■TBSの上村彩子(かみむら・さえこ)アナウンサーが現場で取材した大会でのエピソードや舞台裏、インタビューしたアスリートの魅力や意外な一面などを伝えるこの連載。今回のテーマは、元日の朝にスタートするニューイヤー駅伝。伝統ある大会の優勝争いや注目選手について語ってくれました。



ニューイヤー駅伝の中継を担当する上村彩子アナウンサー photo by Yamamoto Raita

 2015年にTBSに入社して以来、私が毎年中継を担当しているニューイヤー駅伝。2020年元日も、私はスタートフィニッシュ地点や監督ルームからリポートを担当します。 群馬県前橋市での年越しは私にとって今回で5回目になりますが、そのうちの3回は旭化成が優勝。4連覇達成なるかが、見どころのひとつです。オリンピックイヤーの2020年、最初の日本一が決まります!

 箱根駅伝を走ったスター選手たちも数多く出場するこの伝統の一戦は、今回で64回目になります。いわばお正月の風物詩。大学時代はチームメイトだった選手たちが違う実業団チームに入って戦う姿を見られるのは、ニューイヤー駅伝ならでは。同じ大学出身の先輩・後輩対決も楽しみです。

 今回初出場のGMOインターネットグループは、箱根駅伝で優勝経験のある青山学院大出身の選手たちが多く所属し、アドバイザーは、青山学院大学の原晋監督、チームを率いるのは上武大学を箱根駅伝初出場に導いた花田勝彦監督。もし初出場で初優勝したら、1984年に瀬古利彦さんが所属していたエスビー食品以来、36年ぶりの快挙となります。

 このほか、マラソンの前日本記録保持者の設楽悠太選手(Honda)や、以前この連載でも紹介したアジア大会ジャカルタでのマラソン金メダリスト・井上大仁選手(MHPS)の走りも見逃せません。。

 見どころ盛りだくさんのニューイヤー駅伝ですが、やはり前回王者であり最多の24回の優勝を誇る旭化成は、今回も盤石の強さ。意外なことに東京五輪マラソン代表を決める選考レースMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)に出場した選手はいませんが、実力者ぞろいで総合力が高いチームです。

 男子マラソンでも、旭化成は、過去に宗猛さん、宗茂さんの宗兄弟のほか、谷口浩美さん、森下広一さんなど、オリンピックにも出場した名ランナーが所属していた強豪。現在のチームでは佐々木悟選手が2016年のリオオリンピックに出場しました。

 その旭化成から王座奪還を狙うのが、近年は2015年と2016年に連覇を達成しているトヨタ自動車です。MGCで2位になり、東京五輪男子マラソン代表に内定している服部勇馬選手を軸に、4年ぶりの優勝を目指します。

 先日、トヨタ自動車の取材で愛知県田原市に行き、服部選手にお話を聞いてきました。服部選手はトヨタ自動車が連覇したあとの2016年春に入社したので、まだ優勝を経験していません。前回も5区で区間賞となり注目された服部選手ですが、今回は「自分が東京オリンピック代表ということでも注目される。その中で走ることを経験して、勝ちたい」と意気込んでいます。「この選手はオリンピックに出る選手だ」と思われてマークされながら走るのは、展開や駆け引きが今までとはまったく違うはず。そこで結果を出すことで、オリンピックにつながる手応えをつかむことも目標にしているようでした。

 トレーニングを取材している時、同じ新潟県出身の畔上選手が遅れだすと、積極的に声をかけるなど、全体を見てチーム引っ張っていく姿勢も意識も感じられた服部選手。堂々とした走り、そして端正な顔立ちから「しっかり者」というイメージがありますが、実はご本人も「うっかり者」と自覚しているように、忘れ物が多いという一面も。そのことはチームメイトの皆さんも十分わかっているようで、食堂でも会議室でもどこでも、「忘れ物があったら、それは服部のもの」ということになっているとのこと……。

 たとえば、MGC前のアメリカ合宿から帰る時にはパスポートを空港内のトイレに置き忘れた服部選手。すぐにチームメイトが見つけてくれて、無事に帰国できたそうです。さらに、MGCの2日前の記者会見では、チームジャージを忘れる。前回のニューイヤー駅伝では、走り終わって着替えたあとに、荷物やユニフォームなどを全部中継所に忘れる。などなど、たくさんあるようで、服部選手本人は「競技やひとつのことに集中しすぎちゃうのかな(笑)」と苦笑いしていました。

 ちなみに、服部選手の趣味はサッカー観戦。Jリーグはもちろん、欧州サッカーもチェックしています。好きなチームはオランダのアヤックス。先日インタビューした時には、アヤックスの今シーズンのスタメンを全員覚えていて、スラスラと名前を挙げてくれました。もちろんチャンピオンズリーグも見ているそうで、ライブ中継の観戦はさすがにできないので、練習のあとに見ているそうですが、準決勝と決勝は早起きして練習前に生中継で見るそうです。

 また、トヨタ自動車はその「駅伝愛」の深さがハンパない会社であることでも有名。なんと、1949年から続く社内対抗の駅伝大会は、2019年で73回目と、ニューイヤー駅伝よりも歴史が長いのです。アジアやアフリカなど海外の事業所からも参加者が集まり、566チーム約5000名が出場。応援も含めた来場者数は約3万5千人と、大規模すぎてもはや企業の社内行事とは思えません。

 私自身、初めてのニューイヤー駅伝が、トヨタ自動車が優勝した2016年で今も記憶に残っていますが、今回の取材で、これほどまでに駅伝愛にあふれている会社の実業団であることをあらためて知りました。こうして選手のパーソナルな部分や、チームのことを知ると駅伝もより楽しめますし、応援にも熱が入りますよね。

 ニューイヤー駅伝の中継は1月1日の朝8時30分スタートです! ぜひ、新年最初の日本一が決まる戦いを駅伝ファン問わず多くのかたに見ていただいてオリンピックイヤーをスポーツで盛り上げたいと思います。



 

■プロフィール 上村彩子(かみむら・さえこ)1992年10月4日 千葉県生まれ 【担当番組】TV-『S☆1』土/24:30〜 日/24:00〜 『SUPER SOCCER』日/25:20〜 『フラッシュニュース』金21:00頃~(変動あり)※隔週 『Oh!ベイスターズ2019』 金/26:55〜 RADIO-『千葉ドリーム!もぎたてラジオ』…日 /12:30〜