いよいよ来年2020年に迫り、大きな盛り上がりを見せている東京オリンピック。そんな一大祭典とともに、今、日本のトップ企業で働く多くのビジネスパーソンが東京パラリンピックに注目しているという。

その理由には、想像を超えた競技の面白さ、新しい価値観との出会い、さらには未来社会へのキーとなるムーブメントなどがあげられ、一時的な2020観戦ブームに留まらないというのだ。

そこで、11月16日に開催されたパラスポーツ体験イベント「i enjoy ! パラスポーツパーク in ParaFes」に出展していた企業で働くビジネスパーソンたちに、パラスポーツの魅力とパラリンピックによって生まれたムーブメントについて話を聞いた。

「頭脳戦のボッチャは、プレーヤーの視点で観戦すると面白いですね」
課長代理 羅宇沢さん

1つは、野村ホールディングスが支援をしているシッティングバレーボールです。プレーヤーが全員座った状態でバレーボールをプレーするので、障がいの有無に関わらず、誰もが一緒に楽しめるのが良いですね。また、通常のコートよりも少し狭く、より近い距離で座ったままボールをつなぎ合うのは想像以上に大変です。なので、チーム内でコミュニケーションが生まれやすく、あまり知らない人同士でも仲良くなれるのが魅力です。

もう一つは、パラリンピック独自の競技、ボッチャ。赤ボールと青ボールのチームに分かれ、ボールを6球ずつ投げ合い、目標球として置いた白いボールに近いほうが勝ち、というシンプルな競技なんですが、スポーツの得意、不得意関係なく、誰でも楽しめるのが好きですね。もう3年くらいやっているんですけど、センスが問われる競技でして、なかなか私は上達しないのですが(笑)。

トップ選手の試合では、時々選手があえて目標の白ボールの近くではないところに投げることがあるのですが、それが2手、3手先を考えて投げることだったりして。次はどう投げるんだろうと、プレーヤーの視点に立って考えると観戦もすごく面白いです。

パラスポーツを見たり、体験したりするようになってから、自分の心持ちが大きく変わりました。実際、障がいのある方とどう関わればいいのか分からない、という方が多いかもしれませんが、パラスポーツと関わるようになって思うのは、障がいがあってもなくても、気持ちはなんら変わらないということ。同じように冗談を言って接したり、変に気を張らずに接したりすることができるようになったのも大きな理由の一つです。この大会を機に、こうした「心のバリアフリー」が広まることに期待しています。

「2000名以上の社員を巻き込んで、様々な角度から大会を盛り上げていきます!」
©︎ X-1

― <野村ホールディングス>のパラリンピックムーブメントは何ですか?

日本パラバレーボール協会のスペシャルトップパートナーとして競技の普及をサポートしています。例えば年2回開催されるシッティングバレーボールの全国大会に協賛しているのですが、ただ協賛するだけでなく、社員も「チームNOMURA」を作って試合に出場したり、社員や家族による観戦会を開いたり開会式を盛り上げたりと、様々な角度から大会を応援しています。ほかにも、競技の魅力を伝えるPVを作成したり、役職員を巻き込んだ体験会も開いています。

また、パラスポーツの理解と普及の観点からボッチャの普及活動にも取り組んでいます。今年は様々な企業とボッチャの対抗戦を実施したり、社内の50を超える部店で体験会を開催し、延べ2000名を超える社員にボッチャと触れていただきました。

こうした取り組みが社内に根付き、ダイバーシティへの理解やインクルーシブ社会の実現に向けたきっかけとなれば良いなと思いますね。

野村では他にも様々な取り組みをしているので、よろしければ当社のホームページをご覧ください!(https://www.nomuraholdings.com/jp/tokyo2020/)

「スピード感溢れる車いすバスケは、みんなで盛り上がれるのが楽しい!」
石丸紀代さん

車いすバスケットボールにハマっているのですが、スピーディーな展開だったり、車いすのテクニックなども凄くて、観戦していてみんなで盛り上がれます。当社は一般社団法人 日本車いすバスケットボール連盟に協賛させていただいていて、会社のみんなと試合を観に行く機会も多いのですが、選手のみなさんそれぞれが目標や夢を持って努力している姿を見ると、自分も真剣な姿勢で仕事に取り組んでいこう!といつも勇気をもらっています。

私には小さな子どもがいるのですが、子どもたちがプロ野球の応援に行くのと同じような感覚で、車いすバスケなどを一緒に観に行きたい。パラスポーツがもっともっと身近になることで、障がいのある方もない方も、個性の一つとして捉えられるような子どもに育てていきたいと思っています。そういった意味で来年の東京パラリンピックは、子どもたちへの教育、そしてこれからの日本の社会を変える大きなきっかけになると思っています。

「何千人という規模の仲間と一緒に、東京パラリンピックを観戦したい!」

まずは社内で興味を持ってもらうため、パラリンピック独自の競技で、老若男女誰もが楽しめるボッチャ大会を社内で開催したり、パラリンピアンの講演を年に一度必ず行なっています。全国に事業所があるので、映像を繋いで中継することで、社員みんなで盛り上がっていますね。次に、応援観戦サポーターと名付けて、社員がパラリンピックを応援しやすい取り組みも行っています。2020年の本番は、社員やその家族も含めて何千人という規模の仲間と一緒に生でパラリンピックを観戦したいと思います!

今回のイベントブースでは、表彰台に乗って記念撮影ができるフォトコーナーを設置しました。また、パラリンピアンに心を込めたメッセージを贈ろう!ということで、ハート型の折り紙に熱い応援をのせて届ける「ENEOS おりがみ プロジェクト」を2018年8月からスタート。現時点で7000枚以上、東京パラリンピック本番までには1~2万枚くらい集まると思うので、モニュメントにして選手たちに届けたいと思います。

「車いす同士が激しくぶつかり合う、車いすラグビーの迫力が本当にスゴイ!」
主事 鵜沢周平さん

車いすラグビーが断然面白いですね! 弊社の社員の1人に、車いすラグビーの元日本代表選手でアテネパラリンピックのときにキャプテンをやっていた福井正浩さんがいて、彼が車いすラグビーに興味を持つきっかけをくれました。

車いすラグビーは、パラスポーツの中で唯一車いす同士のタックルが認められているスポーツなのですが、その車いす同士がぶつかる音や攻防が激しくて、迫力が本当にスゴイ! 実際に自分たちも体験してみようと、健常者同士でゲームをやる機会があったのですが、試合を観ていると、選手が自由に車いすを操作しているので簡単なんだろうなと思っていたんですが、実際に操作してみるとまったく思うようにいかなくて(笑)。相手が近くにくるとプレッシャーでなかなかパスを出せなかったりで、やはり実際に体験してみるとその難しさや面白さが分かって、俄然興味も深まりました。

個人的に小さな頃から車いすの方々と関わる機会があったのもあり、元々誰もが分け隔てなく、共存しあえる社会がいいと思っていました。バリアフリーやダイバーシティなど、この仕事を通じて障がい者も健常者もみんなが共生できるような雰囲気をこれからも作っていきたいと考えています。

「パラリンピックを通じて学んだことをレガシーとして残したい」

来年の東京パラリンピックに向けて、協賛している車いすラグビーの普及活動と認知拡大を目的とした取り組みを行うほか、会社として誰もが暮らしやすい街づくりも手掛けています。パラスポーツを通じてバリアフリーの大切さも学べたので、そういった取り組みを、まさにレガシーとして残していきたいと思っています。

今回のイベントブースでは、車いすラグビーの魅力である、その迫力を伝えるために、実際に競技用車いすに乗ってタックルを体験できるブースを作りました。「百聞は一見に如かず」ということで、当たるだけで相当なインパクトがあるタックルを受けてみるのが一番分かりやすいかなと。会場では、どこよりも大きな音で注目を浴びていましたよ(笑)。

「一つ一つのパートナーシップに込められたストーリーに、心を揺さぶられます」
リーダー 鳥山 聡子さん

車いすテニス、パラバドミントン、パラトライアスロンはどれも本当に面白いので、ぜひ観ていただきたいです。車いすテニスのチェアワークはオリンピアンも驚くほどの素早さですし、パラバドミントンの驚異的な背筋力もすごい。パラトライアスロンは選手の工夫が凝縮されたトランジションも見応えがあります。

また、相棒となる“道具”と“人”とがタッグを組んで戦っているところにも、パラリンピックならではの熱いストーリーを感じます。道具には技術者の方の想いが込められていますし、ガイドやサポートという形で“人”と“人”がタッグを組む場面もあり、一つ一つのパートナーシップに込められたストーリーにいつも心を揺さぶられます。

これから私たちが目指すべき共生社会とは、多様性を認めあえる豊かな社会。パラアスリートのみなさんと一緒に過ごしていると、“自分の限界”、“自分ができないこと”への挑戦という意味では障がいの有無はあまり関係ないように感じます。一つ一つの“できること”、“できないこと”が豊かな”個性”であると気付かされるのです。パラリンピックは、そんな心豊かでわくわくする未来の社会を実現するきっかけだと思っています。

「パラスポーツを通じて、よりインクルーシブな社会を創造したい」

ブリヂストンでは“Active and Healthy Lifestyle(AHL)”というコンセプトで、すべての人がいきいきと生活できる共生社会の実現を目指し、様々な取り組みを行っています。パラリンピックに関しては、当社の技術を活用してパラアスリートの困りごとを解決するべく、パラトライアスロンの義足ゴムソールなどの技術支援を行っています。今回出展したブースでは、スポーツ用義足の体験ブースを展開し、義足を操ることの難しさやパラアスリートのすごさを多くの方に感じていただけたと思います。

また、ブリヂストンはさまざまな困難を乗り越えながら、夢に向かって挑戦し続けるすべての人の挑戦・旅(Journey)を支えていくという想いを、“CHASE YOUR DREAM”というキーメッセージに込め、グローバルにパラリンピックをサポートしています。パラスポーツを通じてよりインクルーシブな社会を創造すること、そして人々がより快適に移動し、生活し、働き、楽しむことができるよう貢献することを目指しています。詳しくは当社のオリンピック・パラリンピックWebサイト(https://www.bridgestone.co.jp/chaseyourdream/)を確認してもらえると嬉しいです。

「実際に体験してみると想像を超えた面白さがあって、観戦が何倍も楽しくなります!」
日本航空株式会社 コミュニケーション本部 ブランドエンゲージメント推進部 インナーブランディンググループ佐藤好さん

実際に自分自身で体験してから、車いすバスケットボールにハマっています。見ているだけの時は、車いすの操作がすごく難しそうと思いましたが、実際に乗ってみると思いのほかコントロールが効くのが面白くて。それから、手の力だけだとパスやシュートが全然届かなくて、上半身の力を使うのだと、やってみて分かりましたね。体験後は、盛り上がる場面も肌でわかるようになって、応援もよりリアルに白熱するようになりました。

車いすバスケは、一般のバスケットボールのルールと共通しているところも多く、車いすユーザーだけでなく、健常者も一緒に楽しみやすいので、初心者でも入りやすいパラスポーツだと思うのでおすすめです。

パラリンピックはスポーツとしても非常に面白いのですが、未来のダイバーシティ&インクルージョン社会の足がかりになるものだと思っています。2020年の東京パラリンピックに向けて、<日本航空>でもパラスポーツの楽しさを知ってもらうための様々な取り組みをしていますが、2020年のその先もこういった取り組みを継続してやっていきたいですね。

「まずは全国各地の社員全員がパラスポーツを体験し、身近に感じることから」

弊社は全国各地にグループ会社があるのですが、現在ボッチャを広めていて、地方で定期的にボッチャ大会を開催しています。ボールのセットさえあれば、どこでもできるパラスポーツなので、まずは社員みんなにボッチャを体験してもらって、パラスポーツを身近に感じてもらえるような取り組みをしています。

パラスポーツを身近に感じてもらうことで、互いを認め合い、思いやれる社員の集団になってもらいたいと思っており、それが、お客さまサービスにも繋がってくると思っています。すべてのお客さまに安心してご旅行いただけるよう、我々JALグループは努力を重ねて参ります。

さらに、折り紙ヒコーキ教室というものも各地で行っていて、全国大会も開催しています。今回のイベントブースでは、そんな活動も知っていただくため、日本航空の制服を着用して記念撮影ができるフォトブースと一緒に、得点の付いた的の中に入れる折り紙ヒコーキゲームを実施しました。

「流れひとつで簡単に逆転する、車いすバスケットボールが面白い」
株式会社モリサワ 東京2020推進室リーダー 白石歩さん

現在の東京2020推進室の部署に配属になってから、パラスポーツをいろいろ見て回るようになったのですが、こんな世界があるんだと俄然興味が湧いてきて、今では観戦可能な競技は毎週見に行っています。中でも車いすバスケットボールは、接戦のシーソーゲームになりやすく、10点以上離れていても、試合の流れひとつで簡単に逆転するので本当に面白い。ハーフタイムはチアリーダーが出てきて会場を盛り上げたり、ひとつのスポーツ興行として力が入っていてエンターテインメント性もあって楽しいんですよ。

モリサワの社是が、“文字を通じて社会に貢献する” なのですが、パラリンピックには、それを体現する機会がたくさんある。たとえば、 私はまだパラスポーツ観戦歴が浅いのですが、その分、一般の人と近い目線にあるということ。だからこそ、他の社員がパラスポーツをどう受け取っているんだろう、どう届ければ自分ごととして捉えてくれるだろうか、ということを常に考えながら見ています。そういったことの積み重ねが会社の人にも少しずつ広まり、また一人一人がそこに気づきを得ることで、その先の共生社会に繋がるのではと。共生社会の実現へ向けた第一歩として、モリサワはUD(ユニバーサルデザイン)フォントと同様に、パラリンピック、パラスポーツに本気で取り組んでいきます。

「まずは、モリサワの社員みんなでパラリンピック観戦を盛り上げていく」

弊社が協賛させて頂いているパラスポーツは車いすバスケットボールなのですが、それだけではなく、社員のみんなにもっと幅広くパラスポーツを応援してほしいと願い、全国にある事業所エリア毎に観に行ける大会や体験会をリストにして伝えています。まずは一人でも多くの社員のみんなに観戦しに来てもらい、楽しんでもらうことが大事だな、と。少しでも興味を持ってもらえるよう、観戦しに来てくれた人には褒賞を与えるなども行なっています。

今回のイベントブースでは、「エアーサイン」を実施しました。競馬の優勝ジョッキーやテニスの勝者などが、インタビューの後にカメラレンズにサインをするじゃないですか。それを体験していただきたいと。普段はなかなかできない体験なので、サインを書いているところをスマホで動画として撮って、後で見て楽しんでいただければ。文字文化と向き合い、95年間文字を開発してきた当社ならではの“文字”に触れていただく企画です!

「車いすフェンシングの一瞬の攻防は迫力満点!まさに超人スポーツですね」
浜崎克敏さん

うちの社員が車いすフェンシングの公式審判員の免許を取得したのがきっかけで、猛烈に薦められて(笑)観るようになってから、すっかり車いすフェンシングのファンになりました。車いすフェンシングは、車いすが固定された状態というのも特徴の一つなんですが、健常者で言うとデスマッチの最中にいるような距離感、かつあのスピード感で剣をやりとりするというのは、まさに超人スポーツ! あのスピードと迫力は生で見ないと分からない。距離感の決まった空間の中で行われる一瞬の攻防は迫力満点なので、ぜひ見てほしいですね!

パラリンピックやパラスポーツを通して、これからの未来のあるべき姿である共生社会に近づけるのではと考えています。2020年東京パラリンピックが盛り上がって、その後、いろいろな競技やイベントにみんなが参加できるような状況になればいいなと。そうなるように弊社としても取り組みを継続していきますし、健常者も障がいのある人も、自然と混ざり合えるようなツールや仕組みをどんどん提供していきたいと思っています。

「健常者も障がいのある人も、困っている時にお互い助け合えるアプリを開発しました」

弊社が取り扱っている漫画やイラスト、アニメという手法を使って、パラスポーツをみんなに知ってもらおうと、「東京アニメセンター」という日本のアニメ文化を世界に発信する施設を日本動画協会と共同運営し、パラスポーツの魅力を発信するような展示を継続して行っています。

今回のイベントブースでも、東京アニメセンターで展示されたイラストなどを飾りました。アニメや漫画で描かれることによって、普段なら目に入らないことでも、作者やイラストのタッチで目に留まることがある。そんな最初のきっかけとして、漫画・アニメの力というのは非常に効力を発揮すると考えています。

また、弊社ではパラスポーツを通じた共生社会の実現に向けて、コミュニケーションツールも開発しました。「May ii(メイアイ)」(https://mayii.jp/)というアプリなんですが、障がい者と健常者が困っているときに知らない間にすれ違うのではなく、アプリを通して気軽に手助けができ、お互いが大会を観に行く、目的地に移動するなど、そういった共助を実現するツールとして2020年に向けて広めていく予定です。パラリンピックをTVで観るよりも、生で観戦しましょう、お出かけしましょうと勇気づけられるようなアプリになればと思っています。

今回取材したトップ企業で働くビジネスパーソンたちは、みんないきいきとパラリンピックやパラスポーツの魅力について語ってくれた。隔たりを無くし、自分ごととして考えてみることによって出会う、新しい価値観を持った自分。パラリンピック・パラスポーツは、そんな機会を与えてくれるようだ。まだパラスポーツを観戦したことがない人は、パラリンピック本番前に、ぜひ一度観戦・体験をしてみてはいかがだろうか。

text by Jun Nakazawa(Parasapo Lab)

photo by Tomohiko Tagawa, X-1