとしての自覚――あるいはどうにかして状況を改善しようとする心意気――が垣間見える。少なくともこの大会に参戦したチームのなかでは。

 明らかに不当な判定がふたつもあったが、「それもこれもサッカー」だと橋岡は言った。敗北を招いたのは、コンディション不足でも不利なジャッジでもなく、「僕たちの力不足」だと言い切る。

「この悔しさを忘れずに、残された時間でしっかり成長して、本大会で目標としている金メダルを取りたい」

 それが実現すれば、この大会の早期敗退の意義も大きくなる。個人的には大風呂敷を広げることに賛同したくはないが、タフに戦い切ったマルチな守備者の言葉には大きく頷くほかなかった。