豪華カードが目白押しの「RIZIN.20」。前回は、朝倉未来・海兄弟を中心とするRIZINのフェザー級・バンタム級について語った髙田延彦氏。今回はそこで語り切れなかった、RIZINライト級トーナメントで注目の外国人選手たちをはじめ、「見逃し厳禁」の注目カードについて話を聞いた。



高田延彦氏が注目する新スター候補とは?

――今大会の大きな注目ポイントである、RIZINライト級トーナメントの展望について聞かせください。

「今回のライト級トーナメントは、絶対に見逃せないですね。まずはトフィック・ムサエフとジョニー・ケースの試合。ムサエフはアゼルバイジャンの選手で、”未知の強豪”としてRIZINのリングに上がってきました。パンチも蹴りもグラウンドもできるオールラウンダーな選手に成長していて、今も強豪が揃うジムに出稽古に行き、スキルを上げています。ひとつひとつの仕草がすごく絵になる、非常に面白い選手ですよ。

 一方のケースも優勝候補です。レスリングベースの選手で、非常にバランスがいい選手ですね。また、”ハリウッド”の異名を持ち、非常に高いプロ意識を持っている選手でもある。彼らが準決勝で潰し合うわけです。今回のトーナメントは同日に決勝もあるので力を残しておきたいところでしょうが、そんな余裕はないでしょう。ましてフルタイムの勝負になれば、スタミナのロスもあるし、ケガを負う可能性も高くなるでしょうね」

――もうひとつの準決勝は、ブラジル人同士の対戦。ルイス・グスタボ選手とパトリッキー・”ピットブル”・フレイレ選手の試合についてはいかがですか?

「グスタポは幼少期を過酷な環境で過ごし、ストリートの抗争に巻き込まれてお父さんを目の前で亡くしています。それをきっかけに格闘技に打ち込み、ヴァンダレイ・シウバに見出されて、ここまで上り詰めてきました。彼は荒削りですが、非常にアグレッシブで勝負勘があり、キレが鋭い選手です。対戦相手のフレイレは、弟がBELLATORのチャンピオンなんですけど、彼もBELLATORの象徴的な選手で非常に強い。パンチ力に定評がある彼は、決勝までダメージを受けずに戦う作戦を立てているでしょう」

――4人それぞれに個性がありますし、揃って好戦的なタイプですね。彼らは、まだ日本ではあまり知られていない選手ですが、どのように日本で名を上げていくのか非常に楽しみです。

「よく思い出してください。K-1やPRIDEの全盛期、その人気を支えたのは外国人のスター選手たちでした。K-1なら、アンディ・フグ、ピーター・アーツ、ジェロム・レ・バンナ、マイク・ベルナルド、マーク・ハント、アーネスト・ホースト……。彼らもはじめは無名の選手でした。PRIDEも同じで、桜庭和志や、途中から吉田秀彦などが出てきましたけど、メインを飾ったのはエメリヤ-エンコ・ヒョードル、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、ミルコ・クロコップ、ヴァンダレイ・シウバといった外国人選手なんです。

 今回のライト級トーナメントも、RIZINの人気を支えられるだけの実力があり、アグレッシブに戦うファイターが揃っています。ここに日本人がいないのは残念ですが、準決勝と決勝の3試合は、絶対にハズレがない試合になりますよ。総合格闘技RIZINのすごさを、外国人のスター選手が生まれる瞬間を観てもらいたい。それは、今年行なわれたラグビーワールドカップと同じで、理屈抜きで伝わるものだと思います。ぜひ、お茶の間の皆さんにも見てもらいたいですね」

――当時のK-1やPRIDEの外国人スター選手たちには、多くのファンが感情移入し、応援していましたね。

「そうなるためには、やっぱり地上波のテレビ放送がある大会で、いい試合を見せていかないとダメ。昔だったら、街を歩いていたら『マイク・ベルナルドだ』『ヴァンダレイ・シウバだ』となっていたわけじゃないですか。それと同じように、『ムサエフだ』『グスタポだ』とならないとね。

 繰り返しになるけど、かつての名ファイターたちも、まったく知名度がない選手だった。僕も1998年の頃はヴァンダレイ・シウバの『ヴァ』の字も知らなかったし、RIZINが始まった2015年くらいには、那須川天心のことも知らなかったですよ。やっぱり、すごい試合をすれば、スターが生まれるということ。彼らには何とか頑張ってもらいたいね」

――ライト級トーナメントのほかにも、見どころのある試合についていくつか聞かせてください。那須川天心選手vs江幡塁選手の注目ポイントは?

「『もしかしたら江幡が勝つんじゃないか』という声もチラホラと聞こえてくるけど、彼もいい選手ですよ。2人は身長もベストウェイトも同じくらいなんじゃないかな。この試合は、1ラウンドであっさり終わるんじゃなくて、フルラウンドの”どつき合い”を見てみたいですね。江幡はこれまで肘ありルールでずっとやってきているから、今回はそれが禁止されていることがどう影響するのか。いずれにせよ、江幡が、天心を倒せるだけのポテンシャルを持っているというのであれば、この大舞台で、テレビを観ている多くの人たちの前でその力を出し切ってほしいです」

――今大会は”女子格”のカードも充実していますね。

「そうですね。まずは、リンジー・ヴァンザントvsRENA。RENAにとってはリベンジ・マッチになる。前回は今年の6月に、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンの”金網マッチ”で負けました(1Rリアネイキッドチョーク)。スタンドの勝負ではいい展開を作っていたんだけど、グラウンドに引き込まれて我を失ったね。でも、今回はリングだし、十分に寝技の対策を練っている。いろいろ出稽古にも行っているみたいだから、同じテツは踏まないと思うよ。

 あと、浜崎朱加vsハム・ソヒも面白いね。今は浜崎がベルトを持っているけど、奪われる可能性もあるよ。浜崎はフィジカルが強い選手が苦手なんだけど、ソヒはフィジカルがムチャクチャ強いんです。10月の試合も、”フィジカルモンスター”と言われる山本美憂のタックルを、最初に2、3回受けて以降は戦いながら軌道修正したでしょう。タックルの切り方がうまくて、パンチと蹴りも強い。2人は過去に2度試合をしていて、2回とも浜崎が勝っているけど、最後の試合が8年前のこと。お互い変化・進化していますからね。

 再戦としては非常にいいタイミングだと思います。ただ、もし浜崎が勝ったら、もうこの階級には彼女に対抗できる相手がいないので、おそらく階級をひとつ上げるだろうね。そうすると、海外の大会でも活躍する村田夏南子とやらなきゃいけなくなるかもしれない。それだけ今、この階級で浜崎は”無敵の存在”。この試合も外しちゃいけないね」

――多くの見どころを聞かせていただいありがとうございました。

「もういいの? 本当に? 全部のカードに見どころがあるからね。年末は『RIZIN.20』から目が離せなくなると思いますよ」