9月3日(土)、4日(日)の2日間、埼玉・大宮第二公園の多目的広場では、車椅子ソフトボールの選手たちが生き生きとしたプレーを繰り広げた。この大会「ライオンズカップ」を主催したのは埼玉西武ライオンズ。昨年、NPBの球団では初めて車椅子ソフトボ…

9月3日(土)、4日(日)の2日間、埼玉・大宮第二公園の多目的広場では、車椅子ソフトボールの選手たちが生き生きとしたプレーを繰り広げた。この大会「ライオンズカップ」を主催したのは埼玉西武ライオンズ。昨年、NPBの球団では初めて車椅子ソフトボールの大会を立ち上げた。

■「障がいを持つ方々も野球・ソフトボールを楽しめるように」

 9月3日(土)、4日(日)の2日間、埼玉・大宮第二公園の多目的広場では、車椅子ソフトボールの選手たちが生き生きとしたプレーを繰り広げた。この大会「ライオンズカップ」を主催したのは埼玉西武ライオンズ。昨年、NPBの球団では初めて車椅子ソフトボールの大会を立ち上げた。

 車椅子ソフトボールは、文字通り、競技用の車椅子に乗って行うソフトボール。アメリカが発祥であり、日本では「障がいを持つ方々も野球・ソフトボールを楽しめるように」というコンセプトで、北海道を拠点に普及活動が始まった。

 車椅子ソフトボールの大きな特徴は以下の通り。

・通常のソフトボールよりも柔らかく大きいボールを使い、グラブは使わない。
・10人制で、9人に加えてフェア地域はどこでも守ることができる「SF(ショートフィルダー)」が存在する。
・投球時には、地面から1.8mから3.6mの空間でアーチを描くように投げる。
・男女の違いなどの様々な条件によって持ち点があり、1チームで参加する選手の合計持ち点が21点を超えてはならない。
など、独自のルールが存在する。

 この車椅子ソフトボールの魅力は、何といっても障がいを持つ方と健常者、老若男女関係なく一緒に楽しめる点だ。実際、ライオンズカップでも女性や小学生がプレーする光景が見られた。「青空の下で白球を追い掛ける、ベースボール型競技の面白さは失われていないですよ」と、日本車椅子ソフトボール協会の山田憲治事務局長は笑顔を見せる。

■ファン感謝デーでも車椅子ソフトボールの体験会を実施

 埼玉西武と車椅子ソフトボールは、どんな経緯で接点を持ったのか。大会を取り仕切る埼玉西武ライオンズ事業部コミュニティーグループの市川徹氏は「2013年、事業部の中に野球振興を目的としたコミュニティーグループが立ち上がりました。そして色々と調べていく中で、車椅子ソフトボールと出会ったのです。ちょうど日本車椅子ソフトボール協会も同じ年に発足し、協会の方と話していく中で『ぜひ支援をお願いしたい』という依頼を受け、球団がスペシャルサポーターになりました」と説明する。

 埼玉西武はその活動の一環として、ファン感謝デーで車椅子ソフトボールの体験会を実施。ファンに向けて車椅子ソフトボールの普及活動を行っている。その流れで、昨年第1回ライオンズカップ車椅子ソフトボール大会が開催された。「元々協会は北海道にあったため、全国大会も北海道で開催されていました。でも全国的に普及していくには、競技者の多い関東で大会を開催しようという話になって、『ウチがやります』と手を上げたのです」と、市川氏は続ける。

 大会開催と同時に、球団は車椅子ソフトボールチーム「埼玉A.S.ライオンズ」を結成。このチームは埼玉西武と同じ帽子、ユニホームを着て試合に出場し、記念すべき第1回大会で優勝した。

 ライオンズカップを開催した影響は大きかった。大会をきっかけに車椅子ソフトボールに興味を持ち、A.S.ライオンズに加入した人も増加した。埼玉西武の選手たちもファン感謝デーでの体験会に参加したりするなど、車椅子ソフトボールの認知度も高まってきている。「選手会として、または選手個人として車椅子ソフトボールを支援するのも時間の問題だと思います」と、市川氏は言う。

■車椅子ソフトボールが目指すのは、パラリンピックの正式種目

 第2回となった今回は、昨年よりも2チーム増え6チームが出場。昨年はTOKYO LEGEND FELLOWSのメンバーとして出場した鷲谷修也氏は、上智ホイールイーグルスを結成して今大会に挑んだ。「健常者、障がい者、女性がいる中で、どう戦略を組んでいくか考えるのは面白いです。例えば、投げにくい体勢だったら投げやすい選手を探して、その選手にパスして送球する。そんな連係プレーは奥深さを感じます。昨年と違うチームで参加して、改めて魅力的なスポーツだと思いますし、少しずつ輪が広がっていければ良いですよね」。車椅子ソフトボールの魅力について、鷲谷氏はこう答える。

 大会は埼玉A.S.ライオンズがTOKYO LEGEND FELLOWSを下し、2連覇を達成した。優勝したA.S.ライオンズは、元横浜、オリックスの古木克明氏がチームの一員として出場。現役時代をほうふつとさせる豪快なバッティングを見せていた。また、本大会が行われる一方で、一般の方を対象にした体験会も開催。競技用の車椅子を操るところから始まり、キャッチボールやミニゲームを行い、参加者は笑顔で車椅子ソフトボールを楽しんでいた。

 4年後の2020年には、東京オリンピック・パラリンピックが開催される。目指すのは車椅子ソフトボールがパラリンピックの正式種目となることだ。市川氏は埼玉西武の果たすべき役割について語る。

「球団として取り組みたいのは、障がい者でも野球・ソフトボールができるきっかけを作っていきたい。2020年の東京オリンピックだけでなく、パラリンピックにも目を向けていることを、プロ野球チームとして強く意識していきたいですね。現在、埼玉西武の他に北海道日本ハムが車椅子ソフトボールの支援活動を行っています。現在は埼玉西武だけですが、将来的にはNPBの12球団がそれぞれ車椅子ソフトボールチームを持って、大会が行われるのが理想です」。

 プロ野球チームが社会に果たすべき役割とは…。埼玉西武が取り組む野球振興活動は、その一翼を担っている。今後の車椅子ソフトボールへの普及・支援活動にこれからも注目していきたい。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

「パ・リーグ インサイト」武山智史●文