若さと勢い。それに対する、経験と老練さ……。上回るのは、果たしてどちらか。

 9月から繰り広げられてきたレギュラーシーズンが終わり、年明けからプレーオフに突入するNFL。今年は怖いもの知らずの若手中心のチームと、百戦錬磨のベテランが牽引するチームが目立っている。例年以上に楽しみなポストシーズンとなりそうだ。



ラマー・ジャクソンはレイブンズをスーパーボウルまで導けるか

 言い換えると、レギュラーシーズンでの勝率をそのまま鵜呑みにはできない。

 54回目となる今季のスーパーボウルは、2月2日にフロリダ州マイアミガーデンズのハードロック・スタジアムで開催される。頂上決戦へと歩みを進めるのは、どのチームなのか。チームの顔であるQB(クォーターバック)をピックアップしつつ、注目ポイントを見ていきたい。

 アメリカン・フットボール・カンファレンス(AFC)で注目すべきは、何はともあれボルチモア・レイブンズ(14勝2敗/今季レギュラーシーズン成績)だろう。今季のレギュラーシーズンは、極端に言えば彼ら中心だった。シーズンはリーグ1位の勝率.875をマークし、AFCの第1シードをもぎ取った。

 開幕前、レイブンズの評判は決して高くなかった。だが、フタを開ければ衆目の度肝を抜いた。

 原動力となったのは、QBラマー・ジャクソンという”韋駄天”だ。2018年のドラフトは1巡目にQBが5名も指名されたが、その5番目(1巡目全体32位)でレイブンズが選んだのがジャクソンだった。

 ルイビル大時代、ジャクソンはハイズマン賞(大学最優秀選手賞)を獲得している。だが、ドラフトでそこまで指名順位が下がったのは、脚が抜群に速い一方、パスは不正確と評されていたからだ。

 ところが今季、レイブンズがジャクソン向けのオフェンスシステムを採り入れたことが見事にハマる。ボールをRB(ランニングバック)に持たせるかと思いきや自らが走ったり、もしくは突然パスを投げたり。これが、相手ディフェンスを大いに惑わせた。

 結果、レイブンズのオフェンス陣はリーグ1位の1試合平均33.2得点をマーク。「ディフェンスチーム」というこれまでの印象を一転させた。

 相手チームのディフェンス陣は、ジャクソンのオフェンスを封じる”答え”をレギュラーシーズンで見つけられていない。ランかと思えばパス、パスかと思えばラン……。今季開幕前にパワー型RBのマーク・イングラムを獲得できたのも大きかった。相手からすれば、まるで悪夢のようなオフェンスを展開している。

 レイブンズオフェンスが機能しているのは、もちろんジャクソンの”脚”があるからだ。これまでも脚力自慢のQBは数多く存在したが、ジャクソンはNFL史上最高の呼び声さえある。

 第15週のニューヨーク・ジェッツ戦。ジャクソンはランで86ヤードを獲得し、それまでマイケル・ビック(元アトランタ・ファルコンズなど)の持っていたQBとしてのラン獲得距離のシーズンレコードを破った。最終的にレギュラーシーズンで1206ヤードを獲得し、この数字は全ポジションを通じてリーグ第6位。シーズンMVPの獲得は、まず間違いない。

 ジャクソンは現在22歳。先発としてフルシーズンを戦うのは初めてだが、スーパーボウル以外のポストシーズンすべてをホームで戦えることは、経験不足の彼にとって非常に大きい。レイブンズのディフェンスは1試合平均17.6失点でリーグ3位と安定しており、ジャクソンを局面で支えてくれるだろう。

 そのレイブンズの対抗馬は、AFC第2シードのカンザスシティ・チーフス(12勝4敗)だ。昨季シーズンMVPに輝いた24歳のQBパット・マホームズは、シーズン中盤にひざの故障で2試合を欠場。復帰後は、50TD(タッチダウン)をマークした昨季ほどの爆発力はないものの、確実性を増していた。

 スポーツメディア『ESPN』は、クォーターバックレーティングという独自のQB評価指標を作成している。これは従来のパサーレーティングよりも細かな状況を念頭に置いて測定しているため、QBの力量をリアルに反映していると評されているが、今季のマホームズはジャクソン(81.7)に次ぐ76.4を記録した。

 チーフスはレギュラーシーズンの最後を6連勝で終えたが、ディフェンスが大幅に改善されたことも大きい。6連勝の間、1試合平均11.5失点と非常に低かった。寒い冬に行なわれるプレーオフでは攻撃時に手がかじかんでボールを掴みづらいため、ディフェンスの重要度は増す。チーフスにとっては心強い話だ。

 とはいえ、NFLきっての強肩とダイナミックなパスが売りのマホームズが活躍しなければ、AFCを制することはできない。昨季は第1シードを獲得しながら、スーパーボウルを目前にニューイングランド・ペイトリオッツに敗れた。チーフスとマホームズは、捲土重来を期す。

 一方、ナショナル・フットボール・カンファレンス(NFC)は、AFCよりも多くのチームにスーパーボウルの切符獲得の可能性があるだろう。

 そのなかでも注目すべきは、ス—パボウルが狙える位置にいながら2年連続して勝機を逃してきたニューオーリンズ・セインツ(13勝3敗)だ。今季は「3度目の正直」を目論む。

 セインツをNFC第3シードに導いた中心選手は、もちろんQBドリュー・ブリーズだ。今季は序盤に親指のケガで5試合を欠場したが、通算パスTDで歴代1位を記録(現在547TD)。40歳ながら、いまだエリートQBとして健在である。

 15年〜20年ほど前までは、パス成功率が60%を超えれば一流QBと言われていたが、現在は70%近く成功させるQBも少なくない。そのなかでも、ブリーズの今季のパス成功率は75.3%と際立って高い。相手ディフェンスからすれば、ほとんどパスを通されてしまったという感覚のはずだ。

 今季のセインツは、リーグ3位の1試合平均28.6得点をマーク。QBブリーズを軸に、シーズンパス捕球数でNFL記録を樹立したWR(ワイドレシーバー)マイケル・トーマスとRBアルビン・カマラの”トリプレッツ”によるリーグ屈指のオフェンスで、10年ぶりのスーパーボウル進出なるか。

 そして最後は、3年ぶりのプレーオフとなるグリーンベイ・パッカーズ(13勝3敗)と、チームを率いるQBアーロン・ロジャースに触れたい。

 NFCの第2シードを獲得したものの、ロジャースのパフォーマンスは例年のそれと比べると、やや心もとない。数字を見ても、パス4002ヤード・26TDはロジャースにしては平凡だ。パサーレーティングは歴代通算1位(102.4)だが、今季は95.4。クォーターバックレーティングに至っては50.8と低調だった。

 ただし、マット・ラフルールを新HC(ヘッドコーチ)に迎えた今季は、もはやロジャースのワンマンチームではなくなっている。これまではロジャースの能力があまりに秀でているために、時に彼に頼り過ぎるきらいがあった。だが、今はランゲームを織り交ぜたり、ディフェンス(平均19.6失点はリーグ9位)の奮闘で勝利を掴むなど、総合力で勝負できるようになっている。

 ロジャースといえば、クイックスローと強肩で矢のような中長距離のパスを決めるのが特徴だった。ところが、今季はリスクのあるパスを投げることが少なくなった。また、アーロン・ジョーンズというエース級RBが久々にチームに誕生したことで、着実にボールをランで進められるようになっている。

 実際、今季のパッカーズのランプレーの割合は41.8%で2018年シーズンの34.2%から大幅に増えた。一方、インターセプションの数はわずか4つと、ボールのプロテクションもできている。

「勝つために自分が40TDも投げる必要はない。必要なのは、大事な場面でプレーを決めること。そして、より効果的なプレーをすること」

 ロジャースはESPNの取材にこう話している。

「史上最高のQB」とさえ呼ばれることもあるロジャースだが、スーパーボウルリングの数は2010年シーズンに獲得したわずか1個。周囲の高評価に優勝回数が伴っていない。現在36歳で、いつの間にか歳も重ねている。ロジャースの力量がレギュラーシーズン以上に問われるプレーオフとなりそうだ。

 今回はQBを中心に4チームを挙げた。それ以外にも、QBトム・ブレイディの率いる常勝軍団ニューイングランド・ペイトリオッツ(12勝4敗/AFC第3シード)や、シーズン後半にQBライアン・タネヒルに代えてから尻上がりに調子を上げたテネシー・タイタンズ(9勝7敗/AFC第6シード)、QBジミー・ガロポロの活躍で昨季4勝から躍進したサンフランシスコ・49ers(13勝3敗/NFC第1シード)など、魅力あるチームは多い。

 ジャクソンやマホームズといった若手が新時代を築くのか、それともブリーズやロジャースなどベテラン勢が壁となって立ちはだかるのか。いずれにしても、今季のプレーオフは一筋縄ではいかなそうだ。