グランプリファイナルで優勝を目指す羽生結弦

 2019年のグランプリ(GP)シリーズ全6戦で、それぞれ2勝したのは、羽生結弦とネイサン・チェン(アメリカ)だった。そのふたりに続く、合計ポイント3位のアレクサンダー・サマリン(ロシア)は、2試合の合計得点でチェンより66.7点低い529.55点と、上位ふたりの実力が飛び抜けている。

 NHK杯終了後、羽生が「ファイナルは、ネイサン選手との戦いとしか思っていないです。やっぱり勝ちたい」と話していたように、羽生とチェンの一騎打ちの様相を呈している。

 今シーズンの安定感では、羽生に軍配が上がる。とくにショートプログラム(SP)は、スケートカナダとNHK杯の2戦とも、「自分の中ではまだ完璧ではない」と不満を持つ滑りながらも、109.60点、109.34点と高いレベルで安定している。

 スケートカナダのあとには「今季のルールではフリーで220点というのはちょっと難しいと思うので、とりあえずショートは110点、フリーは215点を目指してやっていきたい」と話していたが、SPは完全に目標点のクリアが見えている。また、2試合とも後半の4回転トーループ+3回転トーループのGOE(出来ばえ点)加点がやや少なく、スピンやステップでも上積みできる余地がある。

 一方フリーも、スケートカナダでは4回転ループの着氷が若干乱れてGOEで0.15点減点されながらも、212.99点を出せたことに羽生は自信を深めている。さらに、NHK杯には4回転ループと4回転サルコウをセットでしっかり決めることを課題にして臨み、4回転ループはGOE加点1.65点の出来にして、4回転サルコウは3.19点の加点をもらった。羽生自身はまだ納得できない部分がある着氷ながら、安堵できる結果を出したと言える。

 また、フリー後半の4回転トーループがパンクして2回転になるなど、トーループに関してはSPで不本意なジャンプになったが、これについては「原因はわかっている」と、しっかり分析できているだけに修正は可能だ。

 昨季、ループやサルコウのエッジ系のジャンプでズレが出ていたことに関しても、NHK杯の練習や本番直前に入念に氷の状態をチェックしていた羽生は、こう話した。

「最初に滑った時にすごく感覚がよくて、『この氷大好きだな』と思ったんです。だからこそ、その氷が試合が進むにつれ、お客さんが入った状態などでどう変化し、どういう感覚になるかというのを確かめておきたいというのがありました。自分の好きな氷がどう変化していくかは、ひとつのベースになるかもしれないと思ったので」

 リンクコンディションへの対応策として、ひとつのヒントを見つけたとも言える。さらに4回転ルッツも「試合に入れられる状態になっている」と言い、氷の状況を見て選択できるというのも心強い。

 課題にしていた最初の4回転ループと4回転サルコウをしっかり決め、ケガなくGPシリーズ2戦を終えられたことで、「壁をひとつ越えられた」と話していた羽生。NHK杯は得点こそ305.05点にとどまったが、スッキリした気持ちでファイナルへ向かえる。

 そんな羽生に対して、チェンはスケートアメリカ299.09点、フランス杯297.16点とまだ全開とは言えないが、シーズンインがフリーだけで争われるジャパンオープンで、GPシリーズ初戦が第1戦のスケートアメリカだったことを考慮すると、コンディションが上がりきっていない状態での結果だったと考えることができる。

 ここまでの2戦で、チェンはいろいろと試している状態なのだろう。なかでも4回転ルッツの完成度はまだまだで、スケートアメリカのSPでは、着氷はしたもののGOE加点は0.82点。フリーの冒頭のジャンプは、4回転ではなく3回転+3回転にしていた。さらに、フランス杯ではフリー冒頭に4回転ルッツ+3回転トーループを予定していたが、着氷を乱して単発になり、そのあとに予定していた3回転ルッツに2回転トーループを付けてリカバーしている。

 また、フランス杯のSPでは、冒頭に4回転トーループ+3回転トーループを、スケートアメリカのフリーでGOE加点4.40点と調子のよかった4回転フリップを基礎点が上がる後半に持ってきていた。ただ、トリプルアクセルが2.29点減点される出来になり、フリップも加点を伸ばせなかった。

 フリーについては、スケートアメリカでは後半の4回転トーループが2回転になるミスだけだったが、フランス杯では冒頭の4回転ルッツに続き、後半の4回転サルコウと単発の4回転トーループで着氷を乱して減点されている。そのほか、4回転トーループ+1Eu+3回転フリップを前半に入れてフランス杯でしっかり成功させたように、新しいことにもチャレンジしている。

 チェンのジャンプ構成は、SPではルッツかフリップの調子のいい方の4回転を入れ、フリーでは、昨季の世界選手権の4回転4本、トリプルアクセル1本の構成からさらに進化させた、4種類5本の4回転とトリプルアクセル2本の構成にする可能性もある。それをしっかり仕上げてくれば、昨季の世界選手権で出した323.42点の世界最高得点も上回ってくる計算になる。

 羽生はそうした展開もしっかり予想しているだけに、今回のファイナルではノーミスを目指すふたりの異次元の戦いが繰り広げられそうだ。