取材・文=鈴木栄一 構成=鈴木健一郎 写真=野口岳彦『バスケット・カウント』にとっては年末の恒例行事となったニック・ファジーカスとの忘年会も今年で3回目。初回は焼肉、2回目はピザハウスだったが、ニックが日本国籍を取得して迎えた今回は『和』の…

取材・文=鈴木栄一 構成=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

『バスケット・カウント』にとっては年末の恒例行事となったニック・ファジーカスとの忘年会も今年で3回目。初回は焼肉、2回目はピザハウスだったが、ニックが日本国籍を取得して迎えた今回は『和』のテイストで勝負すべく、しゃぶしゃぶのお店へ。とはいえ川崎駅からすぐ近くの、ニック行きつけのお店。今回ニックは数カ月前に生まれたばかりの長女エミーちゃんの育児で忙しい妻ステファニーさんをサポートすべく、長男ハドソン君を引き連れて登場。第1回ではまだママのお腹の中にいたハドソン君がモリモリ食べる中、ニックにバスケットボール選手はもちろん、父親としても2019年を振り返ってもらった。

「6時に起きて朝食を作るのは僕の役目なんだ」

──後編では父親業について聞かせてください。父親になったことで何が変わりましたか。

睡眠時間が減ったことかな。でも育児は楽しいよ。僕よりもステファニーが2人の幼児を世話するので大変そうだ。親になったことで、タイムマネージメントには今まで以上に気を遣うようになった。父親になる前は23時に寝ていたけど、それが今は21時には寝ている。ハドソンは遅くとも6時には起きるから、僕もそれに合わせて起きている。朝食を作るのは僕の役目なんだ。最初はちょっとタフだったけど、今はアジャストできている。おかげで今はより辛抱強くなったし、料理の腕も上がったよ。

今はハドソンの妹が生まれたばかりで、ステファニーは夜中に起きて世話をすることも多い。だからハドソンの朝の相手をするのは僕なんだ。子供が生まれたら人生は変わるものだね。ナイトゲームの翌日はちょっとキツいけど。試合で40分間フル出場するより、ナイトゲームの後で6時に起きる方がタフかもしれない。でも、妻はいつも僕のことまで気にかけてくれる。「表情が疲れているみたいだから、少し仮眠をしてみたら」と言ってくれたりね。

──ハドソン君と一緒に取材を受けるのは初めてかと思いますが、NBA選手のようにリーグ優勝の会見に子供を連れて出たいと思うことは?

そうなったら素晴らしいね。記者会見、オールスターゲーム、そういった舞台に子供を連れていきたい。オールスターに連れていきたかったけど、北海道は遠くて移動が大変なので残念だよ。それに試合は夜のスタートだからね。

ハドソンが、僕がバスケットボール選手であることを理解できるまで現役を続けたい思いはかなり強い。今はまだ分かっていないけど、息子から「パパの試合を見た」って言われたらどんなに素晴らしいことか。ただ、ハドソンのおじいちゃんとなるステファニーの父親は残りの人生で、僕がどれだけ素晴らしいバスケットボール選手だったのかをハドソンに話し続けると言ってくれている。

「いずれは父親と息子からベストフレンズの関係に」

──ハドソン君にはバスケ選手になってもらいたい?

それは彼が決めることだ。最終的に彼がバスケを好きではなくてもそれは構わないよ。

──ハドソン君と2人で出かけることも多くなりましたか。

妻は娘の面倒を見るので大変だから、2人で外出することも最近では多くなった。この前は川崎の動物園に行ったし、ラゾーナにもよく行く。子供は小さい頃にたくさん走り回ると、成長した時に運動能力が高くなると聞いたことがあるし、できるだけ運動させるようにしている。だけど、この時期の公園はちょっと寒い。だから、ラゾーナの子供が遊べる施設によく行くよ。そこはハドソンのお気に入りで、いつも大興奮して遊んでいるんだ。

息子と毎日一緒に過ごすのは楽しいよ。いろんなことを学んで成長していく様子を一番近くで見られるのは素晴らしいこと。でも、そうなると遠征で家族と離れるのは辛い。例えばワールドカップの時は事前の合宿も含めてしばらく会えなかったから寂しかったね。

いずれは父親と息子からベストフレンズの関係になりたい。しかし今の時期は、ハドソンはすべてを自分の思い通りにやりたいと動いているから、何が正しくて何が悪いのかを教えるのに厳しい態度を取ることもある。でも、ママの方が僕よりも厳しいよ(笑)。

「東京オリンピックを楽しみにしている」

──2020年の目標を教えてください。バスケットボール選手としてに加え、父親としての抱負も聞きたいです。

東京オリンピックを楽しみにしている。出場することができたら、僕のキャリアにとって一つの区切り、大きな勲章になる。川崎の選手としては、今シーズンになって上位チームに勝っているし、みんな再び僕らのことを脅威に感じていると思う。それは昨シーズンにはなかったことだから、自信になっている。

Bリーグとなってから、少なくとも一度はリーグ優勝したい。これこそ今、何よりも成し遂げたい重要なものだ。個人タイトル、MVPを取れる力があることはもう証明してきた。個人について何かをもう示す必要はない。今シーズンこそは優勝したいと思っている。

父親としては、正しいこと、悪いことの違い、他人にフレンドリーで、親切に接していくことの大切さを子供たちに教えられる父親でありたいと思っているよ。

──最後にファンへのメッセージをお願いします。

皆さんのサポートに感謝しています。2020年が川崎ブレイブサンダースにとって、そして日本代表にとって、より良い年になることを願っている。川崎でチャンピオンになり、オリンピックで勝利を挙げる一年にしたい。