箱根駅伝2020 有力校はココだ!  戦力分析 東海大学編 東海大は、優勝候補の最右翼だ。 昨シーズンは出雲駅伝3位、全日本大学駅伝2位、そして箱根駅伝優勝と順に階段を上っていったが、今シーズンは出雲4位、全日本では16年ぶりの優勝を果…

箱根駅伝2020 有力校はココだ!  戦力分析 東海大学編

 東海大は、優勝候補の最右翼だ。

 昨シーズンは出雲駅伝3位、全日本大学駅伝2位、そして箱根駅伝優勝と順に階段を上っていったが、今シーズンは出雲4位、全日本では16年ぶりの優勝を果たすなど、早くもチームは仕上がりつつある。箱根連覇は、とんでもないミスが連続して起こらない限り、かなりの確率で達成されるのではないだろうか。

 その最大の理由は、育成強化が充実し、いろんなタイプの選手が生まれ、選手層がずば抜けて厚くなったからだ。



前回の箱根駅伝でMVPを獲得した東海大・小松陽平

 春のシーズン、トラックの選手は1500mを中心にスピード強化を図り、ロード組は別に合宿を組むなど、2ウェイで強化してきた。その結果、スピードを生かした走りを見せる選手、ロードはもちろん、アップダウンの起伏の大きなところで結果を出す選手など、いろいろなタイプの選手が揃った。

 しかも中途半端に速い選手ではなく、それぞれのカテゴリーで最強の選手づくりをしてきた成果が実を結んだ。質量とも、これだけ揃っている大学は東海大しかないだろう。

 選手層の厚さに加え、前回の箱根優勝メンバーが多数残っており、経験も豊富だ。さらに言えば、現時点で故障者がひとりも出ておらず、夏前は不調だった「黄金世代」と呼ばれる4年生の主力が調子を取り戻してきている。エントリーされた16人それぞれが個性的な走力を持っており、コンディションも非常にいい。

 箱根駅伝は、それぞれの選手が持ち味を発揮して優勝した全日本のバージョンアップになる。

 距離が延び、アップダウンの激しい場所、山上り、山下り、スピード区間と、箱根は区間によってさまざまな特徴があるが、東海大はすべてにおいて適材適所、力のある選手を配置することが可能だ。

 もっとも両角速監督は、コース適性だけでなく、競り合いになりそうな区間にはそうした展開が好きな選手を配置するなど、レース展開や選手の性格も加味して配置を決めるため、いざ勝負になった時に最大限力を発揮する。

 今回の箱根だが、エース区間の2区は名取燎太(3年)、山上りの5区は西田壮志(3年)に決めているようだ。

 前回も2区は湯澤舜(当時4年)、5区に西田、6区に中島怜利(現4年)が早々に決まっていた。重要区間と特殊区間が決まれば、勝負をどこに置くかで区間配置が変わってくる。前回は往路で3位以内、復路で優勝というレースプランを立てて区間配置を行ない完璧にハマったが、今回もプランは同じだ。

 往路は、国学院大や東京国際大をはじめ、実力のある選手を積極的に起用してくる大学が多く、激しい消耗戦になる。東海大はあえてそこで勝負せず、”守りの駅伝”で往路をしのぎ、復路で”攻めの駅伝”に転じる。

 往路が終わった時点でトップと1分30秒ぐらいまでなら、復路での逆転が可能だろう。つまり、強力な戦力を復路の全区間に投入できるだけの選手層を持っているということだ。

 ただ、唯一計算できないのが6区だ。過去3年、山下りで区間賞争いをしてきた中島が不在のため、誰を起用しても初めての経験となる。前回、中島のタイムは58分06秒だった。6区を58分台で走れる選手が出てくれば、7区以降で逆転するレース展開がイメージできる。

 逆に、6区で大幅に遅れるようだと、その後の逆転劇が難しくなる可能性が出てくる。誰を6区に起用するのか、東海大にとっては大きなポイントになる。

 そしてもうひとつ、カギを握る区間が4区だ。常々、両角監督は4区を重要区間に挙げている。従来、この4区はつなぎ区間で新戦力が試される機会が多かったが、前回は東洋大の相澤晃(現4年)が区間新を叩き出す走りでトップを奪い、往路優勝へとつなげた。

 東海大も両角監督が絶大な信頼を寄せる”駅伝男”の館澤亨次(現4年)が4区を走り、ライバルの青学大を抜いてレースを優位に進めた。

 3区まではそれほど差がつかないことが予想されるので、4区でどのくらい差を広げ、あるいは詰めて山上りの5区に襷を渡せるかが重要になる。東海大は前回同様、館澤が入るのか、それとも今シーズン最も安定している塩澤稀夕(3年)が入るのか、それとも秘密兵器となる人物を投入してくるのか。4区の区間配置は東海大にとって大きな意味を持つので、注目したい。

 エントリーされた16人のなかで注目しているのは、小松陽平(4年)と郡司陽大(4年)だ。まるで”太陽”のように明るいふたりは、ほかの4年生とノリが違う。だが、彼らがムードメーカーとなって、走りでもチームに勢いを与えており、東海大にとってなくてはならない存在になっている。

 ふたりとも「絶好調宣言」するほど調子がよく、おそらく小松は勝負区間で起用されるだろうし、郡司も復路の9区か10区あたりでレースを締める役割を担うことになりそうだ。

 今回の箱根駅伝はワクワク感しかない。東海大には、東洋大の相澤や、国学院大の土方英和(4年)、浦野雄平(4年)、東京国際大の伊藤達彦(4年)といった”大エース”“大砲”と呼ばれるような選手はいない。それでも、選手個々の質が高く、普段どおりの走りを見せられれば、トップで大手町に飛び込んでくるに違いない。