実力が拮抗したチーム同士の対戦を増やす新リーグ戦方式を採用したXリーグは、開幕戦から期待に違わぬ熱戦が繰り広げられた。 9月9日からの第2節は、開幕戦以上に『負けられない』カードが組まれている。   富士通×アサヒビールの『川崎…

 

実力が拮抗したチーム同士の対戦を増やす新リーグ戦方式を採用したXリーグは、開幕戦から期待に違わぬ熱戦が繰り広げられた。

9月9日からの第2節は、開幕戦以上に『負けられない』カードが組まれている。

 

富士通×アサヒビールの『川崎ダービー』

イーストディビジョンSuper9の注目カードは富士通フロンティアーズ(昨総合1位)とアサヒビールシルバースター(昨総合7位)の全勝対決(9月11日@富士通スタジアム川崎・14時キックオフ)だ。

共に川崎市を本拠に活動する両雄だが、Xリーグ体制下(1996年以降)では秋季に13回対戦し、富士通が2007年以降の6連勝を含む7勝5敗1分と勝ち越している。

実業団が大多数を占めていた1980〜90年代からクラブチームとして活動しているアサヒビールは、4度の日本社会人選手権優勝、3度の日本選手権ライスボウル制覇(92、93、99年度)を遂げている名門。創設以来、『仕事とフットボールの両立』を不文律とし、引退後にビジネス界で活躍するOBを多数輩出している。元・あきんどスシローCOOで、現在は大型スポーツ用品店を展開する株式会社ゼビオの加藤智治代表取締役社長(1997〜2006年在籍)、仮想ネットワーク事業を展開し、米国経済誌のフォーブスの『将来性のあるベンチャー企業100社』に選出されたミドクラジャパン株式会社の加藤隆哉・共同創業者兼取締役会長(1991〜1996年在籍)、ニューヨークを拠点とする投資顧問会社ホリコキャピタルマネジメントLLC代表で、経済番組のアナリストとしてもお馴染みの堀古英司氏(1989〜1991年在籍)、独立系ビルメンテナンス事業を展開する東証2部上場の株式会社ビケンテクノ・梶山龍誠代表取締役社長(1995〜2009年在籍)らは、いずれも現役時代に中心選手として活躍したOBだ。

近年はディビジョン3位に甘んじるシーズンが続いているが、選手、スタッフ共に若返りを図るなど、『フットボール界の輝ける星になる』、『仕事とフットボールの両立』、という二つの哲学を現在のXリーグで実現するための体制作りに取り組んできた。

昨年はQBメイソン・ミルズ(サンディエゴ大)の加入で、課題だった得点力が大幅に改善。初戦の警視庁イーグルス戦(◯34対0/8月27日)では、前半を指揮して4回の攻撃機会すべてをTDにつなげた。パスについても13投9回成功140ヤード2TDと好調。昨年レシーブリーダーとなったWRローマン・ウィルソン(プリンストン大)が、今季選手登録していないことが不安材料だったが、2015年日本代表の林雄太(日本大)、2007年日本代表の戸倉和哉(法政大)、ベテランTE橋詰泰裕(京都大)らを軸にバランスアップが図られた印象だ。

8月28日の初戦で春季パールボウル王者IBMビッグブルーを29対24で下した富士通は、QBコービー・キャメロン(ルイジアナ工科大)が2インターセプトを喫し、大雨の影響からかレシーバー陣のドロップも目立つなど、パスに課題を残した。一方で、昨シーズン終盤に足を骨折したRBジーノ・ゴードン(ハーバード大)が、17回走94ヤードと完全復活をアピール。昨年の世界選手権で負傷した日本代表の神山幸祐(日本大)が好パントリターンを見せるなど、負傷で戦列を離れていた主力の復調が目を引いた。

シルバースターにとっては、名門復活への試金石となる一戦。富士通にとっては2年ぶりの日本一奪取に絶対に落とせない戦いになる。

アサヒビールシルバースターQB1メイソン・ミルズ(左)、富士通RB29ジーノ・ゴードン(右)

 

LIXIL守備フロント×ノジマ相模原OLの攻防

セントラルディビジョンSuper9の注目は、ノジマ相模原ライズ(昨総合3位)と、LIXILディアーズ(昨総合5位)の一戦だ。

8月28日のオービックシーガルズ戦に13対14と惜敗したノジマ相模原ライズは、もう一戦も落とせない状況。開幕前の話題をさらった、QBデビン・ガードナーとWRジェレミー・ギャロンの『ミシガン大ホットライン』は、ガードナーがパス37投21回成功290ヤード1TD1被INT、ギャロンが10捕球87ヤード1TDと存在感を発揮した。一方で、オービック守備の猛烈なプレッシャーにさらされてスタミナを消耗。コンディショニング不足を露呈した。

一方、9月3日に今季Xリーグ昇格のブルザイズ東京を73対7と一蹴したLIXILディアーズは、選手たちの日焼けした肌と、春よりも明らかに引き締まった体躯が印象的だった。

Super9所属チームの中で、唯一、米国人選手を擁していないLIXILは、パールボウル進出で他チームよりも長い春季シーズンを過ごした。しかも、例年6月末から7月に設けているオフを返上。継続して秋季シーズンに向けた練習を積んできた。過去2年間、課題だったOL、DBの選手層も即戦力級新人の補強に成功。人員の充実度は、LIXILディアーズとなった3年間で今季がベストといってもいい状態だ。攻撃はQB加藤翔平(関学大)、WR前田直輝(立命館大)、永川勝也(関西大)、宮本康弘(法政大)の2015年日本代表カルテットに加え、春季はメンテナンスに専念した日本代表OL荒井航平(日本大)も完全復活。守備は様々なポジションから圧倒的なスピードを生かしてプレッシャーをかける平澤徹(関学大)を筆頭に、DE、DTを兼任し、例年になくシャープに動けている主将DL鈴木修平(日本大)、LB並みの機動力を持つDE重近弘幸(関西大)、タックル力に定評のあるLB天谷謙介(日本大)ら、主力選手のコンディションは良好。ノジマ相模原QBガードナーにプレッシャーをかけるタレントは揃っている。

ノジマ相模原はガードナーをLIXIL守備フロントのプレッシャーからいかに守れるか。オービック戦で劣勢を強いられたOL陣の奮起が鍵になりそうだ。

LIXILディアーズWR11前田直輝(左)、ノジマ相模原ライズWR13ジェレミー・ギャロン

 

パナソニック・佐伯(眞)×エレコム神戸・近藤

フィールドポジション争いのキーパーソン

ウエストディビジョンSuper9は、王者パナソニックインパルスに昨総合9位のエレコム神戸ファイニーズが挑む。

エレコム神戸はアイオワ大の2015年度のエースRBジョーダン・カンザリを筆頭に、これまで課題となっていたRB、OL、DBを新米国人選手で補った。初戦のサイドワインダーズ戦では、カンザリが5回走64ヤード2TD、DBショーン・ドレイパー(アイオワ大)がパントリターンTDを挙げる活躍を演じた。

新米国人選手の補強に目を奪われがちだが、パナソニック戦の切り札となりそうなのは、新人パンター近藤諒(法政大)だ。

大学時代は法政大の攻撃力が高かったため、あまり目立ってはいなかったが、飛距離、コントロール共に国内トップクラスと言っても過言ではない実力者。大学4年時には19回のパントの内、9回を相手陣20ヤード以内に蹴りこんだ。「近藤の加入は本当に大きな要素」と、エレコム神戸・狩野良太ヘッドコーチも近藤のパントに大きな期待を寄せている。

パナソニックには、常に相手に自陣深くからの攻撃を強いることができる日本代表パンター佐伯眞太郎(立命館大)がいる。

佐伯対近藤のパントによるフィールドポジション争いは、勝敗を分ける重要なポイントになりそうだ。

■第2節注目カード

9月10日(土)      ノジマ相模原ライズ×LIXILディアーズ            富士通スタジアム川崎

9月10日(土)      パナソニックインパルス×エレコム神戸ファイニーズ            EXPO FLASH FIELD

9月11日(日)     富士通フロンティアーズ×アサヒビールシルバースター        富士通スタジアム川崎