23・24日、現体制の集大成としての試合である全慶應義塾対全早稲田定期戦(早慶戦)がホームである早大東伏見馬場で行われた。第3競技の小障害ほかすべての競技で敗北を喫する。入部してから一度も優勝したことがない世代である4年生が率いる早大は優…

 23・24日、現体制の集大成としての試合である全慶應義塾対全早稲田定期戦(早慶戦)がホームである早大東伏見馬場で行われた。第3競技の小障害ほかすべての競技で敗北を喫する。入部してから一度も優勝したことがない世代である4年生が率いる早大は優勝が悲願であったがあえなく準優勝に終わった。


現役小障害飛越競技、蒔苗主将と稲嵐

 23日午前9時。悪天候のもと試合が開始された。第1競技L1科目には早大より5人馬が出場する。浦田泰貴(人4=東京・豊多摩)・木村澪(国教4=神奈川・サンモールインターナショナルスクール)はそれぞれにベストを尽くした演技を披露。萬田雛乃(人4=東京・東学大付)、山下大輝(スポ3=宮城・東北)、武井梧右(スポ3=東京・東農大一)は60パーセントを超える得点率を収め、早大の得点につながる上位6人以内に入った。「出た選手はそれぞれ過去一年で一番いい演技だったんじゃないかというくらいの仕上がり」(蒔苗知紀主将(国教4=東京・玉川学園))だったが、惜しくも総得点で及ばない。続く第2競技の学生章典馬場馬術課目も、弱まらない横殴りの雨の中で始まる。石山晴茄副将(スポ4=茨城・つくば秀英)、下愛理彩(社4=東京・早実)が同率2位。やはり1位の座を早大に奪われ、合計得点では慶大と3点の開きが生まれた。

 しかし、第3競技の現役小障害飛越競技では、慶大の2人馬に対し早大からは吉田優海(人4=岡山朝日)ら4人馬がジャンプオフへと進出する。中でも蒔苗主将、武井は総減点0で2位、3位に食い込む好成績を残した。しかし両者とも早稲田ではトップクラスの馬だっただけにこの結果に悔しさをにじませた。続く競技2日目。第4競技の高校生障害、第5競技のOB障害では連続して慶大に勝利を譲り、優勝への道が完全に断たれてしまった中で最終競技の現役中障害に挑んだ。早稲田からは石山副将、吉田光佑(スポ1=東福岡)、山下の3人馬が出場した。ジャンプオフへと駒を進めたのは山下のみ。今大会で引退となる石山は「きょうのジョルジオ(・アルマーニ)だったら減点ゼロで帰ってくることができるかなと思っていた。去年は残れていたジャンプオフに残れなかったことが一番悔しい」と語った。迎えたジャンプオフ。なんとか一矢報いたい山下だったが最終障害を落としてしまい、クリアラウンドとはならなかった。


現役中障害飛越競技、石山副将とジョルジオアルマーニ

 

 今年70周年を迎えた伝統の一戦は、実力差が浮き彫りになる結果となった。今大会で4年生は引退となる。「2020年の早稲田大学馬術部がどこを目指してみんなで歩んでいっているのかというのをしっかり明確にしてもらって、みんな一つになって突き進んでいってほしいです。僕らが四年生、一番上(の学年)になったときに見られなかった景色を、後輩の子たちには見てほしい」(蒔苗主将)。4年生たちからは新体制を担う部員たちへ熱いエールが送られた。次期主将の武井は切磋琢磨できる環境づくりのために長期的な計画を立てていると語っている。来年の馬術部の飛躍に期待したい。


L1課目、次期主将の武井とエーデル・シュタイン

(記事 日野遙、伊藤可菜 写真 伊藤可菜、宇根加菜葉、日野遥)

結果

▽第1競技 JEF馬場馬術競技L1課目2013

●早大1-2慶大

2位 武井・エーデル・シュタイン 63.200パーセント

3位 山下・稲隆 61.466パーセント

5位 萬田・稲彩 60.066パーセント

7位 木村・稲俊 59.000パーセント

10位 浦田・グランダーマ 55.600パーセント

▽第2競技 学生章典馬場馬術課目2018

●早大1-3慶大

2位 石山・稲隆 60.937パーセント

2位 下・エーデル・シュタイン 60.937パーセント

▽第3競技 現役小障害飛越競技

〇早大2-1慶大

2位 蒔苗・稲嵐 57.94 総減点0(JO 51.40 総減点3)

3位 武井・ジョルジオアルマーニ 58.47 総減点0(JO 52.68 総減点0)

4位 吉田・アイシングラー 55.16 総減点0(JO 55.16 総減点0)

5位 高田・プリンチペスコ 61.90 総減点0(JO 45秒E)

2反抗E 川村・ビビアンリスト

▽第4競技 高校生障害飛越競技

●早実高1-2慶応校

▽第5競技 OB障害飛越競技

●早大OB1-2慶大OB

▽第6競技 現役中障害飛越競技

●早大1-3慶大

山下・稲嵐 (JO )

石山・ジョルジオアルマーニ

吉田・ゾビオン

▽最終結果

優勝 慶大

準優勝 早大

コメント

蒔苗知紀主将(国教4=東京・玉川学園)

――主将としての視点から馬場についてはいかがでしたか

L1科目(L)は山下と武井がすごくいい演技をしてくれたので「いけたかな」と思いました。ただ、慶大の1位のH・アフロダーテがなかなかの点数をとったので総得点であとちょっと及ばなかった。でもLだけを見ると、出た選手はそれぞれ過去一年で一番いい演技だったんじゃないかというくらいの仕上がりにはできていました。そこでやっぱり勝ちがほしかったですが惜しかったです。学典(学生章典馬場馬術課目)は全学(全日本学生大会)で下は10位、石山は全学で組めなかった、そのリベンジをということでがんばってはいましたが……。出るのが二頭だけというのもありますが、そこでも1位を相手にとられたっていうのは大きくて、あと一歩及ばなかったなというのが正直な感想です。

――ご自身も小障害に出られていましたが、障害については

小障害は唯一勝てた競技ではあって、そこはよかったなと思います。自分の話をすると、タニノマティーニが直前で出られなくなったので急遽稲嵐に乗ることになり、最初は本当に不安でした。ですが山下がすごく熱心に見てくれたので何とか帰ってこられて。ジャンプオフまで残れて2位にもなれたことは自分の中ではすごくよかったですが、馬的には1位にならなきゃいけなかったのでそこは悔しい思いがあります。中障害に関しては、うちには3頭しかいなくて不安はもちろんありましたが、最後まで残れるいい馬たちなので信じてはいました。でもやっぱり慶應の方がすべてにおいて一つ上だったと感じます。

――主将としての一年間を振り返っていかがですか

長いようで短くて、短いようで長かった一年間でした。振り返ってみると、なかなか結果がついてこなかった一年間だったなという風に思います。六大学も目指していた上位は結局慶應に負けてとれず、関東は良かったのですが、全学でも最後はバタバタっときちゃいました。今回も早慶戦で負けてしまって。そこは、自分のリード力が足りなかった面もあり、部員全員を束ねて同じ目標に向けてしっかり歩んでいく力がいまいち自分自身になかったのかなと悔やまれます。

――この4年間についてはいかがですか

最初、大学に入って2、3か月くらいで東伏見に来て。体育会に入りたいとは思っていましたが正直4年間続けられるとは思っていなかったです。巡り巡って4年間無事終わって、1mmも後悔はないです。もちろん馬術部はほかの体育会とはわけが違って動物を扱っているので休みがないのは承知でしたが、それにしても入ってやっぱりきついときはきつかったし、大変だなと思うこともありました。でもその中でも馬に乗れることは自分の中ではすごく原動力になって。それができたことはすごく4年間のモチベーションにもなったし、続けていて本当によかったなと思います。これから武井が主将になって新体制が始まっていきますが、そこでしっかりOBとして、また一主将をやっていた人間として、アドバイスできることがあれば率先してやっていきたいなと思います。

――後輩へのメッセージをお願いします

部活をやっていく中でぶつかることが――壁にぶつかったりとか部員同士でぶつかったりとか――あると思いますが、その中で2020年の早稲田大学馬術部がどこを目指してみんなで歩んでいっているのかというのをしっかり明確にしてもらって、みんな一つになって突き進んでいってほしいです。僕らが四年生、一番上(の学年)になったときに見られなかった景色を、後輩の子たちには見てほしい。特に、早慶戦は僕らの代は入部してから勝ったところを一度も見たことがないので、来年はアウェーですがリベンジで必ず勝って、見たことない景色をみんなに見てほしいなと強く思います。

石山晴茄副将(スポ4=茨城・つくば秀英)

――馬場(学生章典馬場馬術課目)の演技はいかがでしたか

試合開始とともに出番だったので10時40分開始っていうのに合わせて準備をしていたのですが、ちょっといろいろバタバタありまして。10時40分まではいい感じに馬が仕上がっていて、そこから運営がうまくいかない間にちょっと馬が崩れてしまった部分がありました。10時40分から自分が出場するまでの間の時間帯でもっとできることがあったなと思います。そこで馬の集中力が切れてどんどんよくない状態になっていってしまったところは自分の調整ミスだったと思っています。2年間は総合、2年間は馬場、という形で4年間ずっとコンビを組んできた馬だったので、ベストな内容の演技ができなかったのは本当に悔しいです。

――中障害(飛越競技)については

待機馬場まではとても状態が悪くて、すごく不安が残っている状態で出番までの時間を待っていたのですが、ちょうど自分の出番の前に満点の人が出て拍手が起きたことで、馬にスイッチが入って状態が良くなったんです。なので今日のジョルジオ(・アルマーニ)なら減点ゼロで帰ってくることができるかなと思ったのですが、最後の一個は自分のまた詰めの甘さというか。自分のミスだったので本当に悔しいです。この試合は絶対に勝とうと思っていたので、まず去年は残れていたジャンプオフに残れなかったことが一番悔しいです。

――早稲田の結果については

完敗でした。自分がいた四年間はずっと完敗だったので、4年間ずっと早慶戦には出させていただいていた中、一度も貢献できなかったっていうのは本当に悔しい思いでいっぱいです。それほど慶大のほうが強かったという(ことで)、慶大はすごいなという風には思いました。

――副将としての一年間を振り返っていかがですか

この部活に本当に誇りをもってやってきていると自信を持って言えるくらい、副将としての1年間だけではなく、4年間そういう気持ちでやってきました。やりきれなかった部分ももちろんたくさんあり、部員のみんなにしては物足りないところもあったと思いますが、しっかり副将としての仕事は自分の中ではやりきれたかなと思います。

――この四年間を振り返っていかがですか

競技としては1年生の時が一番輝いていたかなと思っているので、だんだん自分は輝けなくなってきてしまったのはちょっと悔いの残るところです。四年間の馬術部員としての面でいうと、副将としてというのもありますが、誇りをもって頑張ってこられたのが、自分にとって一番大きな成長でもあり、得られたことでもあったかなと思います。早稲田大学馬術部を誇りに思ってやってこられたことで、私にとって何か絶対に成長したところがあるだろうなと思っていて。そういう信念を揺るがさずに四年間やってこられたのは本当によかったです。

――後輩へのメッセージをお願いします

コンビを組んで関東・全学に出なかった馬を含め、たくさんのいろいろな馬にお世話になって成長させてきてもらったと思います。自分が輝かせられなかった分、その馬たちを幸せに。あともっと試合の場では輝かせてほしいです。

木村澪(国教4=神奈川・サンモールインターナショナルスクール)

――演技を振り返っていかがですか

今週の練習では結構うまくいっていたのであまり不安はなく迎えられました。雨という状況は昨日の準備の段階から障害ではあったのですが、馬的には出し切れたかなと、今までの中でベストの演技ができたかなと思います。

――寒さや雨の影響はありましたか

私の乗った稲俊はあまり場所や天候で変わらない馬で、今日は天候の影響はあまりなかったです。

――この試合はどういう気持ちで挑まれましたか

最後の試合であり四年間かわいがっていた稲俊との最後に組める経路だったので、やり直しはできないというのは頭にずっとよぎっていました。悔しい気持ちよりもやり切った気持ちの方が大きいです。

――この四年間を振り返っていかがですか

私は前から馬に乗っていてちょっと経験はありましたが、このように毎日馬に乗って競技を目指すことは初めてだったので目標をもって頑張ることができてよかったなと思います。でも馬に乗るだけではなくて、馬の健康管理や部活の運営に携われたことにはすごくやりがいを感じることができました。

――主務としての一年間についてはいかがですか

常に何かやらなきゃいけないことがあり大変でしたが、馬のためと思えばやることができました。同期や後輩にも、先輩・OBの方々にもいろいろ助けてもらってやりきり、とても楽しめる役職でした。

――後輩へのメッセージをお願いします

試合を頑張って選手として頑張るのももちろん大事ですが、馬が第一なので、馬を第一に考えて普段の活動をしていってもらいたいです。

浦田泰貴(人4=東京・豊多摩)

――早慶戦のご自身の試合について、いかがでしたか

競技で最後に人間が大きなミスをしてしまったのは悔やまれますが、馬はよく動いてくれたので今はただ馬と準備を手伝ってくれた人々への感謝の気持ちでいっぱいです。

――今、4年間を振り返って何を感じられますか

振り返ってみると、ああしておけばよかった、こうしておけば何か違ったんじゃないかと思うことばかりです。しかし、より良いものを求めようとすると必ず後悔はしてしまうものだと私は思います。なので、満足はせずとも残された現在の実情を受け止めて、今後に繋げられるようにしたいと考えています。

――後輩の皆さんへのメッセージをお願いします

正直に言って今後の後輩たちの部活が順風満帆に行くとは思っていません。困難や障害は必ず直面すると思っています。それは私達最上級学年の責任でもあるので、そうなった時に何かしらの手段で支えることができたらと思います。応援しています。頑張って下さい。

下愛理彩(社4=東京・早実)

――早慶戦のご自身の試合について、いかがでしたか

全日本学生大会の決勝の時が一番エーデルの状態が良かったので、その時と比べると今回は雨でコンディションも悪く、もっと上を目指せたはずなのに最大限の力を発揮できず、悔しかったです。

――今、4年間を振り返って何を感じられますか

色々な人に助けられてやってこられた4年間だと思います。たくさんの方に応援され、最後に全日本学生大会で10位に入賞できて、「やりきった」と思えました。

――後輩の皆さんへのメッセージをお願いします

1人1人の作業や乗馬自体が、部活や馬へ少しずつでも影響を与えていると思うので、ぜひ後輩の皆さんは正義感を持って部活に取り組み、背中で語れる先輩となってほしいです。そうすれば全員が同じベクトルを向いたチームになると思います!

萬田雛乃(人4=東京・東学大付)

――演技を振り返っていかがですか

私は稲彩でL1課目に出ましたが、このコンビで前回の対抗戦の早学戦(全早稲田対全学習院定期戦)でも組んでいて、その時に結構いい結果が出ていたため、「いい結果を出さなきゃ」という過度な緊張をしてしまいました。ですが、OGさんに(馬の)下乗りをしていただいたり、後輩にウォーミングアップをしてもらったりして、(得点率)60パーセントに乗ることができたので、若干悔しい結果ではありますが、少しほっとした部分もあります。

――雨の中での演技だったと思いますが、その点についてはいかがですか

雨でコンディションが良くないというのはあったのと、雨が降っていて自分のメンタルが削られていく感じがして、あまりベストのコンディションではなかったと思います。

――馬術を始められたのは大学からですか

そうです。

――この四年間を振り返っていかがですか

私はこれまでの人生で四年間何かを毎日全力で取り組んだことはなかったので、そういった点ではすごくいい経験ができて。周囲の人や馬のおかげでいい経験ができたと思っています。

――後輩に何かメッセージはありますか

まずは馬を愛して周りへの感謝を忘れずに、自分が馬と人に支えられている中で活動しているということを意識しながら、どんどんいい結果を残していってほしいと思っております。

吉田優海(人4=岡山朝日)

――小障害はいかがでしたか

実は当初、1週間前までは自分の馬で予定されていて急遽ほかの馬に変更になったので、すごく焦っていて、「当たって砕けろ」という気持ちで臨みました。馬がすごくいい馬で期待されている馬だったので、完璧に走ってとりあえずジャンプオフに持ち込めればいいなという意気込みでした。

――ジャンプオフについては

小障害で私の弱点は馬に乗って待つことと言われました。同期のコーチからは「とりあえず楽しんできて」って言われたので「とりあえず馬も人も楽しんで向かおう」というのがジャンプオフでの意気込みです。

――ご自身の結果についてはいかがでしたか

楽しんでは出られたのですが、最後に失敗して汚名を着せてしまったので少し残念で悔しいです。馬に対して申し訳ないという気持ちがあります。小障害はちゃんと回ってこられてとりあえずよかったなと思います。

――四年間を振り返っていかがですか

留学に行っていたこともあり四年間はあまりちゃんとできていなかったので、最後早慶戦にも出させていただいて、一応結果も1ポイント先取することができて、集大成としてはよかったです。

――後輩へのメッセージをお願いします

つらいことがあっても、楽しいことをひとつひとつ見つけて、馬を大切にしていってほしいと思います。来年の早慶戦は頑張ってください(笑)。

武井梧右(スポ3=東京・東農大一)

――ご自身の試合の振り返りをお願いします

僕はきのう二競技に出させていただいたのですが、両方とも早稲田でトップを争うようなうまい馬でやらせていただきました。本当は優勝するのが当たり前くらいの馬だったのですが、そこで僕の実力の足りない部分が出てしまって3位とか2位とか微妙な結果に終わってしまったので、僕としては悔しい結果になってしまいました。

――具体的に足りない部分とはどのような点だと思いますか

やっぱりいい馬だとその分難しいところがあると思うのですが、そういう部分に僕がしっかり実力を伸ばして馬の力をしっかり使えるように乗りこなす能力があがっていければ、今後結果としても付いてくるのではないかと考えています。

――今回の早慶戦を通してチーム全体としてはいかがでしたか

現役の学生が出る試合は四競技あるのですが、それの1位を早稲田が全部取れずに、慶應に取られてしまったのがすごく悔しいです。負けてしまったのは当然悔しいですけど、全競技で優勝を取られたというのは結構悔しいです。

――今後どのようなチームにしていきたいですか

今、長期的な計画を立てていて、下の(学年の)子であっても実力のある子はしっかり実力を伸ばして上の(学年の)人とも戦えるような環境作りを目指していければ、部としても切磋琢磨できる環境はどんどん生まれてくると思うので、そういう部活作りをしていきたいと思っています。