ノルウェー代表の19歳、アーリング・ハーランドは、今季のレッドブル・ザルツブルク(オーストリア)で最も注目を集める存在…

 ノルウェー代表の19歳、アーリング・ハーランドは、今季のレッドブル・ザルツブルク(オーストリア)で最も注目を集める存在だ。



多くのクラブが獲得を目指していると言われる、ザルツブルクのハーランド

 欧州チャンピオンズリーグ(CL)では、バイエルンのロベルト・レバンドフスキ、マンチェスター・シティのラヒーム・スターリングら名だたるアタッカーを差し置いて、4試合7得点という活躍で得点王ランキングのトップに立っている。

 ザルツブルクの同組には、ベルギーのゲンク、イタリアのナポリ、そして昨年の覇者イングランドのリバプールがいる。強豪揃いのグループでこれだけの成績を残したことで、入団からわずか10カ月の間に推定市場価格はそれまでの6倍の3000万ユーロ(約36億円)にまで跳ね上がった。そして、バイエルンやマンチェスター・ユナイテッドが獲得を狙っていると噂されている。

 このキャリアの急上昇には、自身の才能や能力はもちろんだが、さまざまな”偶然”がタイミング良く重なったことにも支えられている。

 幸運だったのは、なによりも今季のザルツブルクが、レッドブルが2005-06シーズンにクラブの経営に乗り出してから、欧州CLに初出場を果たしたことだろう。これはリバプールとトットナムのプレミアリーグ勢が昨シーズンのCL決勝に勝ち進んだことで、リーグ4位以内が今季のCL本戦へ行く切符を確保。これにより、UEFAの5年評価ランキングで11位だったオーストリアのリーグ戦を優勝したザルツブルクに出場権が回ってきたのだ。

 これまで国内リーグ戦で優勝しても、CL予選に回り涙を飲んできたザルツブルクだけに、昨季終了時点ですでにCL本大会への出場権を得られたことは、望外の喜びだった。

 仮にヨーロッパリーグ(EL)や国内リーグで同じ数の得点を挙げたとしても、ここまで爆発的に注目を集め、市場価値が上昇していたとは考えにくい。CLという世界中の注目が集まる「ショーケース」にあがれたのは、幸運のひとつだ。

 さらに、これまで2年連続で国内リーグ得点王だった、モアネス・ダブールがスペインのセビージャに移籍したのも、プラスに作用した。クラブ内部の詳細な計画までは知る由もないが、ハーランドは昨季終盤の5月に行われた2位LASKとの対戦で先発し、先制点を挙げたことで、今季の主力として活躍できるメドは立っていたのかもしれない。

 それに加えて、今季からアメリカ人のジェシー・マーシュが監督に就任したのも大きい。イングランドのリーズに生まれ、北欧ノルウェーで育ったハーランドにとって、英語でコミュニケーションが取れるのは大きなメリットだ。

 MLSやアメリカ代表としてプレーした経験もあるマーシュ監督は、アメリカ代表アシスタントコーチやアメリカ国内のチームで活動し、15年~18年までニューヨーク・レッドブルの監督を務めた。この時の仕事が評価され、同じレッドブル傘下のライプツィヒのアシスタントコーチとして招聘され、今季からザルツブルクの監督に就任した経緯がある。

 マーシュ監督は、「選手と個人的に関係を築いていくタイプだ」と自身の監督としてのアプローチを説明しており、このように個々の選手に気を配れる監督の存在は、若いチームにポジティブに作用している。

 今のザルツブルクは、平均年齢が23.8歳。日本代表では若手の部類に入る24歳の南野拓実も、フィールドプレーヤーとしては5番目の年長者となる若いチームだ。今季も10代の選手たちを登用しながら勝利を重ね続けていられるのは、レッドブル・グループの長期的な人事のプランニングが功を奏している現れでもある。

 そのマーシュ監督がハーランドを評価するときに、真っ先に挙げるのは”性格面”だ。

「ハーランドに関して真っ先に思い浮かぶのは、彼が真のプロフェッショナルであることだね。彼と一緒に仕事するのは、楽しいよ。トレーニングでは、常にエネルギーに満ちあふれている。毎日、エネルギッシュにトレーニングに精を出す選手は、私も大好きだよ」と、選手の人間性を重視するマーシュ監督らしい評価を『DAZN』のインタビューのなかでしている。

 では、プレー面ではどうだろう。ハーランドは「僕は、力強い頑強なタイプのストライカーだね。点を取るのが好きなんだ」と自己分析をする。また、昨年夏までモルデ(ノルウェー)でハーランドを指導していた現マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)のオーレ・グンナー・スールシャール監督は、「彼は確実にトップクラスのストライカーになる。ロメル・ルカクのようなタイプを思い出させるね」と語っていた。

 ここから、将来のマンチェスター・ユナイテッド行きを推測する向きもあるが、その可能性は低そうだ。父親のアルフ・イング・ハーランドが、マンチェスター・シティで主将を務めていた2000-01シーズンに、ユナイテッドのロイ・キーンに故意にケガをさせられたことで(キーン自身が自伝のなかで意図的な接触だったと書いている)、引退せざるを得なかった因縁がある。

 マンチェスター・ユナイテッド行きの理由があるとすればスールシャール監督だが、そのスールシャール監督自身も常に監督交代が噂されており、どれだけ長く留まれるのか未知数だ。

 ハーランド自身も、ザルツブルクでチームとしてプレーする気持ちよさを実感している。「ザルツブルクは、ピッチ上では、選手からスタッフまで全員がお互いを信じ合っている。僕自身が彼らを信じ、彼らも僕を信じてくれていると感じられれば、全力を尽くすのは簡単なことさ」と話す。

 その一方で、将来的なキャリアアップも忘れない。「僕はプレッシャーが大好きなんだ。CLでハットトリック(第1節ゲンク戦)を決めて、誰もが僕の名前を覚えたことだろう」と強心臓ぶりも見せている。

 マーシュ監督も「間違いなく、彼は世界中のマーケットに名を知らしめた」とハーランドの才能に疑いの余地を挟まない。その一方で、家族を含めて彼の周囲の人びとが理性的な人間であることも理解し、適切なサポートを約束している。

「彼にはしっかりとした家族がついているし、(元プロ選手だった)父親もいる。彼には、地に足をつけ、しっかりとした土台がある。だから、今の(ブームのような)状況で、どう振る舞うべきなのかを心得ている。とはいえ、状況も変化してしまった。我々は、まだ若い彼がこの状況にうまく対応し、さらに成長できるようにサポートしていくつもりだ」(マーシュ監督)

 11月の代表ウィーク、ノルウェー代表に合流したものの、ヒザのケガを負ってチームに戻ったハーランド。11月23日の試合は欠場し、チームも引き分けと不在の影響を感じさせた。すでにザルツブルクからの移籍は既定路線と見られているが、それが”いつ”、”どこ”に行くのか、まだまだ憶測の域を出ない。

 バイエルンやマンチェスター・ユナイテッドの2チームのほかにも、ナポリ、ドルトムント、ユベントスといった名前が次々と出てくるなか、最有力はライプツィヒと見られている。今後、移籍市場をにぎわすひとりとなるのは確実だ。1億ユーロ(120億円)とも言われる契約解除金(移籍金)を支払えるクラブは限られているが……。