スペインサッカー3強のひとつ、アトレティコ・マドリードは今シーズン、新時代を迎えている。メンバーが大きく入れ替わったシ…

 スペインサッカー3強のひとつ、アトレティコ・マドリードは今シーズン、新時代を迎えている。



メンバーが大きく入れ替わったシーズンだが、頂点を目指しているアトレティコ・マドリード

 2011年12月にディエゴ・シメオネが監督就任して以降、アトレティコは7タイトルを獲得し、欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝にも2回進出。ここ8年間は大成功を収めていると言っていいだろう。

 しかし今夏、チームの主軸であったアントワーヌ・グリーズマン、リュカ・エルナンデス(以上フランス)、ロドリ、フアンフラン(以上スペイン)、ディエゴ・ゴディン(ウルグアイ)、フィリペ・ルイス(ブラジル)が揃って抜けたことにより、大きな転換期が訪れることとなった。

 アトレティコは新時代のエースとして19歳のポルトガル代表FWジョアン・フェリックスを、ベンフィカ・リスボンからクラブ史上ならびに今夏のスペインの移籍市場最高額となる1億2720万ユーロ(約152億6400万円)で迎え入れた。

 そのほか、マルコス・ジョレンテ、マリオ・エルモソ(以上スペイン)、キーラン・トリッピアー(イングランド)、フェリペ、レナン・ロディ(以上ブラジル)、イバン・シャポニッチ(セルビア)、エクトル・エレーラ(メキシコ)の計8選手の補強に費やした金額は、合計で2億4470万ユーロ(約293億6400万円)。これは2億9800万ユーロ(約357億6000万円)でトップのレアル・マドリード、2億4600万ユーロ(約295億2000万円)で2位のバルセロナに次ぎリーガでは3番目となっている。

 プレシーズンにアメリカで開催されたマドリードダービーで、レアル・マドリード相手に、ジエゴ・コスタが4得点、ジョアン・フェリックスが1得点2アシストを記録して7-3で圧勝し、その勢いのまま開幕からリーグ戦3連勝を達成し首位に立った。

 しかしリーガ第4節レアル・ソシエダ戦の敗北を機に大失速し、ここまでの公式戦19試合の成績は8勝8分3敗(リーガ14試合6勝7分1敗、CL5試合2勝1分2敗)。リーグでは4位(11月29日時点)。アウェーで勝利できずに苦しみ、引き分けが多い。

 その原因は、これまでも問題となっていた決定力不足にあることは間違いなく、シメオネもCL第5節のユベントス戦(11月26日)後に「ゴール面を改善する必要がある」と認めている。リーガ総得点16ゴールは優勝を狙うにはあまりにも物足りなく、得点数はリーガでアラベスと並び11番目。一方、優勝争いのライバルとなるバルセロナは35ゴール、レアル・マドリードは28ゴールを、共に1試合少ない中で記録している。

 今シーズン、エースの役目を求められるジエゴ・コスタは、プレシーズン5得点でチーム得点王になるも、シーズンの始まりと共にまたもやその得点力が鳴りを潜める。昨シーズンはケガや出場停止もあり、リーガでわずか2ゴール、今シーズンもここまで11試合で2ゴールのみ。

 それでもその闘争心を買うシメオネは、度々擁護しスタメンで起用してきたが、先週椎間板ヘルニアの手術を行ない、復帰目標は2月下旬に再開するCLラウンド16と言われている。

 ジエゴ・コスタ不在の中、アルバロ・モラタの調子が上がってきていることがチームにとって大きな光となっている。ここ2試合は無得点に終わっているが、その前まで公式戦6試合連続得点を記録。リーグ戦5ゴールでチーム得点王になっている。

 ジョアン・フェリックスはシーズン序盤、存在感を示しリーグ戦で2ゴールを決めたが、第9節バレンシア戦での負傷により約1カ月、公式戦4試合の欠場を余儀なくされた。その後、第14節グラナダ戦で戦列復帰し、続くCL第5節ユベントス戦では途中出場ながらリズムを掴み始めている。また11月27日に2019年のゴールデンボーイ賞(欧州最優秀若手選手賞)を受賞し、最高の1年となっている。

 守備陣は昨シーズンからメンバーが入れ替わるも、リーグ戦14試合でわずか9失点と、ビルバオと並びリーガトップの堅守を誇り、例年どおりのレベルを維持できている。

 その要因として守護神ヤン・オブラクの存在が大きいだろう。ほぼ毎試合、ビッグセーブを披露し勝ち点獲得に大きく貢献している。ここまでのリーグ戦1試合の平均失点数は0.64ゴールで、1試合平均失点1.00ゴール(14試合14失点)の2位バツリーク(セビージャ)に差をつけ、5年連続のサモラ賞(最優秀GK賞)受賞に向けて前進している。

 ゴディン、リュカの抜けたCBでは、ホセ・ヒメネスがゴディンの後継者として守備のリーダーとなりステファン・サビッチがスタメンに格上げされた。しかし両選手ともに現在負傷中のため、新加入のフェリペとエルモソがその穴を埋めている。

 フアンフランとフィリペ・ルイスが揃ってブラジルのクラブに移籍したサイドバックにシメオネは、新たにトリッピアーとロディをレギュラーに迎えている。

 イングランド代表のトリッピアーはベッカムを彷彿とさせる正確な右足のキックを武器に、クロスだけでなくFKのキッカーも担当し、右サイドバックでサンティアゴ・アリアスを完全にリードしている。

 ロディはチームで唯一、左サイドバックが本職の選手。ブラジル人らしい高い攻撃力を備え不動のレギュラーになっている。またそのバックアップとして本来CBのエルモソ、そしてユーティリティープレーヤーのサウール・ニゲスが起用されることもある。

 中盤で様々なポジションをこなす、コケとサウールの絶対的なレギュラーの立場は昨シーズンと変わらず、急成長を遂げたトーマス・パーティがこれに追随している。そしてジョアン・フェリックスがFWで起用される場合、中盤4枚の残りひと枠を争うのはトマ・ルマール、マルコス・ジョレンテ、ビトロ、エクトル・エレーラ、アンヘル・コレア。

 シメオネがコケとサウールをどのポジションに配置するかで起用される選手が変わるが、グラナダ戦に先発起用され、すばらしいプレスを見せ、ユベントス戦でも先発起用されたとおり、ここに来て大幅にチームにフィットしているエクトル・エレーラが一歩リードしていると見ていいだろう。

 シメオネはシーズン開幕時、様々なシステムを模索した。第1節ヘタフェ戦ではトップ下にルマールを配置したダイヤモンド型の4-3-1-2、第2節レガネス戦ではロディが出場停止だったため、サビッチ、ヒメネス、エルモソをCB、トリッピアーとサウールをウイングバックに配置した5-3-2で戦った。そして第3節エイバル戦では再びシステムを4-3-1-2に戻し、それ以降はいつもどおりの4-4-2に落ち着いている。

 ここまでの戦いぶりを見る限り、シメオネの完成形は、GKオブラク、DFトリッピアー、サビッチ、ヒメネス、ロディ、MFジョアン・フェリックス、トーマス、コケ、サウール、FWジエゴ・コスタ、モラタとなっている。しかし現在はケガ人続出により、そのプランの変更を余儀なくされている。

 シーズンも半ばに近づき、獲得候補に左SBのウルグアイ人マティアス・ビーニャ(ナシオナル)や、守備的MFのブラジル人ブルーノ・ギマラエス(アトレティコ・パラナエンセ) などの名前が挙がっているが、今冬の移籍市場での選手獲得はないと見られている。

 エンリケ・セレッソ会長はユベントス戦当日、「基本的に選手を獲得するつもりはないが、もしその必要性があるとなれば獲得するつもりだ。ジエゴ・コスタのケガは残念だが、我々にはすばらしい控え選手たちがいる」とコメントした。

 またシメオネもグラナダ戦前日の記者会見でジエゴ・コスタの代わりとして、Bチームのエース、ダリオ・ポベダをメンバーに加えることを明かし、実際にトップチームでデビューさせ、まだ一度もプレーしていないシャポニッチがいることも強調している。さらにユベントス戦後の記者会見では「今いる選手とともに死ぬ気で臨む」とも語っていた。

 しかし実際のところは、リーガのサラリーキャップ制を準拠するために、まず選手の売却が必要となっていることが、今冬の移籍市場で動かない理由と思われる。

 シメオネが目指すのは、すでに何度か試してきたジエゴ・コスタ、モラタ、ジョアン・フェリックスの”トリデンテ(三叉の矛)”を機能させ、今いるメンバーで新時代のチームを形作ること。それが6シーズンぶりのリーガ優勝、ならびに悲願のCL初制覇を成し遂げるために必要不可欠となる。

 アトレティコはこの後、バルセロナとのリーガ前半戦の大一番を迎える(12月1日)。主力に欠場者が続出し、ここ最近勝利に苦しむシメオネが、今季1度も負けていない難攻不落の要塞、ホームのワンダ・メトロポリターノで首位チーム相手にどのように戦うのかに注目したい。