グループFの首位に立つバルセロナがホームに2位のドルトムントを迎えた、チャンピオンズリーグ第5節。注目の首位攻防戦はバ…

 グループFの首位に立つバルセロナがホームに2位のドルトムントを迎えた、チャンピオンズリーグ第5節。注目の首位攻防戦はバルセロナが3−1で勝利を収め、1試合を残してグループ首位通過を決めた。

 このところ結果とは裏腹に低調な試合が続いていたバルセロナにとっては、噴出する周囲からの不安の声を払拭したとまでは言えないものの、今季屈指のパフォーマンスを見せて手にした勝ち点3だった。勝利の立役者は、この試合がバルセロナでの公式戦700試合目の出場となったリオネル・メッシである。



メッシとグリーズマンのコンビネーションもよくなってきた

「メッシ依存症」とは、昨季のバルセロナの報道でもよく使われたフレーズだ。だが、よくも悪くも今季はその傾向がより強くなっている。

 たとえば、ラ・リーガにおける戦いを振り返っても、故障で出遅れたメッシが今季初スタメンを飾った第6節(ビジャレアル戦)以降は5連勝。それまで2勝1分2敗と苦戦していたバルセロナは、一気に本来の強さを取り戻している。

 そのなかでメッシはゴールとアシストを量産し、スタメン復帰後のリーグ戦8試合で8ゴール5アシストをマーク。無双ぶりを発揮しているが、1ゴール2アシストを記録したこのドルトムント戦でも、メッシの重要性があらためて証明される格好となった。

 前半22分、ルイス・スアレスからのパスを中央で受けたメッシが裏に抜け出すスアレスに戻したパスは、スアレスがネットを揺らすもオフサイドの判定。しかしその7分後には、相手のクリアミスを拾ったメッシが素早く反応したスアレスに同じようなラストパスを送ると、今度はオンサイドで抜け出したスアレスがゴールをゲットし、鮮やかな先制点を演出した。

 さらに33分には、マッツ・フンメルスのパスミスをカットしたフランキー・デ・ヨングからダイレクトパスを受けたメッシが、スアレスとのワンツーで抜け出して自ら左足で加点。極めつけは、後半67分にカウンターから生まれたゴールシーンである。

 デ・ヨングからの縦パスを自陣で受けたメッシが一気に加速すると、ドリブルで敵陣深くまで前進しながら相手を引きつけて、左サイドでフリーになったアントワーヌ・グリーズマンに抜群のタイミングでパス。これをグリーズマンが決めて3−0とし、その時点で勝負は決した。

 これまでも試合を重ねるごとに改善の跡が見られていたメッシとグリーズマンのコンビネーションの問題についても、この試合ではよりポジティブな印象を見る者に与えたはずだ。とくにこの試合でベンチスタートとなったグリーズマンのパフォーマンスは目を見張るものがあった。

 前半26分に負傷したウスマン・デンベレに代わって左サイドに入ったグリーズマンは、まずは出場3分後に先制ゴールの起点となった。そして2−0とリードした前半35分には、前線左サイドでの果敢なプレッシングから相手のビルドアップを封じると、スタンドに向かって大きな声を出しながら気合いのガッツポーズ。シャイな男が珍しく感情をむき出しにしたそのパフォーマンスは、後半67分に決めたゴールの予告ともいえる印象的なシーンだった。

 相手ボール時にシステムが4−3−3から4−4−2に移行するバルセロナにおいて、左サイドでグリーズマンがプレーする意味は大きい。時に最終ラインまで下がって対峙する相手サイドバックをマークする献身的な守備は、デンベレはもちろん、昨季のフィリペ・コウチーニョにもできないプレーだ。

 言うまでもなく、本来グリーズマンはストライカーだ。当然、ゴール前でのプレーを好むはずだが、新天地では常にメッシの動きを確認しながらポジションをとって、攻守のバランスをとることを最優先するプレーが目立つ。そういう意味で、「MSG(メッシ、スアレス、グリーズマン)トリオ」が今季のバルセロナの生命線だとすれば、その最大のキーマンがグリーズマンであることは間違いなさそうだ。

 いずれにしても、この試合ではジェラール・ピケ(出場停止)、ジョルディ・アルバ(負傷欠場)、ネルソン・セメド(負傷欠場)らを欠きながらポジティブな勝利を手にしたバルセロナだが、その一方で気になる点もあった。それは、2−0とリードした後半のゲーム運びである。

 かつてのバルセロナであれば、2点リードした状況で相手が前がかりになれば、圧倒的なパス回しでその勢いをいなし、相手の戦意を失わせて試合を終わらせることができた。しかし、エルネスト・バルベルデ監督率いるバルセロナは、ボールを握ることにこだわらず、引いて守ってからカウンターを狙う傾向が強すぎる印象を受ける。

 たとえば、この試合におけるバルセロナのボール支配率は、前半に54%を記録しながら後半は38%に低下。パス本数も、前半の376本から236本に減少した。最終的にボール支配率でドルトムントの54%を下回り、パス本数でも109本も下回ったことは、後半のバルセロナの劣勢を証明するスタッツと言える。

 もちろん、それも戦い方のひとつではあるが、メッシとスアレスがほとんど守備に貢献できないなか、8人で守りきるのはさすがに無理がある。実際、この試合でも3点にリードを広げた10分後に失点を喫するなど、押し込まれる時間帯が長引くと、どうしても守りきれなくなる状況に陥る傾向は否めない。

 そして、それに拍車をかけたのが、バルベルデ監督の保守的な采配だった。

 たしかにデンベレの負傷で交代カード1枚を使ってはいたが、アルトゥーロ・ビダルを中盤に投入したのは失点直後の78分のこと。対するドルトムントのルシアン・ファブレ監督は後半76分にウカシュ・ピシュチェクに代えてダン=アクセル・ザガドゥを投入し、システムを4−2−3−1から攻撃的な3−4−3に変更。その1分後のゴールにつなげたアグレッシブな采配とは、実に対照的だった。

 さらにファブレ監督は、85分にマリオ・ゲッツェを投入してアタッカーの枚数を増やした一方、バルベルデ監督はその後の交代策を用意していなかったのか、ようやくアディショナルタイム1分になってからスアレスに代えてムサ・ワゲを起用。グリーズマンを前線に移し、右MFにワゲを配置して中盤の守備を強化するにとどまった。

 もっとも、押し込まれるなかで投入されたワゲが最終ラインに吸収され、5バックになるシーンが目立ったことからすると、それが付け焼き刃の采配だった可能性は高い。少なくとも、今後につながるオプションにはなりそうもない。

 チャンピオンズリーグでは首位通過を果たし、国内リーグ戦でも現在首位に立つバルセロナではあるが、今季指折りの内容で勝利したこの試合を終えても、まだ不安が解消されたとは言い難いものがある。

 その意味でも、今週末12月1日のアウェーでのアトレティコ・マドリード戦と、12月18日に予定されるホームでの「クラシコ」レアル・マドリード戦は、今後のバルセロナとバルベルデ監督の行方を占ううえで極めて重要な試合となるだろう。