アメリカ・ニューヨークで開催されている 「全米オープン」(8月29日~9月11日/ハードコート)の男子シングルス3回戦。 第14シードのニック・キリオス(オーストラリア)は、第1セットの終盤に早くも右腰を曲げ伸ばしし、故障のサインを見せ…
アメリカ・ニューヨークで開催されている 「全米オープン」(8月29日~9月11日/ハードコート)の男子シングルス3回戦。
第14シードのニック・キリオス(オーストラリア)は、第1セットの終盤に早くも右腰を曲げ伸ばしし、故障のサインを見せていた。それから、ある激しいプレーのあと、彼はボールを追って体をスライドさせ、サイドライン上で膝をつくことになった。 その少しあと、キリオスはふたたび腰をストレッチしようとし、それからメディカル・タイムアウトをとってトレーナーの治療を受けた。プレーを再開したものの、彼の動きが悪くなっていることは明らかだった。そして最終的に、6-4 4-6 1-6となったところで、キリオスはもはや続行は不可能と判断。世界ランク63位のイリヤ・マーチェンコ(ウクライナ)に、初のグランドスラム4回戦進出を許したのだった。 「1、2回戦から腰の痛みに煩わされていたが、なんとか切り抜けてきた」と試合後、キリオスは言った。「いずれにせよ、時間の問題だったのだろう」。
キリオスは今季のより早い時期にも、腰の故障に対処しなければならなかった。 「この手の問題をなくすため、ジムワークやケアなどをより入念に、より時間をとって行わねばならないだろう」と、コート上の気分のムラと天賦の才で知られる、21歳のキリオスは言った。 マーチェンコは、4回戦進出という殊勲について興奮を隠そうとしなかった。彼は試合後のオンコートインタビューで、アーサー・アッシュ・スタジアムの観客に向かって「4回戦進出だ! オー・マイ・ゴッド!」と叫んだ。 彼は次のラウンドで、第3シードでグランドスラム大会優勝2回のスタン・ワウリンカ(スイス)と対戦する。 「彼(ワウリンカ)とは今季すでに一度プレーしている。彼は僕を完全に圧倒したよ。すべてにおいて僕を凌駕して」とマーチェンコは言った。彼はインディアンウェルズ(3月)のハードコートで、ワウリンカに3-6 2-6で敗れている。 キリオスは、必ずしも彼らしくない、落ち着いたベースラインプレーをしていたにも関わらず、「感触のよくない」ワイドなフォアハンドを数本打ち、9ゲームが過ぎたあたりで、痛みのサインを見せ始めた。
第2セット2-2のときに、キリオスはマーチェンコが放ったシャープなアングルショットを拾うため、前方にダッシュし、ぎりぎりで体を伸ばして辛うじてラケットでボールをすくうと、それをネットの向こうに沈ませ、バックスピンのかかったほとんど止まるようなボールでそのポイントをつかんだ。しかし、走った勢いで、キリオスはほとんど主審の椅子の近くまで滑り、彼は左膝をコートで擦って血まで滲ませながら、コートに膝と手を突くことになった。 第2セットでブレークされ、4-5とリードされたあと、キリオスはまた腰を曲げ伸ばしし、ストレッチするような動きを見せた。 「こういう問題を抱えてプレーするのは、精神的にきつい」と彼は後にこぼしている。 そのセットが終わったとき、キリオスはトレーナーとともにロッカールームに向かったが、治療後も状態は改善しなかった。彼はポイント間にほとんど動かず、トレーナーを呼び、ののしり声を挙げ、一度など、まるでバスにはねられたかのようにうめき、そういったことに第3セットの大部分を費やした。 「ただイラついているのか、故障の痛みが本当に彼を苦しめているのか、決してわからないから、僕はただ、集中し続けるよう努めていた」とマーチェンコ。 第3セットで1-4となったとき、キリオスはコートサイドの自分の椅子に恐る恐る慎重な動作で座り、トレーナーと話している間、タオルで頭を覆っていたのだが、そのあとは涙をにじませているように見えた。そしてその数ゲーム後、彼は棄権を決めた。 「僕は今、少しショックを受けている」----白いドクロと星のあしらわれた赤いシャツを身につけたマーチェンコは、試合直後にこう言った。 「ニックのために、本当に残念に思う。こんな形で勝ちたくはなかった……でも、勝利は勝利だ」(C)AP