ついにセンターコートに降り立った早大は、全日本大学選手権(全日本インカレ)準決勝に挑んだ。相手は、準々決勝で強豪明大にフルセットの末勝利し勢いに乗る中大。日本一へ両チームとも負けられない一戦となった。しかし、早大は序盤から流れをつかむこと…

 ついにセンターコートに降り立った早大は、全日本大学選手権(全日本インカレ)準決勝に挑んだ。相手は、準々決勝で強豪明大にフルセットの末勝利し勢いに乗る中大。日本一へ両チームとも負けられない一戦となった。しかし、早大は序盤から流れをつかむことができない。それでも、その中で高いチーム力を見せつけ第1セット、第2セットを連取する。第3セットこそ落としたものの、終盤になるに連れて徐々に早大らしいバレーボールを展開していき、セットカウント3-1(25-23、25-20、22-25、25-18)で勝利。3連覇を懸けた決勝に駒を進めた。

 えんじの応援団がスタンドから声援を送る中始まった第1セット。開始早々、この試合からスタメンに復帰した武藤鉄也副将(スポ4=東京・東亜学園)のクイックを皮切りに7連続得点。完全に主導権を握ったかと思われた。しかし徐々に、両サイドをうまく使う中大の攻撃にのまれていく。ブレイクを重ねられると、12-7から5連続得点を奪われ、セット中盤に同点に追いつかれてしまう。早大陣営はすぐさまタイムアウトを要求し相手の流れを断ち切ると、その後は宮浦健人(スポ3=熊本・鎮西)と大塚達宣(スポ1=京都・洛南)の両エースが得点を重ね、徐々に点差を引き離していった。しかし、再び中大に流れが傾くと17-15から4連続失点。ついに逆転を許した。それでも、宮浦が長いラリーからスパイクポイントを奪い再度逆転すると、またも宮浦のブロックポイントで点差を引き離した。最後は武藤のクイックで得点を奪い、第1セットを先取した。続く第2セットも一進一退の試合展開となる。両チームともブレイクは奪うがすぐにブレイクを奪い返され、なかなか点差が広がらない。その中で早大は流れこそつかめずにいたが、決して逆転は許さなかった。すると、セット終盤にビックプレーが。20-18から宮浦が強烈なスパイクで得点すると、直後のサーブで2連続サービスエース。これでセットを決定付けると、最後は村山豪(スポ3=東京・駿台学園)のクイックで25点目を奪った。


今大会も絶好調な大塚

 試合を決めたい第3セットであったが、終始中大ペースで試合が進む。堀江友裕主将(スポ4=和歌山・開智)が「ブレイクしてもサイドアウトが切れずに点差を詰められなかった」とこのセットを振り返ったように、3-2から4連続得点を奪われて献上したリードを、なかなか縮めることができない。それに反して、中大の勢いは増していく。富田将馬(4年)が得点を量産し、早大の追随を許さない。セット終盤に村山と中村駿介(スポ3=大阪・大塚)の2枚ブロックで22-22と同点に追いつくシーンもあったが、すぐに3連続得点を奪われこのセットを落とした。流れを変えたい第4セット。大塚のクロススパイクで始まると、本日4本目となる宮浦のサービスエースが決まり、序盤からブレイクを重ねていく。8-7から大塚のサービスエースを含む4連続得点でさらにリードを広げると、吉田悠眞(スポ2=京都・洛南)が随所でスパイクポイントを決めきっちりとサイドアウトを取っていく。本来の実力を発揮し始めた早大は、セット終盤に村本涼平(法4=京都・洛南)や秋間直人(スポ1=愛知・桜台)を立て続けに投入。するとその秋間が起用に応え、ブロックポイントで25点目を奪い、この試合を物にした。


復活を遂げた武藤副将(右)

 堀江が試合後「みんなが納得できていないゲーム展開だった」と語るように、この試合は勢いのある中大の前に早大らしいバレーボールをなかなか展開することができなかった。しかし、その中でも勝ち切れたというのは、2年間『学生王者』の座を譲っていないこのチームの底力なのだろう。そして明日。今年度の『学生王者』の座を懸け、最後の戦いが行われる。対峙するのは筑波大だ。春季関東大学リーグ戦、秋季関東大学リーグ戦ともに2位に輝いた東海大を準決勝で下し、波に乗っている。小澤宙輝(4年)、垂水優芽(1年)の強力な対格を中心に『王道バレー』で勝ち上がってきた筑波大に対し、早大も武藤がスタメンに復帰し現時点での「個」は最大となった。『学生王者』が入れ替わるのか。それとも、早大が『学生王者』の座を死守し3連覇を達成するのか。運命の瞬間はすぐそこに来ている。

(記事 友野開登、写真 萩原怜那、松谷果林)

セットカウント
早大25-23
25-20
22-25
25-18
中大
スタメン
レフト 吉田悠眞(スポ2=京都・洛南)
レフト 大塚達宣(スポ1=京都・洛南)
センター 武藤鉄也(スポ4=東京・東亜学園)
センター 村山豪(スポ3=東京・駿台学園)
ライト 宮浦健人(スポ3=熊本・鎮西)
セッター 中村駿介(スポ3=大阪・大塚)
リベロ 堀江友裕(スポ4=和歌山・開智)
コメント

堀江友裕主将(スポ4=和歌山・開智)

――決勝進出が決まった今のお気持ちをお願いします

みんなが納得できていないゲーム展開だったと思うのですがその中で決勝が決まって素直に嬉しいですしあすも勝ちに行きたいなと思います。

―1.2セットの振り返りをお願いします

サイドアウトも全然取れずによくなかったのですが相手のミスに助けられたということと要所でいいブロックが出たので助けられたと思います。

――3セット目はどうして取られてしまったと思いますか

負けていても頑張って追いついて行ったんですけどブレークしてもサイドアウトが切れずに点差を詰めれなかったところと精神的な部分ではちょっと相手の勢いに押されてしまった部分はあると思います。

―秋季関東大学リーグ戦で戦ったときとは違った印象でしたか

それはどこのチームも一緒だと思いますが全カレになったら4年生最後なのでどこのチームも変わるなという印象はあります。火曜日から試合をやっていても、見ていても感じますね。

――このチームで試合をできるのもあと1試合ですが何か思うことはありますか

思うことと言ったら悲しいですけどそれは考えずにあすがんばれたらいいなと思います。

――あすはどういった試合にしていきたいですか

1年間練習してきたのでそのかたちを大舞台で出すことだけを考えて準備したいと思います。

武藤鉄也副将(スポ4=東京・東亜学園)

――久しぶりのスタメン出場となりました

2試合目にケガをしてしまって、チームのみんなに迷惑をかけてしまいました。特に僕の代わりに入ってくれているレイモンド(上條、スポ2=千葉・習志野)や4年生1人で友裕(堀江主将、スポ4=和歌山・開智)が頑張ってくれました。この2試合で取り返す、というよりは自分がやるべきことを全部やりきろうということで試合に臨みました。それまで、この2日間も自分なりにはケガのケアもそうですし、コートの外から声をかけるというのも、自分にできることは全部やろうと思っていました。試合の中で、調子の良しあしはありますけど、それなりにプレーはしっかりできたかなと思います。

――上條レイモンド選手(スポ2=千葉・習志野)について

僕がレイモンドに色々指示を出していたので、指示通りというわけではないですが、しっかりやっていたと思います。元々良い能力を持っている選手なので、それをもっと生かすためには自分でもっともっと考えてプレーしていってほしいと思いますね。今のままでいけば、僕の所にレイモンドが入るわけじゃないですか。僕から見たらまだまだできるのにと思うこともあります。そこは練習や普段の私生活を改善すればもっと良いパフォーマンスが出せるのではないかなと。

――きょうの試合を振り返って

きょうはこっちとしてはあまり良くなかったです。中大がきのうフルセットで明大に勝ってからはすごく勢いに乗っていて。リーグよりははるかに強くなっていました。こっちとしてはサイドアウトがあまり取れなくて、攻撃が単調になりましたし、中大がきょう粘り強くレシーブしているのに対して、素直に(レシーバーが)いるところに打ってしまったり、それをかわすためにしなくていいミスをしてしまったり。たくさん修正すべきところがあったので、もう1回修正すべきところかなと思っています。

――中大の粘り強さに打ち勝った勝因は

エースの宮浦(健人、スポ3=熊本・鎮西)はじめサーブのポイントや、こっちのほうがトランジション、切り返しの部分で攻撃したときに決まる確率が高かったのかなと思います。そこが1番のポイントですかね。

――残り1試合となりました

やっぱり早稲田に入ってすごく多くのことを学んだので、その感謝の気持ちをプレーで表現することもそうですし、あすはこのチームでできるのも最後なので、今季1番良いパフォーマンス、1番良い試合を色々な人に見せることもしたいですね。こういったことで皆さんへの恩返しになるのかなと思っています。試合に入る前の先週の練習で松井さん(泰二監督、平3人卒=千葉・八千代)が僕らがふがいなかった練習をしたのに対して「優勝するのもそうだけど、その力があるのはもちろん十分に分かっていることだから、じゃあそれを超えるにはどうすればいいと思う?」っていう話をしてくださったんです。「人々に感動を与えられるような試合をする。勝ち負けではなく、まずは見ている人が感動するようなバレーをできれば一番いいし、それができれば結果は自然とついてくる」と。僕はその話を聞いている中で、「もっと目指すものがある、もっと成長できる部分があるな」と思いました。ただ勝つだけじゃなくて、良いパフォーマンスを出して結果的に勝てれば1番良いですし、自分たちが納得できるかたちで終わればいいなと思います。頑張ります!

村山豪(スポ3=東京・駿台学園)

――決勝が決まったいまのお気持ちを

勝てて良かったです!

――中大の印象はいかがでしたか

きのう中大さんがすごく良い試合で勝ったということで、流れは(中大に)あったと思います。流れを渡さないようにしっかりやろうと思って臨みました。

――ご自身の調子は

うーんって感じですね……(笑)。マークがきついというのもそうですし、自分自身結構今悩んでる時期なんですよね。スパイクが合わないのもありますが、1番は自分自身のプレーの調子が上がらないことがきついというか……。でも、チームが勝っているので、大丈夫です。

――調子が上がらないときはどのように切り替えていますか

逆に「1点は1点だから気にしないようにしよう」という感じで最近は気持ちを切り替えています。

――第3セットと第4セットの切り替えについては

そうですね、もう1回切り替えられました。「勝つ」という同じ方向を向いていたので、それであのような試合展開になれたかなと思います。

――あすに向けて

あすで最後なので、今ある力を全部出し切って終わりたいです。

宮浦健人(スポ3=熊本・鎮西)

――きょうの試合を振り返っていただけますか

きょうも厳しい試合でチームの雰囲気が沈むこともありましたが、最終的にはみんなが1つになって3-1という形で勝つことができて良かったと思います。

――この試合にはどのような対策をされて臨まれましたか

体育館が変わるということで、そこの感覚を早くつかもうと思って臨みました。しかし、結果としては途中までトスに対して早く入ってしまったりサーブのコントロールが上手くいかなかったりしたので、あしたはその辺を早く調整していければいいかなと思います。

――ご自身のサーブはいかがでしたか

1セット目はサーブがうまく入らなくて、2セット目以降は体育館が変わって影響はありますがとにかく1本目を思い切り打っていこうと考えました。結果として、1本目がいいサーブがいって、それがまた自信になってその後もうまくサーブを打つことができました。

――明日への意気込みをお願いします

あしたは今シーズンの集大成で、厳しい試合になるということは確実に分かっているので、自分たちが今までやってきたことを全部出し切っていきたいなと思います。

中村駿介(学部スポ3= 大阪・大塚)

――今のお気持ちをお願いします

きょうは自分のトスがあまり良くなかったですがあすは最後の試合になるので全力で楽しみたいなと思います。

―3セット目取られてしまった要因はなんだと思いますか

3セット目は相手の雰囲気に押されて僕のトスも守りに入るトスでしたし、トス回しも良くなかったのですがやはり受けに回ったのが敗因かなと思います。

――このチームでプレーするのもあすで最後ですが何か思うことはありますか

僕がスタメンとしてトスをあげる初めての一年だったし4年生にも迷惑をかけてしまったので最後は全員で楽しんで勝っていい思い出になるように頑張りたいと思います。

―最後にあすはどのような試合にしていきたいですか

負けのことを言うのは良くないかもしれないですが勝っても負けてもいい試合だったなと思えるように全員で走って行きたいなと思います。

吉田悠眞(スポ2=京都・洛南)

――今のお気持ちをお願いします

大学に入ってスタメンとして出て大学で1番の大会の決勝で戦えるということに嬉しさを感じつつもそこで勝ちきらなくてはいけないと思うのでプレッシャーも感じてはいますね。

―準決勝ということでいつもより緊張はしましたか

センターコートということで客席全員が自分たちのプレーを見ていることを感じて最初の方は緊張をしていましたが、試合中ふと今ここでバレーをすることができて幸せだなという思考に変わって試合を楽しむことができました。

――一点一点要所で決めている印象を受けました。きょうのプレーを振り返っていただけますか

天井も高い体育館で中村(駿介、スポ3=大阪・大塚)さんのトスの調子が上がっていないという状況でそこで自分がトスを要求するとかではなくどんなトスでも自分が合わせるという感じでプレーして、一本決まると駿介さんもリピートして使ってくれると思うのでそこで一点決め切れたのは成長できたのかなと思いました。

――このチームでプレーできるのもあと1試合ですが思うところはありますか

自分は秋リーグからしかスタメンで出ていないですが涼平さんの代わりに自分を出すと選んでくれた4年生のためにも恩返しの気持ちを持ってプレーすることと初めての舞台なので楽しんでプレーしていきたいです。

――あすへの意気込みを最後にお願いします

あすは自分の役割を明確にして自分らしく笑顔で一点一点確実に点をとって楽しい早稲田バレーができたないいなと思います。

大塚達宣(スポ1=京都・洛南)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

きょうはセンターコートということで、やっといよいよ本番と言っては悪いですが、やっとここまでやってこれたという気がしました。それを思うと硬くなってしまう部分があり、大分自分の中でもいいプレーを出せないこともありました。その中でも4年生の堀江(友裕、スポ4=和歌山・開智)さん、武藤(鉄也、スポ4=東京・東亜学園)を中心にすごく声をかけてくれていましたし、コートの外からも村本(涼平、法4=京都・洛南)さんがアドバイスをしてくれたので、みんなに助けられながらできて良かったと思います。

――村本選手から具体的にどのようなアドバイスがありましたか

スパイクでジャンプするタイミングがきょうは少し速くなっているといったアドバイスですね。自分では焦ってなかなか気づけていなかったところを指摘してもらえたので、涼平さんの顔を見ると安心するというか、心強いです。自分は結構そうする癖があります。きょうもそれで安心できたのでよかったです。

――最近絶好調のように見えます

全日本インカレに入ってから心身ともに調子が良い感じで試合には入れていますが、やっぱりここ一番という試合になると緊張しますね。初めてですし。ですがこのインカレに入って初めてセットを本格的に取られて苦しい展開も経験したので、そういう意味では失うものは何もないと思います。あしたは4年生との最後の試合になりますし、自分ができることを全てやるだけだと思っています。切り替えて自分らしいバレーができたらいいなと思います。

――中大の印象はいかがでしたか

中央大は波に乗ったら強いチームです。1セット取られたときは焦ったというか、2ー1でうちは勝っていましたがやっぱり怖いなというところはありました。そういうのを4セット目にチームとして立て直して、6人で勝てたことはすごく良かったと思います。そこは自分たちの強みだと思います。

――中大はディフェンス面では粘り強く、スパイク面では空いているところを狙ったりと、手強かったですよね

きのうの明治戦ではフルセットで中央大が勝利してからは波に乗っていたので、いつものリーグよりも怖いなと思っていました。その通りのプレーを向こうもしてきたというか、向かってきた相手に対して自分たちが少し受け身になってしまった部分がありました。そういうところがうちの弱いところなので、あしたはそういうこともなく自分たちはそれよりも強い力で跳ね返すような気持ちでやれたらいいかなと思います。

――チームが苦境に立たされたときほど大塚選手にトスが上がっていました

そこでトスを託してもらえることはすごくありがたいことなので、それを決め切れるか決め切れないかは自分の実力次第ですね。またプレーだけではなくそこで勝負できる気持ちも持たないといけないと思います。それはいい練習というか自分のためにもなると思うので、そこで頑張って決めようと思ってプレーしました。

――第3セットは苦しい展開になりましたが、チームとご自身のプレーを振り返っていかがですか

先ほども言ったように取られたセットでは相手の流れに乗せてしまいました。自分たちの雰囲気が固くなってしまって。自分が特にでしたが(笑)それで逆にうちが乗れていない状況だったので、チームとしては自分たちがやることはいつだって変わらないということも考えて、雰囲気もよくできたと思いますが、それができなかったのがきょうの反省点でした。個人としても同じですが、気持ちの面で弱気ではありませんが硬いところがありました。それが表情とかにも出ていたと思いますし、先輩方から「きょうは硬いぞ」と言われました。きょうはあまり試合を楽しめていなかったので、あしたは楽しんで、自分のやるべきことをやれたらいいなと思います。

――あしたは決勝ですが、やはり特別な思い入れはありますか

4年生とバレーができる最後の日なので。そう思うと今までお世話になった分結果で返したいです。コートにチームの代表として立たせてもらっているからには絶対に勝ちに行くので、その気持ちだけであしたは全力で恩返しのつもりでプレーできたらいいなと思います。