特別指定選手制度で高校生や大学生がBリーグの舞台に立つまだまだ残暑厳しい日が続いているが、秋の到来を感じるのはバスケシーズンがやって来たせいだろうか。9月3日より関東大学バスケットボールリーグ戦が開幕。1部に昇格したばかりの早稲田大学が初勝…

特別指定選手制度で高校生や大学生がBリーグの舞台に立つ

まだまだ残暑厳しい日が続いているが、秋の到来を感じるのはバスケシーズンがやって来たせいだろうか。

9月3日より関東大学バスケットボールリーグ戦が開幕。1部に昇格したばかりの早稲田大学が初勝利を挙げ、拓殖大学が86-87で白鴎大学に敗れるなど、混戦必至の1部リーグ。優勝争いとともに降格争いもスリリングで、見る側にとっては楽しみなシーズンになりそうだ。

関東大学リーグでしのぎを削り合う中で、早くも特別指定選手制度によりBリーグで戦うチャンスを得た選手がいる。専修大学の渡辺竜之佑は琉球ゴールデンキングスと契約を果たし、この夏すでに故郷でもある沖縄に帰って練習に参加。「環境はメチャメチャ良かったです。サイコーでした」とはじける笑顔を見せた。

特別指定選手制度とは、満22歳の日本国籍を持つ大学生と高校生を対象に、Bリーグの各クラブが2名まで契約できる制度である。対象選手は1件につき3カ月を活動期間とし、その間の活動が述べ日数15日以上かつBリーグ公式戦に1試合以上ベンチ入りすることを活動基準として定めている。

練習に参加した渡辺は、「やっぱりみんなプロなので、基本的なことがしっかりしておりミスが少ない。練習を終わった後の個人練習がすごかったです」とプロ選手たちの高い意識を目の当たりにした。課題の克服、レベルアップに勤しむ夏。練習後の自主練習こそが、バスケで稼ぐプロ選手にとっては大事な時間だ。先輩たちの取り組む姿を見ながら、渡辺自身も少しずつプロ選手に変わっていくことだろう。

琉球ゴールデンキングスが誕生したのは2007年。当時、中学生だった渡辺はアリーナでその盛り上がりを体感している。初めて見た時から「あの舞台に立ちたい」と目標を決め、その夢が叶った。

「昔からずっと憧れていたので、今回入団することができたことは夢のようであり、ビックリしました」

木村達郎社長と伊佐勉ヘッドコーチがわざわざ上京し、口説いたそうだ。驚く渡辺だったが、二つ返事でプロ選手になることを決めた。

Bリーグで腕試し、プロで得た経験を大学に還元

187cmの渡辺が「日本の中では少しサイズが大きめのポイントガード」と自己評価する通り、期待値は高い。得点力も高く、関東大学リーグ開幕戦では21点を挙げて84-74での明治大学戦の勝利に貢献した。しかし、個人としては課題が残る。

「ターンオーバーが多いのでそこが一番の課題です。疲れてくるとミスが連発してしまいます」。ターンオーバーは6つを数え、試合後はチームメートに頭を下げた。

21点を挙げたが3ポイントシュートは5本中1本のみ、54-80で敗れた翌日の早稲田大学戦では1本も決められず、「シュートが下手なので、もっと練習していかなければならないです」と苦笑いする。

ポイントガードとして、自分より低い相手をマークする場合は優位に立つことも考えられるが、「すばしっこい選手は苦手。齋藤拓実(明治大学)や石原卓(早稲田大学)は本当に大嫌いなタイプ。そこをマークするとなるとまだまだ課題はいっぱいです」と話しており、まだまだ成長しなければいけない。学生最後のシーズンを通し、「プロでもしっかりディフェンスできるようにしていきたいです」と課題克服を誓った。

琉球ゴールデンキングスには沖縄出身の選手が5人いる。専修大学出身の選手も4人と多い。昨シーズンまで一緒に戦った一つ上の先輩である田代直希がルーキーとして入団したのも心強いことだろう。「みんな良い先輩ばかりで、面倒も見てくれてすごくありがたいです。本当に恵まれています」

最高の練習環境とともに、共通項の多い先輩たちに支えられ、記念すべき開幕戦のベンチ入りが予定されている。「たぶん無理」と言っていたが、ゼロではない可能性に懸け、コートに立つ準備は大学リーグ戦を通して意識を高く持って取り組み続けていく。

Bリーグに挑むことに対し、「自分より格上の選手たちを倒すこと。自己満足でしかないですが、そこをモチベーションにして戦っていきたいです」と抱負を語る。

プロでの経験を専修大学に還元し、ラストシーズンは昨年以上の成績を残したい。接戦をモノにした初戦だったが、「専修らしいなぁ。結局はどの相手にも接戦になってしまう。そこを改善しないといけないと思って取り組んできたのに全然うまくいってません」と反省しきり。翌日は敗れており、チームとしても課題山積である。

しかし、ベンチが盛り上がっていたのは、これまでとは違った活気を感じた。「コミュニケーションが足りないという話になり、練習中からみんなで盛り上げるようになったので、それがベンチでも伝わってきたのかなと思います」

プロと学生の二足のわらじを履き、個人と専修大学の両方をレベルアップさせることに挑む。「一戦一戦しっかり自分たちのプレーを出して、接戦になっても自分たちの流れに持って行けるように常に勝っていきたいです」

今後も増えるかもしれない特別指定選手。全国各地で繰り広げられている大学生リーグや高校生によるウインターカップ予選を観に行き、応援するクラブに欲しい選手を探すのもBリーグの楽しみ方の一つでもある。