ATPの2019年を振り返ると、いくつかの激しいライバル関係が存在した。今回はその一つ、ステファノス・チチパス(ギリシャ)VSラファエル・ナダル(スペイン)のライバル関係を見てみよう。018年…

ATPの2019年を振り返ると、いくつかの激しいライバル関係が存在した。今回はその一つ、ステファノス・チチパス(ギリシャ)VSラファエル・ナダル(スペイン)のライバル関係を見てみよう。

018年にナダルに2連敗したチチパスは、ナダル攻略のためのアイディアを持って2019年の対戦に臨んだ。2018年の「ATP1000 トロント」で当時19歳だったチチパスは、1990年にATPツアーが始まって以来、一大会で4人のトップ10プレーヤーを倒した最年少の選手となったが、そこでナダルに止められた。奇しくもチチパスの20歳の誕生日に、ナダルは決勝でチチパスを破り、マスターズ1000大会で33度目の優勝を遂げたのだった。

その時チチパスは語った。「コート上でもっと力を尽くす。もっとトレーニングして強くなり、ベースラインでのプレーを安定させる。コート上での肉体的なプレッシャーに耐え抜く…それはナダルにとってはまるで何も特別なことではないみたいだ。そこが、僕とナダルの大きな差だと思う」

2019年、チチパスがナダル攻略のプランを試す機会は早々に訪れた。

「全豪オープン」準決勝 6-2、6-4、6-0でナダル勝利

メルボルンで行われた「全豪オープン」準決勝。そこへ至るまでにチチパスは4回戦でロジャー・フェデラー(スイス)に勝利。準々決勝ではロベルト・バウティスタ アグート(スペイン)とのフルセットの死闘を制して、初めてグランドスラムの準決勝進出を決めた。

一方のナダルは、オフシーズンにサーブを強化し、準決勝に至るまですべてストレート勝利、1セットも落としていなかった。その勢いはチチパスを相手にもまったく衰えることなく、サーブ時のポイント取得率80%、28本のウィナーを決めて25回目のグランドスラム決勝へと突き進んだ。ナダルはこの試合の最後9ゲームを連取している。

ナダルは言った。「大会中ずっと良いプレーができている。どの試合でも、たくさんのことがうまくできたと思う。今夜もね。安定したプレーができた。サーブで攻めていけた。バックハンドは他の試合より良かったかもしれない」

叩きのめされたチチパスには、ナダルとの対戦に光明を見出すのは難しかった。「正直言って、今日の試合から何を学ぶべきかわからないよ。差がありすぎて。6ゲームしか取れなかったんだから」

「ATP1000 マドリード」準決勝 6-4、2-6、6-3でチチパス勝利

だが驚いたことにチチパスは、ナダルが史上最多の優勝を果たしているサーフェス、クレーコートで喜びの瞬間を迎えることになる。マドリードで、ナダルはまだクレーでの調子を上げている最中だった。ナダルはその前の2大会、いずれも過去11回の優勝を遂げているモンテカルロとバルセロナで、準決勝で敗退していた。そしてチチパスの方は、前週「ATP250 エストリル」決勝でパブロ・クエバス(ウルグアイ)を倒してキャリア3度目、クレーでは初めての優勝を遂げ、自信に満ち溢れていた。

ナダルは準決勝まで27回のサービスゲーム中26回をキープしていたが、準決勝でチチパスは第1セットだけで3回ブレークしてリードを奪う。第2セット、ナダルはバック側の球に回り込んでフォアハンドで攻め、セットを奪い返す。だが第3セット、チチパスはコートの中に入って攻め続け、またも3回ブレークしてナダルから初勝利をあげた。試合全体ではチチパスはナダルを6回ブレーク、自身も16回ブレークポイントを握られたがそのうち11回を凌いだ。

「想像してもらえないぐらいほっとしているよ。信じられない。言いたくないけど、時には希望はないように感じたこともあったんだ。3連敗していたんだから。トロントではいいところまでいったから、少し自信がついて、いつか勝てるような気がした。だけどその後、また惨敗した。今はようやく勝てて、メンタル面でも乗り越えることができて、本当に嬉しいよ。しかもクレーで彼に勝ったんだから、さらに特別なことだ」とチチパスは喜びを語った。

「ATP1000 ローマ」準決勝 6-3、6-4でナダル勝利

ローマでは、サーフェスこそマドリードと同じだったが、チチパスはまるで違うナダルと対戦することになる。このシーズン、ナダルがまだクレーで優勝していないことについて、ファンや記者たちはあれこれ取り沙汰していたが、彼は遂にクレーでの本来の姿を取り戻したのだ。この準決勝でチチパスと対戦するまでに、ナダルはそこまでの6セットを6-0、6-1、6-1、6-0、6-4、6-0というスコアで取っていた。

チチパスはそれまでのナダルの対戦相手たちよりは頑張ったが、マドリードのようにはいかなかった。マドリードより球足の遅いコートで、ナダルはチチパスを2回ブレークし、自らが握られたブレークポイントは2回とも防ぎ決勝に進出。決勝ではノバク・ジョコビッチ(セルビア)を破り、マスターズ1000で34個目のタイトルを獲得した。

「Nitto ATPファイナルズ」グループステージ 6-7(4)、6-4、7-5でナダル勝利

2019年の彼らの最後の対戦は「Nitto ATPファイナルズ」で、最高の戦いと言っても良いかもしれない。ナダルにとっては準決勝進出のチャンスが懸かっており、チチパスはグループステージを全勝で終えようとしていた。

拮抗した第1セットはタイブレークにもつれ込み、4-4でミニブレークを成功させたチチパスが最後はサービスエースでセットを取った。だがナダルは落ち着いて第2セットの第9ゲームをブレークし、そのリードを守った。ナダルはこのセットで11本のウィナーに対してアンフォーストエラーはわずかに6個。サービスポイントでは25本中20本、80%を取っている。

第3セットの初め、チチパスは猛攻を見せて4つのブレークポイントを凌ぎきり、観客は更なるドラマを求めて沸き立った。だがゲームカウント6-5でチチパスのバックハンドボレーがアウトになった時、ナダルはこの試合でたった2度目のブレークに成功して勝利した。

ナダル自身は、この試合で1度もブレークポイントすら握らせなかった。それでもチチパスはグループ首位で勝ち進み、この大会で優勝。これまでの彼のキャリア最大のタイトルを手にしている。

※写真は「ATPファイナルカ0」でのナダル(左)とチチパス(右)

(Photo by TPN/Getty Images)

翻訳ニュース/ATPTour.com