攻撃の静岡学園高校(静岡県)か、守備の矢板中央高校(栃木県)か。第98回全国高校サッカー選手権大会の準決勝第2試合は、…

 攻撃の静岡学園高校(静岡県)か、守備の矢板中央高校(栃木県)か。第98回全国高校サッカー選手権大会の準決勝第2試合は、カラーが対照的な2チームが激突する。



サイドからも中央からも、多彩な攻撃を繰り出している静岡学園

 静岡学園がここまでの4試合で奪ったゴールは、15ゴール。1試合平均4得点に近いスコアからも、今年のチームが前輪駆動型であることは明らかだ。「自分たちの武器を使わない手はない。どこで勝負するのかを全員で共有して戦っている」と話すのは川口修監督。鹿島アントラーズ内定のMF松村優太と、得点ランキング2位の4点を奪うMF小山尚紀の両翼を活かしたサイドアタックが、今年のチームの最大の特徴と言える。

 サイドからの仕掛けによって総得点の半数以上を叩き出す一方で、忘れてはいけないのが中央の選手だ。準決勝以降のキーマンになりそうなのは、トップ下で攻撃のタクトを振るうMF浅倉廉。川口監督は「両サイドから仕掛けるけど、みんなが警戒してくるので、真ん中の浅倉のところがカギとなる。ゲームを組み立てつつ、自分たちでも(相手を)剥がしていく。それができると攻撃のバリエーションが増えてくる」と口にする。

 初戦こそ動きに硬さが見られた浅倉だが、3回戦の今治東中等教育学校戦(愛媛県)では初ゴールをマーク。指揮官が「試合を重ねるごとに徐々によくなっていくと思う」と期待を寄せていたとおり、状態は右肩上がりだ。

 相手がサイドの守備に気を取られたスキを突き、手薄となった中央を、浅倉を中心としたコンビネーションで崩す。反対に相手が中央を固めてくれば、突破力に秀でた両翼がより効力を発揮できる。外と中を巧みに使い分けた攻撃は、準決勝でも矢板中央の脅威となるに間違いない。

 強力なアタッカー陣が目を引く静岡学園に対し、矢板中央は突出した選手がいない点が特徴とも言える。「昨年は個人が強くてドリブルが得意な選手が多かったけど、今年は力が落ちる。周りの評価は低かったので、チーム力を大事にして全員で頑張ろうという気持ちでやってきました」と話すのは、主将を務めるDF長江皓亮。自分たちの実力不足を理解しているからこそ、チーム全体で”まずは守備から”と意識できているのが今年の強みだ。



前からのプレスでも、引いた守備でも機能する矢板中央

 危なげない勝ち上がりを続けてきた静岡学園とは違い、準決勝までの道のりが決して平坦ではなかった点も矢板中央にとってプラスに働いた。初戦の大分高校(大分県)戦は、2-2(PK6-5)と薄氷を踏む辛勝。続く2回戦の大手前高松高校(香川県)戦は先制点を奪いながらも、直後に同点に追いつかれ、2-1での勝利だった。

 しかし、3回戦と準々決勝は2試合続けて無失点勝利を飾った。理由について、長江は「コーチングが足りなかったし、チャレンジ&カバーの意識も低かった。もう一回、そういうところを意識できたから、無失点で抑えられている」と分析する。

 四日市中央工業高校(三重県)と対峙した準々決勝で目を引いたのは、前線からのアグレッシブな守りから繰り出すカウンターだ。

「矢板中央のFWに求められているのはハードワーク、空中戦、球際の3つ。自分たちはボランチとCBが強く、ちゃんと跳ね返してくれるのはわかっているので、立ち上がりに自分たちがチェイシングをして、相手にロングボールを蹴らせる。2トップが追いかけることによって自分たちのペースに持っていける」

 こう守備の狙いについて明かすのは、FW西村碧海。FW多田圭佑が相手DFのボール回しを奪い、得点まで持ち込んだ2点目の場面が理想形だが、奪い切れなくても相手が苦し紛れにラフなボールを蹴ってくれれば、こちらの物だ。

 身長180cmの長江や185cmのDF矢野息吹を筆頭に、大型選手がズラリと並ぶDF陣が空中戦を制し、MF靍見拳士朗とMF在間太一のダブルボランチがセカンドボールを回収して自分たちの流れに持ち込む。自陣から丁寧にビルドアップを行なう静岡学園にロングボールを蹴らせることができれば、矢板中央の勝機はグンと高くなる。

 また、四日市中央工戦で見せた2点リードを奪ってからの戦いも、準決勝の戦いを予想するうえで重要なヒントになる。前半の戦いから守備のスタイルをガラリと変更し、後半はフィールドプレーヤーの10人全員が自陣でブロックをつくって、相手の攻撃を跳ね返し続けた。

 準決勝はうまさで上回る相手にボールを持たれる展開が予想されるため、準々決勝の戦いと同様にブロックをつくり我慢する時間が間違いなく増える。その際に生きるのは、格上との戦いが続いたプリンスリーグ関東の経験だ。

 靍見は「東京ヴェルディだったり、横浜F・マリノスだったり、プリンスリーグで対戦したのは、パスとか斜めの動きがうまいチームが多い。四日市中央工の斜めの動きはマリノスに似ていたので、そこを経験していたのはプラスだった」と振り返る。

 静岡学園戦では、「8割くらいボールを持たれて、壁をつくる重要性を学べた」(靍見)ヴェルディとの対戦を再現できるかが、試合の行方を大きく左右する。アグレッシブにボールを奪いにいく守備を1試合続けるのは体力的に無理があるため、どのタイミングで切り替えるかがポイントになるのは確かだ。

 攻撃と守備、足元を重視した崩しと空中戦を前面に押し出した戦術。そんな矛と盾のような2チームがぶつかり合う一戦は、見どころの多い展開になるのは間違いない。