文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部「社会人の経験がバスケに生きることはある」3人制バスケットボール『3x3』の男子日本代表は出場国枠での東京オリンピック出場が決まっている。オリンピックで好成績を挙げるために、Bリーグのシーズン中…

文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部

「社会人の経験がバスケに生きることはある」

3人制バスケットボール『3x3』の男子日本代表は出場国枠での東京オリンピック出場が決まっている。オリンピックで好成績を挙げるために、Bリーグのシーズン中ではあるが代表候補選手たちは月に1度のペースで強化合宿を行っている。2020年に入ってすぐ、ディレクターコーチのトーステン・ロイブルの下、1月6日から8日の日程で第4次強化合宿が開催されている。

5人制を主戦場とするBリーガーがメンバーの多くを占めているが、3人制をメインに活動し、長らく『3x3』界を牽引してきた小松昌弘の姿もそこにはあった。「特にオフェンスが中心でしたが、注意してほしいことやディフェンスの狙いどころをトーステンがあらためて共有してくれた。そこはすごくチームとして意思統一が図れました」

そう語る小松の口調からは、有意義な時間が過ごせたことを感じさせる。だが、それと同時に「試合を重ねれば重ねるほど、コーチが求めることへの意識が薄れているところがありました。質を向上させていく必要がある」と、小松は警鐘を鳴らした。

「例えばオフェンスからディフェンスに変わる時の2ポイントラインに出るまでに時間をかけさせることだったり。オフェンスで言えば、インサイドで簡単にもらうシチュエーションやダイブする動きだったり、もっと頭を使うプレーが必要です。みんなが100%意識できていたかと言われればそれはできてない。頭では分かっていても、実際にプレーするのではズレが生じてきます」

ロイブルコーチが「5人制以上に3人制は経験が大事」と話すように、同じバスケットボールであっても、3x3には3人制ならではの違いは多い。実際、Bリーガーのほとんどが3人制のアジャストに苦労しており、昨日もルールの違いによってバイオレーションを取られる場面もあった。

小松も経験値の大事さを強調する。「あっという間に試合が終わって、どうしてやられたかが分からないケースがあります。事前のスカウティングもそうですが、頭で分かっていても、身体でやられてるケースがあるので」

「共通理解を深めることが一番大事」

小松は一般企業に勤めつつバスケをプレーし続けている異色のプレーヤーだ。そのため、バスケに費やせる時間や練習する環境面ではBリーガーに比べると劣り、小松も「僕は社会人なので、時間の有効活用では超えられない部分がある」とそれを認める。

それでも「与えられた環境でいかに自分が前向きに取り組むかだと思っていますし、ものは考えようで、社会人をやっているからこそバスケットに生きる部分がある」と、それをポジティブにとらえている。

「例えば、僕は管理職をやっていたこともあるので、プレーヤーだけの目線じゃなくて、マネージャーとしての目線も持っています。どう声かけをしたらチームが良くなるかとか、どう組織が回るかというところは管理職をやっていないと分からないと思うので。社会人の経験だったり、会社のお客様と会うことがバスケに生きることはあります」

実際、小松が練習中に他の選手にアドバイスを送る場面はよく見られる。「共通理解を深めることが一番大事だと思っているので。みんなの良い部分を伸ばすためにはコミュニケーションを取るしかないですから」

「常に周りより劣っていると思いながらやっている」

ロイブルコーチは選考に関して、一芸に秀でた選手を揃えつつ、いかに相性の良い組み合わせを作れるかが大事だと語った。そして、「日本が勝つことを考えた時に、2対2や3対3での戦い方などの相性をコーチは見ていると思います」と、小松も言う。

「僕よりも能力のあるBリーグの選手はいっぱいいますし、シュート力のある選手もいっぱいいる」と言うように、個の能力ではBリーガーに劣るかもしれない。それでも、彼らの高い能力を最大限に生かすには潤滑油となる存在が必要で、「むしろ僕はそこでしか生き残れないと思う(笑)」と、小松はその覚悟ができている。

「僕が求められているところはそこだと思っていますし、常に周りよりも劣っていると思いながらやっていて、すべてにおいてそういうマインドでいます。でもチームとしてのまとまりを強くするために考えることだったり、サーチする能力は他の人よりはあると思っているので」

3x3という競技においてエキスパートである彼に自信がないわけはない。それでも自分の能力を過信せず、周囲を冷静に観察した上でチームのために何ができるかを探し、コーチに求められることを体現できる選手は多くない。それができるからこそ小松はこの合宿に呼ばれているのだ。

「特に僕は3人制がメインの選手なので、3人制の経験を生かすことを一番の強みにして、前向きに取り組んでいきたい」。代表生き残りへの思いをそう語った小松。日本が世界と互角以上に戦うためには、彼の経験と能力が必要なはずだ。

3x3バスケットボール男子日本代表チーム 第4次合宿参加メンバー

アイラ・ブラウン(F/大阪エヴェッサ)
小松昌弘(F/ TOKYO DIME.EXE)
落合知也(F/越谷アルファーズ・TOKYO DIME.EXE)
小林大祐(G/茨城ロボッツ・UTSUNOMIYA BREX.EXE)
永吉佑也(F/京都ハンナリーズ・KYOTO BB.EXE)
藤高宗一郎(F/大阪エヴェッサ・EVESSA.EXE)
橋本拓哉(G/大阪エヴェッサ)
保岡龍斗(G/秋田ノーザンハピネッツ・SEKAIE.EXE)
杉浦佑成(F/サンロッカーズ渋谷・TACHIKAWA DICE.EXE)
西野曜(F/専修大学3年・BEEFMAN.EX)