王者陥落を象徴するような、屈辱的な敗戦だった。 開始早々に右サイドを突破されあっさり先制点を許すと、後半立ち上がりにも…

 王者陥落を象徴するような、屈辱的な敗戦だった。

 開始早々に右サイドを突破されあっさり先制点を許すと、後半立ち上がりにも再び右サイドから失点。3失点目は左サイドを攻略され、その後に1点を返したものの、ミスから4点目を奪われて万事休した。



今季ワーストの4失点を喫した川崎フロンターレ

 15年ぶりの優勝を狙う横浜F・マリノスをホームに迎えた一戦。2連覇中の王者・川崎フロンターレは、終始相手の勢いに飲み込まれたまま、1−4と大敗を喫した。4失点は今季ワースト。リズムに乗り切れないまま優勝を逃した、今季の戦いを象徴するような戦いぶりだった。

 すでにこの試合の前に、3連覇の可能性は潰えていた。とはいえ、川崎にモチベーションがなかったわけではない。3位以内を確保し、来季のACL出場権を確保する目的があったからだ。あるいは、目の前で横浜FMの優勝を見せつけられたくない思いもあっただろう。王者のプライドをかけて、この一戦に臨んだはずだ。

 ところが、エンジンが温まる前に横浜FMの勢いに圧倒される。エリキ、仲川輝人、マテウスの3トップに、マルコス・ジュニオールをトップ下に配した横浜FMの前線カルテットのスピード溢れる攻撃に、序盤の川崎は面食らっているように見えた。

 8分にはマテウスの突破に守田英正がついていけず、そこからのクロスを仲川に押し込まれて早々にビハインドを負ってしまう。川崎がボールを持っても、このカルテットは厄介だった。トップスピードでハイプレスを仕掛けてくるため、落ち着いてボールを回せない。持ち味であるショートパスでの遅攻を駆使できず、相手の速いスタイルに合わせてしまうような展開に陥った。

 それでも徐々に落ち着きを取り戻し、ボールを保持する時間が増加したが、今度は横浜FMのハイラインの前にオフサイドを連発し、決定機まではなかなか作れなかった。

 横浜FMの変則的な位置取りにも苦しんだ。両ウイングがサイドいっぱい張ることで生み出された中のスペースを、サイドバックに使われてフリーな状況を与えてしまう。2失点目は中に入ってきた右サイドバックの松原健の動きを捕まえきれず、やすやすとスルーパスを通させてしまったことが原因だった。

 相手のカウンターも脅威だっただろう。点を獲りに前がかりになった裏を取られ、次々に速攻を浴びた。衰え知らずのスピードと運動量で、まるで矢のように飛び出していく横浜FMの攻撃を封じる術(すべ)はなく、失点を重ねていく。途中出場のレアンドロ・ダミアンが打点の高いヘッドで一矢を報いたものの、勝機をまるで見出せないまま、タイムアップの笛を聞いた。

「強かったと思います。前線のスピードだったり、チームとしてやることもはっきりしている。今年やった相手のなかでは一番強かったと思います」

 小林悠が肩を落としたように、完敗を認めざるを得ない一戦となった。

 別会場のFC東京が引き分けたことで、目の前で胴上げを見ずに済んだことは唯一の救いだったが、勝ち点を積み上げられなかった川崎は4位から浮上できず。3位以内に与えられるACL出場権の獲得が厳しくなった。

 振り返れば今季の川崎は、開幕から苦しんだ。

 レアンドロ・ダミアンらを獲得し、優勝候補の筆頭に挙げられながらも、開幕4試合勝ちなしと、スタートダッシュに失敗。第5節から15試合負けなしと息を吹き返したかに見えたが、夏場に6戦未勝利と再び苦境に陥ってしまう。終盤に巻き返し、サンフレッチェ広島、鹿島アントラーズと上位対決を制して優勝争いに踏みとどまったが、勢いを加速させる2強との差を埋めることはできなかった。

 敗戦の数はリーグ最少の6。にもかかわらず、今季一度も首位に立つことができなかったのは、リーグ最多の12を数える引き分けの多さが原因だろう。とりわけシーズン前半は、終了間際の失点で勝点を取りこぼす試合が目についた。

 もちろん、2連覇中の王者に対する警戒が強まったのは確かだろう。最多得点・最少失点と”完全優勝”を成し遂げた昨季のような絶対的な強さを示す試合は数えるほどだった。

「守備が踏ん張れなかった試合もあったし、前が点を獲り切れない印象の試合もあった」

 谷口彰悟は今季の戦いをそう振り返った。

「やっぱりチームがうまくいくには、攻守両面においてリズムがよくないと勝ち切れない。今季で言えば勝ちパターンというか、すっきりしたゲームがなかなかできなかった。自分たちにも原因があるだろうし、相手の対策もあった。いろんな要因があるなかで、なかなかすっきりした試合ができなかったですね」

 それは「違和感」という言葉で表現できるのかもしれない。あるいは、「歯車がうまくかみ合わなかった」ということだろうか。

 いずれにせよ、結果だけでなく、内容でも納得できる試合が少なかったのは確かだろう。

 シーズン終盤は、相手に押し込まれる試合も多かった。内容が悪いなかでも結果を手にできるのは強者の条件のひとつだが、終始ボールを支配し、圧倒的な内容で勝利を手にする川崎らしさが消えていたのも事実だった。

 ルヴァンカップを制して面目を保ったものの、アジア制覇とリーグ3連覇という最大のターゲットには手がかすりもしなかった。風間八宏監督から鬼木達監督へとつながり、近年のJリーグを席巻した川崎だったが、その勢いに陰りが見えている。

 11月30日、等々力に吹いた寒風は、ひとつの時代の終焉を予感させた。