いくつもの熱い戦いが繰り広げられた、12月29日の「BELLATOR JAPAN」。その熱狂を引き継いで、12月31日に「RIZIN.20」が幕を開ける。

 中でもファンの注目を集めているのは、今年8月に堀口恭司を1RKOで下した朝倉海(かい)と、圧倒的な強さで難敵を蹴散らし続ける兄の朝倉未来(みくる)だろう。そこで髙田延彦氏に、”朝倉兄弟”の強さ、2人を中心に大きく動きはじめたRIZINのフェザー級・バンタム級についての展望を聞いた。



RIZINを代表する選手になった、弟の朝倉海(左)と兄の未来(右)

--注目度が高まっている”朝倉兄弟”について聞かせてください。まずは、兄である朝倉未来選手の魅力をどこに感じていますか? 

「まずは彼の佇まい、雰囲気だよね。その裏には、ケンカに明け暮れた青春時代があるわけだけど。彼が生きてきたバックボーンが作り上げたのか、生まれ持ったものなのかはわからないけど、彼が自然に作り出す”覚悟”にはスペシャル感がありますよ。毎試合に命を懸けていて、スマートフォンに必ず遺書を書いて残している。だからこその、あのファイトスタイルです。危険な香りがプンプンするでしょ。

 かっこいいじゃないですか。最近はキャラクターを作っている人も多いけど、彼はナチュラル。そこが最大の魅力だし、それがファイトスタイルにも反映されているのがいいね」

--朝倉未来選手のファイトスタイルの話が出ましたが、格闘家としての強さの秘訣はどこにありますか?

「一番の強みは、分析能力とそれをリング上で体現してしまう実行力、対応力だよね。実戦では、分析どおりにいかないことが多々ありますが、すぐにアジャストして瞬時に判断し、行動できる。全盛期のヒョードル、あるいはヴァンダレイ・シウバみたいなものですよ。相手の出方に対して、瞬時に軌道修正をしながらアクションを起こすんだけど、そのアクションが正しくて精度が高いのがすごい。だから相手が倒れるんですよ。

 そのうえ、冷静さも持っています。今年4月のルイス・グスタボ戦(3-0の判定で朝倉の勝利)の終了間際のタックルも本当にクレバーでした。打ち合っても引かない選手ですが、判定になることを想定して、最後の印象度を上げるためにテイクダウンをとった。勝負に徹したわけですね。ハートは熱いけど頭はクール。戦うために必要なものをすべて兼ね備えている選手です。

 スタンドでの攻めの圧力も相当なものだと思うね。修斗の伝説的なチャンピオンだった日沖発やリオン武も、ものの見事にやられている。1階級半上のグスタボからもダウンをとっているし、何度も下がらせるシーンがあったでしょ。矢地祐介との(7月の)試合もかなり体重差があった。つまり、今回のライト級GPの準決勝の中にいてもおかしくないわけだよね。でも、彼が本当にクレバーなのは、自分の適正体重にこだわって、フェザー級を盛り上げたいという意向を持ち、それを実行しようとする姿勢ですよね」



格闘技界を長らくけん引してきた高田延彦氏 photo by Tanaka Wataru

--”頭のよさ”も感じますね。

「でしょ? 彼が活躍すれば、世界中からフェザー級の強者が集まってきて、それがRIZINの価値向上につながる。”フェザー級の堀口恭司”になれるわけですよ。やっぱり適正体重で戦ったほうが、自分らしさを出せるし、リスクも少ないし、何より自分の価値が上がりますからね」

--対戦相手のジョン・マカパ選手は、BELLATORのトップ選手には敗北を喫しているものの、「立ってよし、寝てよし」の強豪だと思いますが。

「マカパの打撃はたしかに強い。でも粗削りで、ブンブン振り回してくるから、そう簡単にパンチが当たることはないと思うんです。だからステップワークして、様子を見てパンチを返していくことになるでしょう。ただ、マカパはグラップリングが非常に強いので、足腰・体幹の強い朝倉未来をグラウンドに引きずり込むことができるか、という点がポイントです。立っていたら朝倉未来が優勢。もしグラウンド勝負になっても、彼はしっかりマカパのことを研究しているはずなので、すべてさばいてスタンドに戻ることを想定していると思います。

 マカパは、BELLATORでは”中の上”の選手で、けっこう強いですよ。上に行けない理由は、チャンピオンクラスと戦っているから。つまり彼とやることによって、今の朝倉未来の、世界における位置がわかるということです」

--朝倉未来選手がどんな試合をしてくれるのか、非常に興味深いですね。

「この試合に勝利したら、名前が”太る”わけだからね。さっきも言いましたけど、『朝倉未来を倒せ』と世界の強い選手が集まってきて、RIZINのフェザー級はさらに盛り上がってくる。朝倉未来は何としてもマカパを倒して、自分の首を狙う人間が集まってくるような状況を作り出すことが大事ですね」

--今後のストーリーを大きく左右する重要な一戦ですね。では次に、この日のメインイベンターでもある、弟の朝倉海選手の強さをどう見ていますか?

「朝倉海の直近2試合を見ると、”様子を見る”ということがない。ゴングが鳴ってすぐに試合を決めに行っていますよね。それが彼の嗅覚だと思うんだけど、今年8月の堀口戦は60秒か70秒で終わっているし(1R1分8秒でKO勝利)、続く10月の佐々木憂流迦(うるか)戦も50秒くらいで勝っている(1R54秒レフリーストップ)。『ここだ』と思ったら一気に行く決断ができる選手で、相手は『えっ?』って驚いている間に終わっていた、という感じじゃないかな。

 朝倉海にはセオリーがないんですよ。終了までが短い試合も多いけど、スタミナがあるからフルラウンドだって戦える。とにかく、朝倉海とやるときは最初から最後まで油断ができないということです。隙があったらドドーンとくるからね」

--堀口選手との試合での、パンチが当たったあとに畳みかけるようなあの膝蹴りを見ると、迷いがないように思います。

「あんなことができるのは、相当にキレキレで”ヤバい奴”ということですよ。佐々木戦でも、顎を撃ち抜いたあとにもう一度パンチを入れて、相手が亀になったところで、大きなモーションで高い位置から頭部に膝蹴りを2発ほど入れていました。普段は優しい好青年なのに、いざスイッチが入ると、とどめを刺すまで非情な攻撃ができるんですよね」

--今回、ケガによって欠場した堀口選手との再戦が実現しなかったのは残念でしたね。

「一番心を痛めていたのは堀口であり、朝倉海です。その試合の意味を誰よりもわかっていた2人だから。私もこの試合が発表されてから、毎日のように再戦のことばかりを考えていましたよ。どんな気持ちでこの試合を観ることができるのか、『たぶん震えちゃうんじゃないか』って。『どちらも勝者だ』と言ってあげたいくらいのカードだから、実現することを楽しみにしていますよ」

--その朝倉海選手が、堀口選手が返上したバンタム級のベルトを賭けて、12月31日にマネル・ケイプとタイトルマッチを行ないます。この試合後のストーリーに期待してしまいますが。

「でも、もしかしたら、我々が思い描いたものとはまったく違った状況になるかもしれない。今回のケイプは本当に気持ちが入っていますから。彼は身体能力は高いし、粘り強いし、変則的な動きをするので、何が起きるかわからない。実際に、前回の朝倉海との試合(昨年5月)は、どちらが勝ってもおかしくない内容でした(2-1の判定で朝倉海の勝利)。朝倉海にとっては、非常に危険な相手ですね」

--さらに、この試合の勝者は、同日に行なわれる石渡伸太郎vs扇久保博正の勝者と戦うことが決まっています。

「石渡と扇久保の試合は、間違いなく盛り上がりますよ。両選手にとってのターゲットだった堀口恭司を、朝倉海という若い男に目の前で持っていかれて燃えているはず。この試合に勝てば、(朝倉海vsケイプの勝者が保持する)王座に挑戦できるわけだから、なおさらですよ。2人には挑戦者にふさわしい経験値もありますしね。

 石渡は、たとえ両手がなくなっても戦うんじゃないかというほど、気の強い男です。風貌もいいし、本当に”ケンカ屋”だから、バンバン殴りにいくでしょう。対する扇久保は、とにかく粘ってタックルを仕掛けて、グラウンドに持っていきたいはず。これは激しい試合になると思うよ」

--RIZINバンタム級の王座争いは目が離せませんね。

「堀口がチャンピオンの時は、みんなが彼の名前を口にし、包囲網が敷かれました。その牙城が朝倉海に崩され、そして今回のタイトルマッチです。朝倉海とケイプのどちらが勝つにせよ、勝ったほうが追われる立場になる。それによってメンタリティが変わってくることもあると思います。バンタム級には、ほかにも元谷友貴や、ビクター・ヘンリーなどいい選手がたくさんいる。本当に”激戦区”ですから、この階級で誰が抜けてくるのか、本当に楽しみだね」