12月15日、埼玉スタジアムで高円宮杯U-18サッカープレミアリーグ2019ファイナル(以下、高円宮杯ファイナル)が行なわれ、プレミアリーグEAST王者の青森山田が、同WEST王者の名古屋グランパスU-18を3-2で下し、3年ぶり2度目の栄冠を手にした。

 3年前の2016年大会は、スコアレスのまま延長戦でも勝負がつかず、PK戦決着での優勝。つまり、公式記録上の試合結果は引き分けだったのだから、青森山田にとっては初めて立つ、正真正銘の頂点と言っていいだろう。



高円宮杯U-18プレミアリーグ2019ファイナルを制した青森山田

 決戦を前に、下馬評が高かったのは、WEST王者のほうだった。

 名古屋は今季、日本クラブユース選手権、Jユースカップと、すでにふたつの全国タイトルを獲得。「シーズン当初、選手たち自身が”三冠”を目標に決め、ここまで高めてきた」(名古屋U-18・古賀聡監督)というチームは、目標達成まで、残すは高円宮杯ファイナルだけとなっていた。

 名古屋が、プレミアリーグWESTの全18試合で奪ったゴール数は52。1試合平均でほぼ3点を叩き出す攻撃力は抜群で、昨季の高校選手権王者であろうとも、名古屋の”三冠”を阻止するのは難しいかに思われた。

 しかし、青森山田は強かった。というより、したたかだった、と言ったほうがいいかもしれない。

「試合前の準備として、名古屋の攻撃力をリスペクトしながら臨んだのがポイントだった」

 チームを率いる黒田剛監督が、会心の勝利をそう振り返ったように、青森山田は、中盤ではボール保持者へ力強く体を寄せることで、名古屋のパスワークに制限をかけ、ゴール前までボールを運ばれたとしても、最後は確実にシュートコースを消す守備で、試合を自らのペースに引き込んだ。

 そして、前半12分に、青森山田の”お家芸”であるロングスローから首尾よく先制点を奪うと、27分には、右サイドで奪ったボールを左サイドの広いスペースへ展開し、クロスから追加点。名古屋の古賀監督は「警戒していた相手の最短最速の攻撃(カウンターやリスタート)に後手を踏み、準備が間に合わない状況が数多く生まれ、そこで失点した」と嘆いたが、青森山田にしてみれば、まさにしてやったりの試合展開だった。

 その後は、本来のリズムで取り戻した名古屋が攻勢に試合を進め、前半のうちに1点を返すと、後半の14分には連続攻撃から左サイドを破り、一度は同点に追いついた。

 ユース年代屈指の攻撃力はさすが。やはり、勝つのは名古屋なのか。会場の埼玉スタジアムに、そんな雰囲気が漂い始めた矢先だった。

 2点をリードされながら、ようやく追いついた名古屋の選手たちに、少なからずホッと安堵する気持ちが生まれたとしても不思議ではない。よし、これでイケると、一息ついた、その瞬間を青森山田は見逃さなかった。黒田監督が語る。

「後半、少し間延びしたところで裏を突かれて失点したが、2-2はあると想定していた。ハーフタイムには、追いつかれても雰囲気に飲まれないよう、自分たちのサッカーをやろうと話した」

 青森山田の決勝点が生まれたのは、後半17分。つまり、名古屋の同点ゴールのわずか3分後のことだった。

 青森山田のMF古宿理久(ふるやど・りく)が左サイドの裏を狙って、浮き球のパスを送るも、名古屋DFが難なくカット。しかし、名古屋の中盤の帰陣が遅れる一方で、このセカンドボールにいち早く反応していたのが、青森山田のMF松木玖生(まつき・くりゅう)だった。

 こぼれ球を拾った松木は、そのままドリブルで中央へ入っていくと、右足でのシュートをちらつかせながら、鋭い切り返しから左足をひと振り。ボールはDFの股間をくぐり、GKの右脇をすり抜け、ゴール右隅に転がり込んだ。

 結局、試合はこのまま、青森山田の1点リードで終了。名古屋は終盤、猛攻を仕掛けるも、そこには少なからず焦りがまじり、いたずらに中央の狭いエリアへ突っ込んでいくばかりで、なかなか決定機には至らなかった。殊勲の決勝ゴールを決めた1年生、松木が笑顔で語る。

「(青森山田は)全員がハードワークして、『絶対に勝てる!』という気持ちが強いチームです」

 試合巧者の青森山田は、ここが勝負どころというポイントをしっかり押さえ、地力に勝る名古屋を出し抜いた。そんな印象の試合だった。

 ユース年代の強化・育成を目的に、プレミアリーグが創設されたのは2011年のこと。以来、高校、クラブユースを問わず、トップ20のチームを東西に分け、それぞれ10チームずつがホームアンドアウェーによる2回戦総当たりのリーグ戦が行なわれている。東西の優勝チームがユース年代日本一の座をかけ、一発勝負で対戦するのが、この高円宮杯ファイナルだ。

 高円宮杯ファイナル(2017年以前の名称はチャンピオンシップ)が現行方式で行なわれるようになり、今回で9回目を数えるが、高校のチームが優勝するのは、2013年の流通経済大柏、2016年の青森山田に続き、3度目。Jクラブ優勢の大会を制しただけに、黒田監督の感慨もひとしおだ。

「高校サッカーの代表として、恥ずかしくないプレーを見せたかった。優勝できたのはよかったし、肩の荷が下りた」

 とはいえ、これが最後の公式戦となるクラブユースの名古屋とは違い、青森山田にはチーム最大の目標が、およそ2週間後に迫っている。

 言うまでもなく、全国高校サッカー選手権大会である。

 青森山田は昨季の選手権で、2年ぶり2度目の優勝を果たしている。ただでさえ注目を集めるディフェンディングチャンピオンだが、高円宮杯ファイナルも制したことで、そこでの注目度はより一層高いものになるだろう。

 それでも、黒田監督が「(昨季の選手権優勝メンバーから)武田ひとりしかレギュラーが残らなかったが、そのことが逆に結束力を高め、彼らの成長につながった」と目を細めるチームは、名古屋戦がそうだったように、決して浮つくことなく、しっかりと地に足つけた戦いができている。

 1年前の選手権制覇を知る、キャプテンのMF武田英寿(たけだ・ひでとし)は、「試合になれば、(前回大会優勝の)プレッシャーは感じない。自分たちがやるべきことをやればいい」と、あくまでも自然体を強調。自身は、すでに浦和レッズ入りが内定していることでも注目されるはずだが、「(プロ入りが決まったからといって)自分の意識が変わることはない。泥臭く走ることもやり続けたい」と語る。

 3年前に高円宮杯を制した当時は、GK廣末陸(レノファ山口)、MF高橋壱晟(モンテディオ山形)ら、その後Jリーグ入りしたタレントを擁し、選手権でも悲願の初優勝を成し遂げた。青森山田にとって、高円宮杯優勝は、いわば”吉兆”である。武田が続ける。

「廣末さんの代も、ここ(高円宮杯)を勝って勢いに乗ったと聞いている。僕らも、勢いをもって選手権に向かいたい」

 昨季の選手権王者は、ユース年代日本一の勲章を胸に、同校初の選手権連覇に挑む。