今季のスキージャンプ女子W杯、第4戦と5戦になる、札幌大会が大倉山ジャンプ台で、1月11日から行なわれた。第2戦で3位になって総合6位につけている高梨沙羅(クラレ)の地元表彰台が期待されたが、残念ながらそれは果たされなかった。それでも高梨の表情は落ち着いていた。

 大倉山では珍しい、追い風の中での戦いとなった大会初日。シーズン開幕からアプローチ姿勢が安定せず苦しんでいたという高梨だが、1本目のジャンプはスムーズに空中に飛び出すと、秒速0.66mの追い風の中で126mまで飛距離を伸ばして3位につけた。



地元・北海道で優勝は逃したものの、得たものがあると語った高梨沙羅

 トップに立ったのは、昨季のW杯ではポイント獲得0で、今季は第2戦で9位になっているのが最高位の、マリタ・クラマー(18歳・オーストリア)の131m。2位はW杯総合2連覇中のマーレン・ルンビ(ノルウェー)で127m。4位と5位までが接戦となった。

 2本目も追い風の条件で、1本目と同じゲートからのスタートながら、高梨は132.5mまで飛距離を伸ばした。空中で少し力んだのか、着地はうまく決められず飛型点は1本目より低い51点で、合計は262.3点だった。

 その他の選手の2本目は、開幕戦2位で総合4位のエバ・ピンケルニッヒ(オーストリア)が134mで最終的に3位。次のルンビは追い風が0.17mと弱まった中で、W杯ヒルレコードの139mの大ジャンプを記録するも2位。1本目トップだった最後のクラマーが、ゲートを1段下げながらも135mで逃げ切って初勝利をあげた。

 高梨は4位という結果を受けて、こう話した。

「年末年始に地元に帰ってミディアムヒルとノーマルヒルの練習をして、そこでスタートの切り出し方を少し変えてみたんですが、それがうまくハマっているという感じです。シーズン最初とは違って、足の裏の感覚を意識しながら素早く自分のポジションに落として込めていると思うし、コーチからもアプローチ自体はよく乗れてきていると言ってもらえているので、今の組み方でやっていこうと思います」

 昨シーズンや今季の開幕戦などは、映像を見ていても踏み切りで上体が少し先に動いている感じがあった。だが、この札幌大会では以前のように一発で飛び出しを決められるようになっていた。その手ごたえを掴んだことが、表情が落ち着いていた理由である。まだ鋭さが足りない点が現在の上位との差でもあるが、そこは高梨もよくわかっている。

「確かにシーズン最初よりジャンプ自体はまとまってきているけれど、まだ自分のジャンプを模索しながら跳んでいる状態でもあります。テイクオフの時も迷いというか、探りながら立っている感覚はぬぐえないので……。もう少しジャンプ台にインパクトを伝えられる踏切ができればいいかなと思うんですけど、そこはもうちょっと本数を飛んで自分のものにしていくしかないかなと思います。まずは、形からうまくまとめていかないと力を伝えられないので、そこはコーチと話し合いながら固めていきたいと思います」

 五輪明けだった昨季は、道具も含めて多くのものを新たに試したシーズンだった。高梨は「本当にまっさらなところから始めたので、何が正解なのかも自分でもよくわからないまま飛んでいた」と振り返る。だが今は、ある程度は自分の目指すジャンプが絞り込めて、方向性も見えつつある状態になってきた。

「シーズンの最初は、アプローチの姿勢からテイクオフまでに重点を置いてやってきましたが、年末年始に修正したことで、少し先も意識できるようになりました。でも、まずはやってきたことを自分のものにして、何も考えなくても体が動くようにしていかなければいけないと思う。その点ではまだ30~40%くらいかなと思います。まだまだテイクオフでも自信を持って踏み切ることができていないので、空中に出た時もそれが(自信のなさが)出てしまって、不安定になって飛んでいるような感じがします。もう少し力強いジャンプになっていけばと思います」

 翌12日は午前中の試合で、大倉山特有の強い向かい風が吹く中での戦いになった。その中で高梨の1本目は秒速0.75mの向かい風と、他の選手より少し弱かったのに加え、着地する付近では急に風がなくなり、落とされるようなジャンプになり、121.5mの5位発進となった。

 2本目は130mまで伸ばしたが、向かい風による減点は大きく、合計は214.9点の総合5位。2本とも1m台中盤のいい向かい風をもらったピンケルニッヒが135.5mと130mを飛び、前日のクラマーに続いて250.8点でW杯初優勝をする結果だった。

「2本ともいいジャンプができたと思うし、踏み切りも昨日ほど迷いがなくて自分のやるべきことができたと思います。ただ、今季使っているスキーは追い風や風のない時はまだいい感じはするんですが、向かい風の時はうまく操れなくて浮力をうまく捕まえて跳んでいくことができていないと思うので。その辺のスキーの使い方をもっとうまくしなければいけないという課題が出てきました」

 今季は開幕からの2戦は女王・ルンビが連勝したが、札幌の2大会を含めた3戦ではオーストリア勢の3人がそれぞれ1勝ずつする混戦。ドイツ勢は少し不調だが、表彰台にのったのは8人という状況だ。

「女子ジャンプのレベルが上がるというのは自分でも臨んでいたことだし、誰が勝ってもおかしくないという状況は、男子ジャンプにどんどん近づいていっていると実感しています。そういう中で戦えているということがすごく幸せだと思うし、その争いに食い込んでいくためには、何をしなければいけないかというのを考える時間も楽しみというか、生きがいのようにも感じます。自分にもまだ伸びしろがあると信じでやっていくしかないので、そのためにトレーニングも積んでいきたい」

 札幌の2戦を終えてW杯の総合順位を4位に上げた高梨は、ライバルたちとの戦いの中での自身の成長を楽しんでいる。