村上宗隆(ヤクルト)、清宮幸太郎(日本ハム)、安田尚憲(ロッテ)の3人に共通するのは、今年3年目を迎える高卒のスラ…
村上宗隆(ヤクルト)、清宮幸太郎(日本ハム)、安田尚憲(ロッテ)の3人に共通するのは、今年3年目を迎える高卒のスラッガーであるということだ。
村上は188センチ、97キロの堂々とした体躯から、ホームランを量産。昨シーズン、36本塁打を放ち、セ・リーグの新人王にも輝いた。今季は中軸としてさらなる飛躍が期待される。
清宮は、早稲田実業時代に通算111本塁打を放った、世代を代表するスラッガー。しかし入団してから2年間は、いずれも7本塁打と本来の長打力は鳴りを潜めている。ケガも癒え、3年目の今季に勝負をかける。
安田は2年前のシーズンに一軍出場(17試合)を果たしたが、昨季の出場数はゼロ。それでも昨季は、イースタンリーグで本塁打王、打点王の二冠に輝き、12月にはプエルトリコのウインターリーグにも参加するなど、今シーズンの台頭を予感させる。
いずれも近い将来、日本のプロ野球界を背負っていく若き長距離砲たち。そんな彼らのバッティングを、NPB歴代3位の通算567本塁打を放った”伝説のスラッガー”門田博光氏に見てもらった。

昨年36本塁打を放ち、セ・リーグの新人王に輝いたヤクルト・村上宗隆
村上宗隆(ヤクルト)
2月生まれなので現在19歳ですか……可能性にあふれていますよね。なんと言っても、まずこのサイズがうらやましい。(身長170センチの)僕は、いかに体格差を埋めるかとやってきた人間だから(笑)。
このサイズで腰をしっかり回してとらえた時は、どこまでも飛んでいく感覚があるでしょうね。若い時は腰もよう回るんです。
2年目で36本塁打、打率は.231で三振もリーグワーストの184個。40本打てる選手というのは、打率も3割ぐらい打てるようになるんやけど、まだ19歳。今はどんどん振ったらいい。
よくね「そんなに振らんでも、これだけのパワーがあったら飛ぶ」と言う指導者がおるけど、振らんと飛びません。試合で振るためには、練習からしっかり振り込まないと。手打ちじゃなくて、腰を入れてどれだけ強く振れるか。そう考えたら、村上はまだまだ振れると思うし、もっと飛ばせますよ。
昨シーズンは擦ったような打球がレフトポール際に入るのを何本か見たし、差し込まれたと思った打球がオーバーフェンスしたり……。本数を稼ぐには、自分のタイミングで打っていないのにフェンスを越えることも大事。そこに関しては、すでにクリアしていますね。
技術的に気になるのは、構えた時のバットの動き。シーズンが進むなかで徐々に小さくなったようには思うけど、それでもまだ結構動いている。僕の感覚からしたら、一番大事なところをなぜあれだけ動かすのかということ。
おそらく動かしたほうがタイミングを取りやすいんでしょうけど、実際はズレが生じてしまう。ミリ単位の勝負をしているなかで、なぜ自分からバッティングを難しくしているのか。ここが改善されれば、打率はもっと上がるはずです。
2年目にこれだけ打って、今年どうなるか注目ですね。僕も入団して2年目に打率.300、31本塁打、120打点という成績を残しました。するとその翌年、真っすぐがピタッと来なくなった。2年目までは「こんな若造に手の内を見せるか!」っていう感じで、ストレートもバンバン来ていたけど、3年目は攻めがガラッと変わった。おそらく村上も、今年はこれまでとまったく違う配球になると思います。そこでどれだけ対応できるかでしょうね。
左投手にしても、初めの頃は意外と苦にせず打てるんです。でも結果を出すと、左投手がインコースに投げてくる。それも顔付近にね。左投手に顔の近くを投げられると、恐怖心が生まれて踏み込めなくなってしまう。そうなると、これまで打てていた真ん中から外のボールにバットが届かなくなる。そうしてバッティングを崩される可能性はあるでしょうね。
それに今年はバレンティンが抜けた影響も出るでしょうね。これまで相手バッテリーは、山田哲人とバレンティンをマークしていて、神経を使ったあとに村上と対戦していた。でもバレンティンが抜けた今年は、村上もメインでマークされる。このように、成績を左右するのは技術以外の要素も大きいんです。
2年目で37本を打って、周りは40本を期待するでしょうが、30本と40本の間には高い壁がある。僕も30本を打ってから40本を突破するまでに9年かかりました。村上もここをあっさりクリアするようなら、とんでもないバッターになるんでしょうけど、プロはそこまで甘くない。いずれにしても、今シーズンの彼のバッティングを楽しみに見させてもらいます。

昨年、ケガの影響もあり不本意なシーズンに終わった日本ハム・清宮幸太郎
清宮幸太郎(日本ハム)
清宮については、1年目から注目して見ていました。一軍での試合を初めて見た時、まず背中の柔らかさを持っとるなというのが印象に残りました。この柔らかさがあれば強いスイングができるし、距離も出るだろうと。僕の好きなタイプのバッターやと思いました。
ただ、そのよさが昨年はちょっと消えているかなと。あと、昨年一番気になったのは、打ちにいく時に体がフワッと浮き上がること。村上は体が沈んだまま回転に入っていくけど、清宮の場合は軸足に体重を乗せて、そこから体重を移動させていくなかで体が浮いてしまう。
なので、伸び上がる感じでボールをとらえにいくから、インパクトで力が逃げてしまう。いい感じでとらえたと思ってもフェンス手前で失速するのはそのためです。
清宮のスイングを見ていると、ホームランタイプというより、アベレージタイプに見える。イメージとしては、昔の田尾安志に似ているな、と。
それと、以前は懐を深く取れていたと思うけど、その印象も変わっていた。スッと立って、その場で足を軽く上げて打ちにいっているというか、移動が小さいからバネを感じることがなくなった。
虎が獲物を狙う時、一瞬、体を沈めてから動き出すじゃないですか。その動きが今の清宮にはないんです。やっぱり、ホームラン王よりも首位打者を狙うタイプのスイングに見えてしまいます。
昨年、右手(有鈎骨)を骨折した影響もあるかもしれないけど、ホームランバッターを目指すなら、このままでは厳しいかもしれない。
今の選手には危ない指導かもしれんけど、もっと重たいバットを振らせるというのも、きっかけのひとつになるんじゃないかな。重たいバットやと体全体を使わないといけないので、腰を回して打つ感じを覚える。そうすれば飛距離も伸びるし、もっと強い打球がいくはず。
清宮に限らず、今のバッターに思うことは、とにかくバットが軽い。操作性がいいということで使っているんでしょうけど、手打ちになってしまって、打球に勢いがない。僕らからしたら890グラムとか900グラムなんて箸みたいなもんやったけど、今はそれが主流になっている。
小さい曲がりの変化球に対応するためやろうけど、それでも結果が出るから、手先で打つスイングが多くなる。重いバットを扱おうとしたら、しっかり腰から回さんと振れないからね。
僕がオリックスに移籍した時(1989年)に1キロのバットを使っていたら、みんな興味を持って真似したんやけど、最後までついてきたのはブーマーだけ(笑)。ブーマーはしっかり腰を使ってスイングしていたけど、ほかの選手は、僕からすれば手打ちやった。
今の選手に重いバットを使わせると、手首などケガの心配もあるやろうけど、もし清宮が重いバットを扱えるようになったら、腰の入ったスイングも身について、ワンランクもツーランクも上のバッターになると思うんやけどね。
とはいえ、まだ20歳。僕なんかに比べたらはるかにええもん持ってるから、まずは体を万全にすること。今年は背中の柔らかいスイングをまた見たいね。

昨季、イースタンリーグで本塁打王、打点王の二冠に輝いたロッテ・安田尚憲
安田尚憲(ロッテ)
この選手も体が大きい(188センチ、95キロ)ね。ただ、昨年のオープン戦の時は大きさを感じなかった。打席でも構えが小さくて、バットも短く見えた。時期的に一軍に入るかどうかというところで、結果を求めるためにそのような打ち方になったのか。詳しくはわからないけど、あの時の打ち方は迫力がなかった。
でもシーズンでは、二軍でホームラン王を獲ったり、ZOZOマリンで特大のホームランを打ったり、春先と違って雰囲気のある構えになっていたし、しっかりスイングできる選手になっていた。
これだけの体とパワーを持った選手なんで、ファウルで逃げるようなスイングをするんじゃなくて、「この球は絶対に逃さん」というスイングを普段から心がけてほしい。
僕なんかは、状況にもよりましたが、難しい球は見逃しでもいいと割り切って打席に入っていました。下手に打ちにいってしまうと、フォームを崩してしまうんです。狙っていたのは、真ん中から内。そこに来たら「絶対に逃さん」という待ち方でした。
安田は、高校の時から逆方向(レフト方向)にも打てていたということやけど、若いカウントから逆方向に合わせるバッティングは絶対にしてほしくない。これだけの素質を持っとるんやから、ホームランを打つことに固執してほしい。
少し気になるのは、いいスイングの時もややターンが早いところ。球をとらえて、そこからもうひとつバットとボールが接地している時間を長くできたらね。腕を伸ばしきったところでターンできたら、もっと打球は飛ぶ。
僕は大きい選手や外国人に対抗するために、「前を大きく」というのを常に考えていた。昨年、巨人の坂本勇人が前を大きくしたスイングになって、飛距離が伸びた。安田もそのスイングができたら、もっと楽しみが広がる。
それと、打つ時にピッチャーから見て、背番号が見えるぐらいまで体をねじってもいいなかと思います。今はそういう形はよくないというのが主流になっているみたいだけど、僕は逆。ねじりを入れることで、ボールが飛ばせるというのは間違いないんです。
この打ち方を反対する人の意見として、背中が入るとバットが出にくくなるというのがその理由だと思うんですけど、スイングが速くなれば間に合うんですよ。そのように、突き抜けたスイングを身につけたらええということ。そうした発想ができる指導者、挑戦する選手が出てきてほしいですね。
安田にしても、まだ高校を出て2年が終わったところ。技術が安定していないのは当たり前で、これからどう自分の形を完成させていくか。指導者のひと言でぐらつく年齢ですから、若い時にどういう指導者と出会うかも大事。
僕らみたいな異端児はひたすら自分でバッティングをつくりましたが。今は至れり尽くせりの時代。それが逆に難しさもあって、自分の形ができ上がりづらい。そのあたりは運もありますし、本人次第のところもあります。
今回、話をさせてもらった村上、清宮、安田の3人は、素質的には僕よりもはるかに上の選手たち。とにかく大きく育ってほしいですね。