★三谷紬インタビュー 前編

「ハーイ!やべっち」で多くの視聴者、サッカー選手にもお馴染みのテレビ朝日の人気サッカー番組『やべっちF.C.』(日曜・深夜0:05~)。週末に行なわれたJリーグの試合結果を伝えつつ、選手のプライベートに迫るコーナーなど、いろんな角度からサッカーの魅力を伝え、矢部浩之さんや中山雅史さんら出演者による軽妙なトークも魅力の番組だ。そのなかで、スタジオで紅一点、華を添え、番組を盛りあげている三谷紬アナ。2018年10月より番組を担当することになってから約1年。これまで取材してきた試合のエピソードや番組の魅力、自身のプライベート(後編で!)などについて話を聞いた。



番組内で三谷アナがサッカー東京五輪アジア最終予選のことを話すときにするお馴染みのポーズ

―― こういった取材はこれまで受けたことはありましたか。

三谷 『やべっちF.C.』に出演するようになって丸1年たちましたが、スポーツ関係の取材は初めてですね。

―― 番組に携わってから丸1年。自身の現状をどのように感じていますか。

三谷 個人としてはまだまだです。ただ、Jリーグの取材でスタジアムに行くと、「あ、『やべっち』の人が来ているな」と選手たちに把握してもらえるようになってきたかな、というのはこの1年の成果かなと感じています。

―― 選手に声をかけてもらっているんですか。

三谷 そうですね。カメラを持っていつもスタジアムに行くんですけど、そのカメラに『やべっちF.C.』というシールを貼っているんです。それもあると思うんですが、そのカメラを向けていると「あー、やべっち」みたいな感じで選手が話し掛けてきてくれます。

 番組が来年のオリンピックに向けて精力的に取材をしていて、私もオリンピック世代の選手たちに取材をたくさんさせてもらっています。なので、私より年下のオリンピック世代の選手たちはわりと顔と名前を覚えてくれている人が多いかもしれません。

―― 少し話に出ましたが、「アナカメ」(三谷アナ自身がカメラを持って試合のレポートをするコーナー)はどのように撮影されているんですか。

三谷 試合前に、例えば…横浜F・マリノス対FC東京であれば、今日はどちらサイドに自分が入るのかをまず(スタッフから)言われて。目線をあらかじめつけるんですね。マリノスの仲川(輝人)選手がゴールを決めるだろうという予想を立てたら、仲川選手を中心にカメラを回していくとか。

 選手がゴールを決めてサポーターのほうにワーッと走っていったら、私もカメラをパッと持って走って追いかけるみたいなこともします。

 ENG(のスタッフ)もいるので、私のカメラがすべてではないのですが、私の目線的なものをできるだけ見せられるようにというのを目的にしている企画でもあるので、そこは意識してカメラを回しています。

―― カメラ、重くないですか。

三谷 初めはすごく重くて。筋肉もなかったのでジムに通いました。筋力をつけないとカメラをずっと持っていられないな、90分体力が持たないなと思ったので。ただ、試合が始まってしまえば三脚に立てるので、そこまで大きな負担はないんですけれど。

―― 初めてこの番組を担当するとわかった時の心境はいかがでしたか。

三谷 私はテレビ朝日に入社したかった理由が、”サッカーの番組が充実しているから”というのがあったんです。テレビ朝日のアナウンサーとして、入社した当時の目標のひとつが、『やべっちF.C.』に関わることだったので、まさか入社2年目でこんなに早く自分が担当できることになったのは本当にビックリでした。

 すぐにはなかなか教えてもらえなかったんですけど、いろんな話を聞いた最後に(上司の方から番組のことを)言われて。その時はすぐには信じられず、「あ、分かりました。頑張ります」って、半泣きな感じで返事をしたんですけど、家に帰ってから母に電話して号泣しました。

―― うれしさの反面、プレッシャーはありましたか。

三谷 その時はワクワクしかなくて。私は(入社前から)自分でもJリーグの試合を見に行くぐらい好きだったので、取材で毎週試合を見に行けるし、最前線で選手にいろいろ話を聞いて、それをサッカーファンの方々に伝えられるという仕事に就けたというのは、なんて幸せなんだろうと感じています。

―― 1年間にいろいろ取材されていますが、印象に残っている試合を教えてください。

三谷 2つあるんですけど、ひとつは初めて「アナカメ」を担当した試合です。昨シーズンなんですけれども、等々力での川崎フロンターレ対ヴィッセル神戸戦になります。

 私と先輩アナの寺川俊平さんも同じように「アナカメ」をやったんですけれども、寺川さんは神戸側に行って、私は川崎フロンターレ側でのレポートでした。時期が10月だったので、だんだんとJリーグの上位が決まりつつあって、そんななかフロンターレもそろそろ優勝が視界に入ってきていた時期でした。

 しかも、小林悠選手がケガ明けの試合だったんです。だから、フロンターレ的にはそれもあって大事な試合でした。ただ、その日が大雨だったんですよ。初めての(アナカメの)試合が大雨で、すごく大変だったのを覚えています。

 それ以前は記者席で試合を見て、簡単なスコアをつけてということをしていたんですが、ピッチサイドで選手たちの息遣いが見えるような至近距離で取材をしながら、雨の中カメラを回して、実況もつけてくれと言われて。

 でも、やったことがないから、何が正しくて何が間違っていて、今、私がやっていることはこれで正解なんだろうかという不安な気持ちのまま90分過ごした記憶があります。今となっては笑い話になっているんですけど。

―― もうひとつは?

三谷 それは比較的、最近なんですけど、今年のルヴァンカップ決勝(川崎フロンターレ対北海道コンサドーレ札幌)です。あれも先輩の久冨(慶子)アナと2人で取材に行って、下馬評ではフロンターレが優勝するだろうという見方が多かったんです。

 そんななか、私は札幌側のほうに「アナカメ」で入ったんですが、そうすると、本当はよくないですし、そうならないように気をつけてはいるんですが、普段から「アナカメ」の担当になったチームのほうをつい応援してしまうんですよね。

 そうしたら、その試合は札幌が先制して。ピッチサイドにいて「あれっ、これ、どうしよう。優勝しちゃうかもしれない」ってその場でジャンプしたくなるくらいのワクワク感が自分の中に出てきてしまったんです。

 それでもすぐ「まずい。まずい」と自重して、フロンターレのディフェンスを褒めたりとかもしていたんですが、札幌の選手が活躍すると、ついついそっちばかりを撮りたくなってしまうし。そういった一方のチームに偏ってしまう感情を抑えるのに大変でした。

 試合も点を取りつ取られつの展開で、間近に見る選手たちの気迫もすごかったですし、スタジアム全体の雰囲気も普段のリーグ戦の試合とは違っていて、優勝カップが目の前にある試合というのはこんなにも違うんだなというのをその時強く感じました。

―― 逆に、今まで忘れられない失敗エピソードはありますか。

三谷 失敗談ではないのですが、実況する際の語彙が少ないことに対して反省することはあります。実況をつける時によく「チャンスになる」と言ったり、ショートが決まるとすぐ「ゴール!」と言ってしまったり。

 毎回私の編集された「アナカメ」を見るといつも同じことを言っていて。それを見かねた(寺川)俊平さんから「三谷さん、『ゴール』と『チャンスになる』はNGワードにしよう」と提案されたんです。

 それからはもう大変で。「ゴール」と「チャンスになる」をどういう言葉で言い換えたらいいのかというのが頭の中ですぐに浮かんでこなくて。結果、自分の中で他の言葉が見つかるまではタジタジの実況になってしまったり、泣く泣く同じ言葉を使ってしまったり。

 そういうこともあり、今は俊平さんや進藤(潤耶)さん、吉野(真治)さんのアナウンス部の先輩たちの実況を聞かせてもらって、学んでいます。例えば「ゴール」は、「ネットが揺れた」とか、いろいろ言い方があるし、なるべく違った言葉で伝えようと心掛けています。

―― 取材をするうえで気をつけていることはありますか。

三谷 ミックスゾーンでの取材となると、番組として選手に言ってほしい言葉を持った状態でインタビューをさせてもらうことが多いんです。けど、私たちの意思は選手のみなさんは当然知らないので、どうしても言ってほしいことを言ってもらえないこともあります。そのたびに「残念だったな。せっかく時間をもらったのに、番組として欲しかった話を聞けなかったし、選手もしっくりきてないのかな」というようなことが、最初はありました。

 なので、聞き方をすごく考えるようになりました。あとは、選手との関係性みたいなのをちゃんと築けるように心がけています。試合に行ったら、「来てますよ」というのをアピールするために選手の前にちょっと姿を見せるとか。

 ほかには、例えば、私と隣り合わせでインタビューしますってなった時に、サッカー番組ではありますけれども、選手の素の部分とか、この人はこういう人間性があるんだよ、というところまで伝えたいと思っているんです。

 私に対してそれを見せられないと思われてしまうとマイナスになりますし、当然、番組にとってもいいことではないので、選手に素の部分を見せてもらえるように、試合に行って、ミックスゾーンから出てきたら世間話じゃないですけど、「今日は結構動いていましたね」みたいなことで話を温めておいて、後日インタビューする時になるべくカメラやスタッフにも慣れてもらえるようにと…最近はしています。

―― 改めて番組の魅力を教えてください。

三谷 それは、サッカー選手をひとりの「人間」として伝えているところだと思います。『やべっちF.C.』という番組は、サッカー選手をただアスリートとして見るのではなくて、ひとりの「人間」として垣間見ることができるというのが、この番組のよさだと思っています。

 サッカーとかスポーツをやっている人ってその姿しかなかなか見られないですし、練習もたまに見られるかもしれないですけれど、それもやっぱりサッカーに携わっている人として練習を見るわけじゃないですか。

 でも、実際は、奥さんの前でのサッカー選手はどんな感じなの?とか、選手同士でご飯を食べに行っている時はどんな感じなの?とか。サッカー選手のサッカー選手じゃないところを見られるというのが、『やべっちF.C.』の唯一無二の魅力だと思っています。

―― プレーの魅力だけじゃなく、プライベートも含めて選手の魅力を伝えていきたいんですね。

三谷 そうですね。そこがやっぱり一番です。今、サッカーファンって一定数いるとは思うんですけど、そこからどんどん増えているかと言ったら、そうではないように感じているんです。

 じゃあどうやってファンを増やすかというと、サッカーを好きになってもらうのはもちろんですが、アイドル的な感じで選手自身を好きになってもらって、その延長線上でサッカーを見てもらえればいいなと思っているんです。

 そうなった時に、サッカー選手って一人ひとりのキャラクターが当然違っていて、みなさんすごく面白いですし、個性があって、でも真面目で。たまに、「チャラいんでしょ」とか言う人はいますけど、そうじゃないんだというのをぜひ多くの人に知ってもらいたいなと思っています。

(後編につづく)

Profile
みたに・つむぎ 2017年入社
94年4月4日生まれ 千葉県出身 身長162cm
好きな言葉:「時間は平等 工夫は自由」
趣味:スポーツ観戦 特技:舌が自在に動くこと