12月27日からいよいよ、99回目を迎える「花園」全国高校ラグビー大会が始まる。ワールドカップ会場となった大阪・東大阪市花園ラグビー場で、全国都道府県予選を勝ち抜いた51校(北海道と東京は2校、大阪は開催地枠も含めて3校)が参加し、1月7…

 12月27日からいよいよ、99回目を迎える「花園」全国高校ラグビー大会が始まる。ワールドカップ会場となった大阪・東大阪市花園ラグビー場で、全国都道府県予選を勝ち抜いた51校(北海道と東京は2校、大阪は開催地枠も含めて3校)が参加し、1月7日の決勝戦で高校ラグビーの頂点が決まる。



昨年度は大阪桐蔭が優勝。99回目の花園を制するのは?

 すでに今シーズンの戦いぶりから、Aシード3校、東西5校ずつのBシード10校、計13のシード校が決まっている。Aシード校は準々決勝まで、Bシード校は3回戦まで他のシード校と対戦しない。シード13校は以下のとおり。

【Aシード】桐蔭学園(神奈川)、京都成章(京都)、御所実業(奈良)

【Bシード東】國學院栃木(栃木)、流通経済大柏(千葉)、東京(東京第1)、日本航空石川(石川)、中部大春日丘(愛知)

【Bシード西】大阪桐蔭(大阪第1)、常翔学園(大阪第2)、東海大大阪仰星(大阪第3)、東福岡(福岡)、佐賀工(佐賀)

 これらシード校のなかでも、優勝候補と目されているのは6校。とくに、東西の「桐蔭」が強い。

 日本代表WTB(ウィング)松島幸太朗の母校でも有名な桐蔭学園。春の選抜は3連覇を成し遂げ、夏のセブンズ(7人制ラグビー)大会も制し、史上3校目の「高校3冠」を狙っている。FWとBKが一丸となってつなぐラグビーと、ターンオーバーからのアタックが伝統的な持ち味だ。

 今年の桐蔭学園はFWの選手が大きいのも特徴。身長189cmのLO(ロック)安達航洋(3年)、副将のPR(プロップ)床田淳貴(3年)、前に出る力が強みのLO青木恵斗(2年)、U17日本代表で主将を務めたNo.8(ナンバーエイト)佐藤健次(2年)がFWを引っ張る。

 一昨年度は準決勝、昨年度は決勝で「西の桐蔭」——大阪桐蔭に負けた。主将のSO(スタンドオフ)伊藤大祐(3年)が中心となり、桐蔭学園は初の単独優勝なるか。

 その大阪桐蔭は花園連覇に挑む。春の選抜大会は出場を逃した。主将のFL(フランカー)奥井章仁(3年)とHO(フッカー)江良颯(えら・はやて/3年)が高校日本代表に参加して不在だったからだ。結果、今大会はBシードに振り分けられた。

 だが、今大会の予選決勝で大阪朝高を66−5で一蹴したように、実力はAシードと変わらない。FWの推進力だけでなく、BKにもスキルの高いSO嘉納一千(いっせん/3年)とランに長けたFB(フルバック)芦塚仁(3年)を擁しており、地元の声援を背に勝ち上がってくるだろう。

 残るAシードの2校も、もちろん優勝候補の一角だ。

 近畿大会王者の京都成章は、「ピラニアタックル」と呼ばれる激しい守備が武器。しかも今年のチームには、LO山本嶺二郎(3年)、LO岡大翔(ひろと/3年)、LO本橋拓馬(2年)と、3人も190cmオーバーの選手がいる。主将のPR西野拓真(3年)とNo.8村田陣悟(3年)も185cmを超えており、モールに絶対的な強みを持つ。守備と超高校級FWで初の栄冠を狙う。

 一方、奈良の「黒衣軍団」御所実業は、春の選抜大会で準優勝したチーム。県内のライバル天理を予選決勝で22−10と下した実力は本物だ。主将のFB石岡玲英(れい/3年)、CTB(センター)谷中廉(3年)、PR島田彪雅(ひゅうが/3年)を中心に伝統の守備とラックからモールを作る「リモール」は強力だ。全国準優勝は過去5回。「シルバーコレクター」の名を返上し、公立高の希望の星となれるか。

 また、この10年間、高校ラグビー界を引っ張ってきた2校の存在も忘れてはならない。

 まずは、7度目の優勝に挑む九州王者・東福岡。CTB廣瀬雄也(3年)、WTB志氣陸王(しき・りくお/3年)、WTB高本とむ(3年)を中心に、グラウンドを広く動かすラグビーが信条だ。また、PR小西優治(3年)を生かしたモールも強い。春の選抜大会では桐蔭学園に21−67で負けたが、それを糧に成長した姿を見せてくれるだろう。

 そしてもう1枚が、5度の優勝を誇る東海大大阪仰星だ。一昨年度は優勝したが、昨年度は出場できなかった。中高一貫体制で強化し、ラグビーを理詰めで考える湯浅大智監督のもと、主将のSH(スクラフハーフ)松井翔(3年)、SO谷口宜顕(よしあき/3年)、HO安部薫平(3年)たちが昨年の悔しさをバネに挑む。

 ラグビーはFWで相手に劣ると勝つことが難しく、番狂わせの起きにくい競技である。ただ、ノーシード校がシード校を破る「シードバック」という波乱は毎年1、2回ほど起きている。

 国体で大阪府代表を下した石見智翠館(島根)、九州大会ベスト4の長崎北陽台(長崎)、優勝経験のある茗渓学園(茨城)など、今大会は名のある強豪校がシードから外れた。そのなかでも注目したいのは、春の選抜大会でベスト8になった関西学院を下して花園に出場する報徳学園(兵庫)だ。

 FW陣が大きいだけでなく、BKには昨年度2年生ながら高校日本代表にも選ばれた主将のFB山田響(3年)と、身長180cmの大型SH金築達也(3年)が引っ張る。過去ベスト8以上に6度も食い込んだ名門が今大会、ノーシードから旋風を巻き起こすか。

 今大会に参加する51校のうち、初出場は2校。青森山田(青森)はトンガ人留学生の活躍もあり、予選決勝で県大会8連覇中の青森北を下した。また、大分東明(大分)もフィジー人留学生が躍動し、優勝経験もある大分舞鶴の34連覇を阻止して初出場となった。

 また今大会には、文武両道を貫く進学校も出場する。東大進学校としてトップクラスの成績を誇る浦和(埼玉)、昨年度の主将が花園に出場しながら一橋大に現役合格した本郷(東京第2)、山口県屈指の進学校である山口、そして歴史ある名門の名護(沖縄)だ。

「花園から世界へ」

 そのスローガン通り、多くの選手が花園から世界へと羽ばたいていった。

 今回のワールドカップメンバーでは、FLリーチ マイケル(札幌山の手)を筆頭に、PR稲垣啓太(新潟工業)、No.8姫野和樹(中部大春日丘)、SO田村優(國學院栃木)など。リオ五輪に出場したメンバーでは、桑水流裕策(くわずる・ゆうさく/鹿児島工)や合谷和弘(ごうや・かずひろ/流通経済大柏)らが花園で育った。将来、世界の舞台で活躍しそうな原石を探しながら見るのも楽しいだろう。

 花園は「負けたら終わり」のトーナメント方式。高校生ラガーマンの今季最後の戦いは、見ている者の心をきっと打つはずだ。ラグビーワールドカップで「ラグビーロス」になった方にも、ぜひ見てほしい。