1月19日、レアル・マドリードは、ひとりのブラジル人MFが18歳の誕生日を迎えるのを待って、その獲得を正式に発表することになるだろう。

 ブラジルの名門フラメンゴに所属するレイニエル・ジェズス・カルヴァーリョは、移籍金3000万ユーロ(約36億円)、6年半契約で、レアル・マドリードに入団することが内定している。



レアル・マドリード入団が内定と報じられたレイニエル・ジェズス・カルヴァーリョ

 レイニエルは典型的な10番だ。ボールキープ力は人並みはずれ、大柄でダイナミックだが、ボールタッチ数が多く、ディフェンスを翻弄できる。プレービジョンに優れ、ラストパスは鮮やかだが、ループシュートなどでエリア外から狙うゴールも少なくない。バルセロナ、アトレティコ・マドリード、マンチェスター・シティ、リバプール、ユベントス、ミラン、パリ・サンジェルマン(PSG)など、欧州のビッグクラブがこぞって触手を伸ばしたほどの逸材である。

「痩せて見えるが、体は強いよ。腰が強く、チャージにも耐えられる。17歳で恐るべきレベルにある。いつも完璧な選択ができるし、ゴールに向かって直線的な選手だ」

 フラメンゴのチームメイトでブラジル代表サイドバックのフィリペ・ルイスも、手放しの称賛を送っている。

 レイニエルは当面、ラウル・ゴンサレス監督が率いるカスティージャ(レアル・マドリードのBチーム)でプレーするという。ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ・ゴエスという”先輩ブラジル人”と同じ流れで、トップデビューの機会を待つ。すでにスペイン語も習得し、準備万端だ。

 それにしても、なぜレアル・マドリードは、ブラジルの若い才能を次々と手中に収められるのだろうか?

 ヴィニシウス、ロドリゴという若いブラジル人スター候補を獲得するのも争奪戦だった。ライバルたちと提示金額に大きな差があったわけではない。実はレイニエルには、PSGがレアル・マドリードの倍の6000万ユーロを用意していたほどである。しかし、そこには札束を超える差があった。

「ブラジル人タレントたちの王」

 レアル・マドリードには、そう呼ばれる人物がついているのだ。

 フニ・カラファト。47歳のブラジル人が、レアル・マドリードの海外チーフスカウトとして手腕を発揮している。

 カラファトはチームを作って活動している。世界中のスカウトから上がってくるさまざまな情報のなか、スタッフがプレーを精査。プレービデオで気になった選手を現地で視察し、チーフが判断を下す。できるだけ無名時代からコンタクトをとることで、信頼のアドバンテージを得るのだ。

 いわゆる”青田買い”に違いないが、慧眼と交渉力に優れる。

 カラファトは、ヴィニシウス、ロドリゴ、そしてレイニエルを発掘。ほかにも、ウルグアイ代表フェデ・バルベルデ、ノルウェー代表マルティン・ウーデゴールなどの契約に関わってきた。さらに、日本代表MF久保建英の移籍を巡っても、フィクサー役を務めたひとりだったと言われる。18歳未満の移籍禁止ルールに抵触しないように、誕生日を待って移籍させる手法は今回も同じだ。

 カラファトはまた、ブラジルにおける”レアル・マドリード・ブランド”の強さを活用している。

 過去、レアル・マドリードにはロベルト・カルロス、ロナウド、カカのようなスーパースターが所属し、栄華を誇った。現在も、マルセロ、カゼミーロなどのブラジル代表が主力選手として活躍。そして今やヴィニシウス、ロドリゴが虎視眈々と出番を待っている。

 そんなブラジル人選手の系譜があるのだ。「子供のころから、カカが憧れだった」と、レイニエルも言う。

 もっとも、レイニエルが栄光をつかむのは容易ではないだろう。

 これまでに30人近いブラジル人選手が、レアル・マドリードに在籍してきた。1935年にたった1試合で退団したフェルナンド・ジュディチェッリ以後、ジジ、エバリスト、リカルド・ローシャなど、往年のブラジル代表選手が所属しているが、60年以上も目立った活躍をした例はなかった。1990年代後半から2000年代前半にかけて、ロベルト・カルロス、ロナウドの活躍によって、ようやく流れは変わったのだ。

 しかしその後も、期待されながらろくにプレーできず、退団したブラジル人選手は少なくない。シシーニョ、エメルソン、フラビオ・コンセイソンなどは、”期待外れ”だった。ロドリゴ・ファブリ、ルーカス・シルバのように、ほとんどプレー機会もなく、チームを去ったケースもある。2005年の入団時は人気を博したロビーニョも、結局は”パートタイマー”で終わった。

 レアル・マドリードは世界のトップクラブだけに、外国人選手はバロンドールの候補になるような活躍をしないと愛されることはない。

「ゴールすることは楽しいよ。でも、パスも好きだ。何より、美しいプレーが好きなのさ」

 レイニエルは、プレーヤーとしての信条を語る。いかにもブラジル人らしい。はたして、サンティアゴ・ベルナベウにサンバの音色を響かせるだろうか。