箱根駅伝2020 有力校はココだ!  戦力分析 東洋大学編 前回の箱根駅伝で東洋大は、1区の西山和弥(現・3年)の2年連続区間1位で滑り出すと、2区と3区もしっかりとつないで2位。そこから4区の相澤晃(現・4年)が、驚異的な区間新でトッ…

箱根駅伝2020 有力校はココだ!  
戦力分析 東洋大学編

 前回の箱根駅伝で東洋大は、1区の西山和弥(現・3年)の2年連続区間1位で滑り出すと、2区と3区もしっかりとつないで2位。そこから4区の相澤晃(現・4年)が、驚異的な区間新でトップに立つと、後続を突き放し2位の東海大に1分14秒差をつけて、往路優勝を果たした。ただ、復路は8区で東海大に逆転され、9区と10区は区間19位、10位の走りで層の薄さを露呈してしまった。それでも3位は守り切り、11年連続3位以内というしぶとさを見せた。



前回の箱根駅伝で4区を走った相澤晃は、区間新を出してトップでたすきをつないだ

 6年ぶりの総合優勝と12年連続の3位以内を狙う今季は、10月の出雲駅伝こそ2区以降がしっかとり走って3位になったが、11月の全日本大学駅伝は、そううまくはいかなかった。

 6位で2区につなぐと、区間12位の走りで順位を11位まで落としてしまった。それでも、3区を走った相澤が爆走と言える走りで1位まで押し上げた。だが、5区以降がベストとは言えず、落ちた順位を7区定方駿(4年)が区間2位の走りで3位に押し上げながらも、最終8区で再び順位を5位まで落とし、不満の残る結果となった。

 そんな東洋大が今回の箱根駅伝で、前回のように往路優勝を果たすためには、今や学生長距離界のエースと言われるまでに成長した相澤を、どこで使うかがポイントになる。

「2年生の時に2区を走って、3秒差で区間賞を取れなくて悔しい思いをしているので、今回の箱根駅伝では2区を走れればと思います」と言う相澤は、「2区を走るなら前回、(順天堂大学4年生だった)塩尻和也さんが出した日本人最高の1時間06分45秒を上回る、1時間06分30秒を意識している」と話す。

「昨年のように大きなケガもなく練習を順調に積めているので、体調不良などに気をつけて練習をできれば狙える記録ではあると思います。2区に関しては一度経験しているので、どこでペースを上げればいいかなどのシミュレーションはできている。ラスト3.1kmはすごくきついけど、東洋大らしい1秒を削り出すような走りをしたいです」

 一方で、前回区間新を出してトップに立った4区も意識しないわけではない。

「4区にはいいイメージを持っていますが、前回は最後の5kmでタイムを上げることができなかった。そこを上げていけば、前回出した区間記録より、30秒から1分は早くいけると思います」

 1万mこそ、出場予定だった11月下旬の八王子ロングディスタンスはスキップして3年の時の自己記録を更新できていないが、5000mは4月の金栗記念で19年日本人学生1位の13分34秒94の自己新を出し、ハーフマラソンも3月の日本学生ハーフで日本人学生1位の1時間01分45秒を出している。さらに、全日本大学駅伝の3区では10kmを27分47秒の超ハイペースで通過し、それまでの区間記録を1分08秒も更新する快走をした自信は大きい。

 その走力をチームとして最大限に生かすには、区間の選択も重要になる。酒井俊幸監督も相澤を生かす方法について、こう話す。

「(相澤が)2区の場合は、1区で劣勢になると、そこから戻さなければいけなくなってしまうこと、抜く時に他の選手を一緒に連れて行ってしまうことがある。相澤のところでは取り戻すのではなく、貯金を作りたい。その貯金がどこでできるかですね」

 さらに「往路は順位も大事だけど、タイム差を意識しているチームが非常に多いと思います。今年はハーフマラソンでもいいタイムを出している選手は多いですが、持ちタイムの高い選手を多く持っているチームこそ、往路を何とか少ないタイム差でしのいで、復路勝負を描いていると思う。それに対して東洋大としては、序盤から猛攻撃をかけて往路を縦長の集団に持っていくパターンが好ましいかなと思っています」と戦術を話す。

 その場合1区に誰を使い、どんな調子かというのが相澤の起用区間を決める上で必要になる。「全日本の時は練習があまりできていなかったので、スタミナ面でも走り方でも彼本来のパフォーマンスではなかったが、ここにきてしっかりしてきている」と酒井監督が言う、1区のスペシャリストの西山がどのくらいの状態で使えるか。

 前回西山は、2位の中央大には1秒差で、3位の青学大は6秒差、6位東海大には8秒差の中継だった。その位の差だと、全日本よりも距離の長い箱根では最初から飛ばす走りは難しく、追いつかれて、ついてこられる可能性もある。

 しかし2年前は、2位の国学院大に14秒差、5位青学大は25秒差、7位東海大には32秒差という走りをしている。そのくらいの差を作ることができれば、相澤も2区の序盤でライバルをしっかり突き放し、相手に気落ちさせるような状況に持ち込んで大差をつけられる可能性はある。

 西山を1区で、1年の時のようないい状態で使えるかどうか。もし西山の状態が万全ではなかったり、他の選手を使うような状況になれば、相澤は単独で走ってタイム差を稼げるであろう4区での起用が、チームとしては他大学とのタイム差を稼げる可能性が高い。

 ただ、相澤が4区になった場合、前回2区を1時間07分37秒の区間4位で走った山本修二のような準エース格といえる存在がいないことが、今年の東洋大の弱点かもしれない。

 その役割を今季が三大駅伝デビューながらも、出雲は最長区間の6区を区間3位で走り、全日本では17.6kmの7区で、タスキを5位で受けると、区間2位の走りで3位にしてつなげた定方駿(4年)が果たしてくれれば楽になる。

 3区に前回区間4位の走りをした吉川洋次(3年)を使って、2区と同様にしのげれば、5区も前回走った田中龍誠(3年)で、往路優勝とはいかなくても、トップとそこそこのタイム差で終えられるだろう。

 復路では、6区に前回区間3位の58分12秒で走った今西駿介(4年)がいて、酒井監督が「できれば58分切りで行ってほしい」と言うように勝負区間にできれば、7区には先頭を争う位置で入れる可能性もある。

「5区の候補になっている宮下隼人(2年)も、出雲では4区で区間4位、全日本は8区を走っているので、平地区間にも使える。出雲と全日本では4年生の安定感は見せられたが、もう一歩届かなかったのは3年生の安定感がなかったから。復帰してほしい選手もいるので、3年生がしっかりすれば1、2年生も安心して走れるかなと思います」

 今回の東洋大のエントリーを見ると、1年生が6人、2年生が2人、そして柱となる4年生と3年生は4人ずつ。上級生の8人は確実に走ることが要求される。

 相澤も「今季の駅伝は4年生中心で結果を残しているが、3年生は走れなかった選手がいたり、走っても結果が出せなかったりしている。それでも全日本が終わってからは3年生を中心に盛り上がってきている実感がある」と言う。

 さらに1年生について、相澤はこう話す。

「1年生は一番多い6人ということですが、練習でも自分が1年生だったらできないだろうなという練習をこなしていたので、すごく頼もしい存在。走りを見ていると『絶対に(箱根に)出たいんだ』という気持ちも伝わってくる選手が1年生は特に多いので、彼らが出場しても緊張しないようなリードを作って、気持ちよく走らせてあげたいと思う」

 昨年の4年生までは、全日本の優勝も知っている世代だったが、現在の選手たちは三大駅伝の優勝経験はなく無冠だ。学生最後となる今大会、優勝する経験や姿を後輩たちにも見せたいと思っていると相澤は言う。それを実現するための最大のポイントは、3年生4人の復調と頑張りになってきそうだ。