東京オリンピックで輝け!
最注目のヒーロー&ヒロイン
7人制ラグビー 福岡堅樹 編

 天は二物を与えた。優れた身体能力と明晰な頭脳を。昨年のラグビーワールドカップ(W杯)を沸かした”スピードスター”の福岡堅樹(パナソニック)が今年の夏の東京オリンピックでは7人制ラグビーに挑む。



ラグビーW杯に続き、東京五輪での活躍も期待される福岡堅樹

「本当に運に恵まれている」。ラグビーの神様に愛された27歳は、だからこそ使命感に燃えている。

「オリンピックにチャレンジできるのなら、チャレンジしたい。ラグビーの火を消すことにならないよう、さらに盛り上がるような試合をしたい。今度はメダルを」

 つねに陽のあたる道を歩んできた。2015年、大学生(筑波大)としてW杯イングランド大会に出場すると、16年夏、W杯メンバーではただ一人、リオデジャネイロ五輪・7人制にも日本代表として出場し、4位入賞に貢献した。あの8月。南半球の冬は熱かった。

 リオ五輪では初戦でニュージーランドを破る番狂わせを演じながら、3位決定戦では南アフリカに大敗した。3位と4位の差はとてつもなく大きい。「帰国してから、周りの扱いに差を感じたんです。オリンピックはいかにメダルが大事か」。快速ウイングは、東京ではメダルにこだわると言い切った。

 素材は文句なしだ。50m5秒台の爆発的な加速力は、エディー・ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチ(現イングランドHC)から、特異能力を意味する「Xファクター」と呼ばれた。昨年のラグビーW杯日本大会では、松島幸太朗(サントリー)とともに日本代表の「ダブル・フェラーリ」とも評され、4トライを挙げるなど大活躍、日本代表の史上初のベスト8入りの原動力となった。

 昨年12月の宮崎のパナソニック・ワイルドナイツの合宿中だった。やわらかい冬の陽ざしを受け、半袖姿の福岡は「もう大満足でした」とW杯を振り返った。いつもの爽やかな笑顔で。

「(W杯で)やり残したことはなんにもありません。後悔もないです。自分の納得できるパフォーマンスができたので、ここは一番の(身の)引き時じゃないかと思っています」

 そうは言っても、周りは15人制ラグビーでのランニングにも期待をしている。母校の福岡高校のラグビー部監督だった森重隆・日本ラグビー協会会長も事あるごとに「4年後のワールドカップに出てほしい」と口にしているほどだ。

 福岡はいたずらっぽい笑みを浮かべながら、「それはちょっと、会長の頼みでもきけません」とぴしゃりと言った。

 福岡は己の人生を真摯に生きる。医者だった祖父、父の影響から、自分も将来、医師になることを目指している。7人制ラグビーの東京オリンピックが終わったら、医学の道に進むつもりだ。年末から、練習の合間を縫って、医学関係の本で勉強もはじめた。

 福岡は笑顔で続ける。

「次の2023年のワールドカップでは、日本代表へのプレッシャーは大きくなると思います。僕は、はたから応援させてもらいます。いち学生として」

 もっとも、現在盛り上がっている日本のラグビー界ゆえ、1月12日に開幕するトップリーグ序盤に出場した後、7人制ラグビーに専念し、東京五輪を目指すつもりだ。チーム事情や、ラグビー協会の思惑もあろうが、そこはラグビー・ファンのことを考えての決断なのだろう。

 問題はプレーヤーとして、15人制から7人制ラグビーにすぐ、移行できるのか。そう聞けば、福岡は「4年前もやったことなので大丈夫です」と笑顔を返した。
 
 オリンピック種目の7人制ラグビーは、フィールドが15人制と同じ広さにも関わらず、プレーする選手は半数以下の7人ずつとなっている。試合時間は原則7分ハーフと短いとはいえ、一人ひとりの肉体的負担、運動量は非常に大きいものとなる。
 
 7人制ラグビーのオモシロさは?と聞けば、福岡は「スピーディーさ」と説明した。
 
「やっぱり、ボールの動くはやさというのは、15人制と比べると大きく上がってくると思います。もちろん、得点が入りやすいですし、密集ができにくい分、オフロードパスも増えたり、ボールがどんどん、どんどん展開されていったり。スピーディーさが15人制とは違った面白さだと思います」

 難しさは? 

「だからこそ、一度、ゲームの流れをつくられてしまうと、取り返すのが難しくなります。時間も(ハーフ)7分しかない。流れをなかなか修正できない難しさがある。最初から、いかに自分たちの流れをつくるかが大事なところでしょう」

 福岡は175cm、83kg。4年前のリオ五輪の際、前年のラグビーW杯から体重が4、5kg落ちたそうだ。今回もそう、なるのだろう。
 
「パワーよりはスピード、何度もトップスピードで走るトレーニングが増えていくので、締まったからだになっていきます」

 モットーが、故スティーブ・ジョブズ氏の『Stay Hungry、Stay Foolish(ハングリーであれ、愚かであれ)』である。何事にも一途な好青年は、中学時代、陸上の記録会で100mを初めて12秒を切ったとき、「風になった気分だった」と教えてくれたことがある。
 
 福岡は当時、陸上の『一瞬の風になれ』という青春小説を読んでいた。それから十数年後、ラグビーW杯では日本の熱風になった。そして、今年の夏、東京五輪で再びスピードスターは熱い「疾風」となる。メダルを目指して。