来年の2月5日で35歳になるクリスティアーノ・ロナウド。この希代の名プレーヤーにも、そろそろ賞味期限の終わりが来ている…
来年の2月5日で35歳になるクリスティアーノ・ロナウド。この希代の名プレーヤーにも、そろそろ賞味期限の終わりが来ているのではないかという声が聞かれるようになった。

ユベントスでは今季まだ6得点のC・ロナウド
photo by Getty Images
果たしてロナウドは未だにチームにとって欠かせない存在なのだろうか? この疑問に対してポルトガル国民、そしてポルトガル代表のフェルナンド・サントス監督の答えは一致している。またおそらくその答えには、一つの常套句が付け加えられる。
「ポルトワインは古ければ古いほどすばらしいじゃないか」
ロナウドの力が疑問視されるようになったのは、ユベントスのマウリツィオ・サッリ監督が、彼を2試合続けて途中交代させてからだ。
11月6日に行なわれた欧州チャンピオンズリーグ、ロコモティフ・モスクワ戦で後半36分にパウロ・ディバラと交代するが、その4日後のセリエA、ミラン戦でも、後半10分に同じくパウロ・ディバラと交代。それは彼にとってユベントス加入後最速の交代であり、ロナウドは不満を露わにしてロッカールームへと引っ込んでいる。
このこと自体は些細なことかもしれないが、フィジカルコンディションがよくないのではと噂されるには十分な出来事だった。彼の存在はいかなるチームであれ重要であることは間違いないが、数字が批判あるいは疑問を助長していることもたしかだ。
今シーズンのロナウドの得点数はわずかに6ゴールである。昨季の得点数「28」をあきらかに下回るペースだ。レアル・マドリード最後のシーズンは44得点。そしてスペインリーグに在籍していた9シーズンのうち、8シーズンにおいて40得点以上を記録している。この数字と比べれば、ユベントスでのゴール数は非常に少ないということになる。
「年齢が問題だろう」と、ロナウドを批判する者たちは口を揃えるかもしれない。ファビオ・カペッロ(元ユベントス監督など)は「この3年間、彼はドリブル突破をことごとく阻まれている」と指摘。コンディションがよくないのだから、2試合連続で交代させられたのも当然であると話している。
これらの批判は、ロナウドを嫌う者たちにとっては心地よいものとして耳に届いただろう。だが、この言葉をもっとも不快に感じたのはポルトガル代表監督のフェルナンド・サントスであったようだ。11月16日、ユーロ2020予選、ルクセンブルグ戦前日の会見。最近ではロナウドが欠かせない存在であることを疑問視されてきたが、それについてどう思うかという問いに対して、少し怒りを含んだ口調でこう答えた。
「ロナウドのクオリティに対して、疑問に思う者がいることが理解できない。私にとっては世界最高の選手であり、その質問に対してはそれ以上答えたくない」
その翌日に行なわれたルクセンブルグ戦で、ロナウドはポルトガル代表としての99得点目となるゴールを記録している。また、その3日前に行なわれたリトアニア戦では、3ゴールと依然大きな存在感を示している。
したがってほとんどのポルトガル人は、ロナウドに対しては全面的な信頼を寄せており、監督の言葉と同じ考えを持っているのだ。
2019年は、じつはロナウドにとってポルトガル代表でもっとも多くの得点を記録した年となっている。なんと10試合で14得点を決めた。
ロナウドは、ポルトガル代表デビューを果たした2003年8月以来、4人の監督の下でプレーを続けてきた。ルイス・フェリペ・スコラーリ監督の時はまさにブレイクしようとする若者だった。
その頃はサイドでのプレーを好み、もっぱらアシストをしていた。ゴールへの欲求がだんだんと大きくなっていく傾向は見られたが、代表においてどのような役割を担っていくべきなのかをまだ探っていた時期でもあった。スコラーリ監督時代に、彼は58試合で21得点を記録している。1試合平均0.36ゴールだった。
順風満帆のスタートを切った代表でのプレーだが、カルロス・ケイロス監督になってから最悪の時期がやってくるなどとは誰も思っていなかった。ケイロスはロナウドがいたマンチェスター・ユナイテッドでアシスタントコーチを務めていたし、アレックス・ファーガソン監督に対してロナウド獲得を推薦した人物だからだ。
お互いに十分な信頼関係を築いていると誰もが考えていたのに、ケイロス監督時代の2年間、ロナウドの成績はさんざんだった。18試合に出場し、得点はわずかに2点だけである。
しかし、2010年10月にパウロ・ベントが監督に就任すると、事態は快方に向かうことになる。
ロナウドとの関係性において、ケイロスとパウロ・ベントには大きな違いがあった。ケイロスは彼をキャプテンに任命し、得点を決めなければいけないと、責任を負わせるコメントを繰り返した。当時、チームを構成していたのはほとんどが彼よりも年上で、経験豊富な選手たちだった。未熟だったロナウドに与えた重圧は大きく、得点が決まらない試合が続くにつれ、監督とロナウドの関係は悪化していったのだ。
しかしパウロ・ベントは、ロナウドをキャプテンに選びながらも、得点に対する責任は選手全員に負わせるようにした。すると、彼はゴールゲッターへと変わっていくことになる。それは偶然の産物ではなかったのだ。パウロ・ベントの存在があったからこそ、ロナウドはエウゼビオの代表41得点を超え、さらにパウレタの持つ歴代最多得点の47得点も超えて、ポルトガル歴代最多得点者となることができたのだ。
後任者となったフェルナンド・サントス監督は就任1日目から、はっきりとした哲学でチームを指揮した。監督はロナウドがポルトガル代表において最も重要な選手であることを認めながらも、ひとりでは勝利できないことも説いた。やがてポルトガルは、ピッチ上に彼がいてもいなくても勝つことができるようになった。監督の哲学が成果となって表われたのが、ユーロ2016決勝だった。フランスを相手に、ポルトガルはロナウドなしで勝利することができたのだ。
フェルナンド・サントス監督の指揮下において、ポルトガル代表は71試合を戦い、得点数は141点。ロナウドはそのうち53試合に出場し、49得点を決めている。つまり1試合平均ほぼ1得点を決めていることになる。
代表での世界最多得点記録はイラン代表のアリ・ダエイが持つ109得点だが、このまま行けばロナウドが近い将来に記録を破るだろう。彼にとって5度目となるユーロ2020年大会でそれを達成するかもしれない。
ポルトガルでは代表におけるロナウドの重要さを疑う者はほとんどいない。もしユベントスにおいてロナウドについて文句を言う者がいたとしても、ポルトガル人にとっては関係のないことだ。なぜならばロナウドは、最高のポルトワインのように、年を重ねるごとにさらにすばらしさを増してきているからだ。
4人のポルトガル代表監督とクリスティアーノ・ロナウドの得点数
ルイス・フェリペ・スコラーリ 58試合 21得点 1試合平均0.36
カルロス・ケイロス 18試合 2得点 1試合平均0.11
パウロ・ベント 35試合 27得点 1試合平均0.7
フェルナンド・サントス 53試合 49得点 1試合平均0.92