予想どおり、パリ・サンジェルマンが首位を独走する格好でシーズンの前半戦を終了した今季のフランス「リーグ・アン」。そんななか、日本人サッカーファンが気になる日本代表DFふたりの状況は、くっきり明暗が分かれてしまった。 あいかわらずチームに欠…

 予想どおり、パリ・サンジェルマンが首位を独走する格好でシーズンの前半戦を終了した今季のフランス「リーグ・アン」。そんななか、日本人サッカーファンが気になる日本代表DFふたりの状況は、くっきり明暗が分かれてしまった。

 あいかわらずチームに欠かせない駒としてマルセイユで活躍し続ける酒井宏樹が「明」とすれば、故障に泣かされてシーズンの半分を棒に振ってしまったトゥールーズの昌子源が「暗」。しかも両チームの成績は、まるでふたりの状況に比例するように、実に対照的なものとなった。



昌子源は度重なるケガで前半戦のプレー時間はわずか45分

 まず、首位PSGを7ポイント差で追う暫定2位でシーズンを折り返したのが、酒井のマルセイユだ(PSGはマルセイユより1試合消化が少ない)。シーズン序盤にはその手腕に疑問の声も挙がっていたポルトガル人アンドレ・ビラス・ボアス新監督にとっては、予想外の好成績と言えるだろう。

 序盤から不安定なパフォーマンスが続いていたマルセイユの転機となったのは、第12節のホームでのリール戦だろう。0−4で完敗した第11節PSGとの「ル・クラスィク」と、その3日後に行なわれたリーグカップのモナコ戦で連敗を喫したあとだけに、チームにとっても指揮官にとっても崖っぷちの状況で迎えた一戦だった。

 しかし、スタンドのサポーターが「監督辞任」の横断幕を掲げるなかで迎えたその試合で、マルセイユは相手GKとDFが交錯するなかでこぼれたボールを押し込んで先制すると、終盤には相手DFのオウンゴールで追加点。しかも、相手指揮官が後半途中にレッドカードを受けて退席するという幸運も重なり、決していいとは言えないパフォーマンスでありながら、2−1で勝利を収めたことが大きかった。

 さらに翌第13節の強豪リヨンとの一戦では、相手DFの不用意なハンドで得たPKで先制すると、エースのディミトリ・パイェのスーパーゴールで2点リード。後半はリヨンの猛反撃を受けたが、退場者ひとりを出しながらも1失点でしのぎ切ることに成功した。

 上位争いのライバルを相手にホームで2連勝したことで、完全に潮目は変わった。

 以降、マルセイユは怒涛の快進撃。6連勝を含む8戦無敗という好成績を残して順位を急浮上させ、チャンピオンズリーグ出場圏内でクリスマス休暇を迎えることとなった。

 好成績の要因として、パイェが完全復活したこと、さらにはスタメンがほぼ固定されたことなどが挙げられるが、加入4年目の酒井もチームの快進撃にしっかりコミットしている。

 チームが不安定だったシーズン序盤は、昨季同様に左サイドバックでプレーすることも多々あった酒井だったが、リール戦以降は本職の右サイドバックでプレー。ここまではアシストや得点を記録していないが、第16節のアンジェ戦ではPKを獲得して先制ゴールを生むなど、数字以上に貢献度は高い。

 その安定したプレーぶりは、現地メディアでも高く評価されている。たとえば『レキップ』紙は、直近の第19節ニーム戦における酒井の採点を「6」としたうえで、次のように評価した。

「いつものように守備面で規律があり、熱いボールを供給して前線中央とのつなぎ役となった。攻撃参加は少なかったが、先制ゴールの起点となったように、よい仕事をした」

 前半戦の国内リーグ19試合のうち16試合に先発し、フィールドプレーヤーでは4番目となる1382分のプレー時間を記録している酒井に、今のところ死角は見当たらない。それだけに、長期離脱中のフロリアン・トヴァンが右ウイングに復帰しそうなシーズン後半戦は、酒井のさらなる活躍が期待できそうだ。

 一方、トゥールーズの昌子源は、酒井とは対照的に何も残せないままシーズンを折り返すこととなってしまった。

 プレー時間はわずか45分。今年の冬に加入して即レギュラーを獲得し、18試合で先発フル出場を果たした昨季の後半戦は1620分のプレー時間を誇っただけに、昌子にとってもチームにとっても大誤算の前半戦だった。

 事の発端は、開幕直前に行なわれたプレシーズンマッチだった。

 CBの相棒クリストファー・ジュリアンがセルティックに移籍したこともあり、今季の昌子は守備の要として期待された。だが、その試合で左足を負傷。以降はリハビリに専念し、第7節のアンジェ戦でようやくピッチに復帰した。

 ところが、上々のパフォーマンスを見せていたその試合の前半終了間際、今度は足首を負傷して45分間のプレーのみで途中交代。さらに、復帰間近と伝えられていた11月上旬、練習中に痛みが再発し、結局復帰できないまま不本意な前半戦を過ごすこととなった。

 昌子不在のなか、チーム状況も悪化の一途を辿った。

 それほどいいパフォーマンスとは言えないなかでも、マルセイユは結果を出すことでチームに好循環が生まれた。それとは対照的に、トゥールーズの場合はそれほど悪くない内容を見せながらも、結果を出せないことで悪循環に陥ってしまった印象だ。

 とりわけアラン・カサノバ監督の誤算となったのは、昌子が負傷したことでCBを固定できなかったことだった。ケルビン・アミアン、バフォデ・ディアキテ、マテュー・ゴンサルヴェスといった既存の戦力に、新戦力のアグスティン・ロヘルやニコラ・イシマ=ミランといった駒をパズルのように組み合わせるも、ディフェンスリーダーになり得る存在は見当たらず、最適解を見つけられない状況が続いた。

 そんななか、10月10日にはサポーターからの脅迫メールによって指揮官が辞任。フロントはアントワーヌ・コンブアレを新監督に招聘して巻き返しを図り、就任直後のリール戦には勝利するも、それ以降は泥沼の9連敗。不振に拍車がかかり、まさかの最下位で後半戦を迎えることとなってしまった。

 このままの状態が続けば、トゥールーズの降格は必至。早くもコンブアレ新監督の進退問題が話題の中心となるなか、果たして後半戦で巻き返すことができるのか。

 逆に考えれば、年明けからの復帰が期待できそうな昌子にとっては、チームの救世主となるチャンスと言える。