ジェイテクトSTINGSの西田有志が、史上最年少でⅤリーグ(V.LEAGUE)デビューを果たしてしてからもうすぐ2年。今の男子バレー界には”西田旋風”が巻き起こっている。得点を決め、派手なガッツポーズを見せる西田 photo by Hin…

 ジェイテクトSTINGSの西田有志が、史上最年少でⅤリーグ(V.LEAGUE)デビューを果たしてしてからもうすぐ2年。今の男子バレー界には”西田旋風”が巻き起こっている。




得点を決め、派手なガッツポーズを見せる西田 photo by Hino Chizuru

 きっかけは、10月1日から約2週間にわたって開催されたワールドカップに他ならない。19歳にして日本代表のレギュラーに定着し、2位以下に10点以上の差をつけて大会ベストサーバーに輝くなど、28年ぶりとなる4位に大きく貢献。4年前の「NEXT4」を彷彿とさせる男子バレーブームが起こったが、石川祐希、主将の柳田将洋らが海外のチームに所属していることもあり、西田が国内バレーファンの注目を集めることになった。

 10月26日にVリーグ男子が開幕すると、ジェイテクトが絡む試合のチケットは発売と同時にほぼ売り切れ。11月23日、24日のホームゲーム(愛知県刈谷市)も自由席まで完売で、両日とも昨年の同時期の観客数を1000人ほど上回る、約3000人を動員した。予想をはるかに超える数のファンに対応するため、チームは無料配布していたスティックバルーンを有料にしたが、すでに今季の配布予定数に達してしまったという。

 そんなファンの後押しもあって、ジェイテクトは1レグを終了した11月29日時点で8勝1敗。リーグ3連覇を狙うパナソニックパンサーズに次ぐ2位と好調だ。

 昨シーズンのジェイテクトは、西田の”孤軍奮闘”という印象が強かったが、今シーズンは戦力が充実している。203cmの元ブルガリア代表のエース、マテイ・カジースキが2シーズンぶりにチームに復帰。相手チームのブロックのマークが分散され、西田も楽にスパイクを打てるようになった。また、「アジア枠」で中国代表の210cmのミドルブロッカー饒書涵(ラオ・シュハン)、東レアローズから207cmのミドルブロッカー伏見大和が加入したことで、高さでも他チームに引けを取らない。

 セッターに関しては、早稲田大卒の新人・小林光輝の出場機会が多くなっている。まだVリーグに慣れず、トスに余裕がなくなることもあるが、西田はそれを打ち切ることで”年上のルーキー”をカバー。頼もしさを増す若きエースについて、今シーズンから主将を務める本間隆太も「彼に直してほしいところはないですね。自分が19歳の時と比べて、プレーも意識も大人すぎます」と絶賛する。

 西田は順調に得点を重ねており、11月29日時点のランキングで、外国人選手が上位を占める総得点数部門の3位(191点)。さらに、”ビッグサーバー”の基準となる120km前後の球速を記録し、相手チームの選手も「ほぼバックアタックを受けているのと同じ」と舌を巻くサーブでの得点は、チームメイトのカジースキ(20得点)を上回る25得点でトップだ。

 とくに圧巻だったのは、東レアローズに3-0のストレート勝ちを収めた11月17日のアウェーでの試合。3セット合計で7本ものサービスエースを奪い、何度も派手なガッツポーズが飛び出した。それについて西田本人は、「(派手なガッツポーズは)ダサいと思われるかもしれないですけど、こうやって感情を表現することで、お客さんたちがもっと乗ってもらえたら」と話した。石川や柳田といった海外でプレーする先輩たちに、Vリーグを託された身として「自分が盛り上げていかなきゃと思っています」と意気込みを口にする。




ジェイテクトのホーム会場には、チケット完売を知らせる張り紙も photo by Nakanishi Mikari

 西田がチームでつけている背番号14は、学生時代に憧れていた石川と同じ。日本代表として初めてワールドカップを一緒に戦い、憧れの存在だった石川はチームメイト、互いを高め合うライバルへと変わった。実際に、大会初日のイタリアに勝利したあとのインタビューでは、次のようにコメントしている。

「(石川の)プレーと人気のすごさはよくわかりました。でも、自分も負けないようにどんどんやっていきます」

 ワールドカップで日本の躍進を目にしたバレーファンの中には、来年の東京五輪でのメダル獲得に期待を寄せる人も多いだろう。ワールドカップに参加した海外チームの中には、主要メンバーを招集しなかった国もあったため、五輪でも同じような戦いができるとは限らない。それでも、西田が大会までにさらなる成長を見せれば、1972年ミュンヘン五輪以来となる快挙達成の可能性も高まるはずだ。

 昨シーズン、Vリーグのレギュラーラウンド上位チームで順位を争うファイナルステージに、もう一歩のところで進出できなかったジェイテクト。その雪辱に燃えるチームを、エースとしてけん引する西田のプレーから目が離せない。