ややもすると、力強いストレートだけに目を奪われがちの寺島の投球だが、巧みに変化球を織り交ぜる緩急をつけた配球も魅力。そんな左腕の力を十二分に引き出したのが、バッテリーを組む九鬼隆平(秀岳館)だった。■結成間もないバッテリーに生まれた信頼、快…

ややもすると、力強いストレートだけに目を奪われがちの寺島の投球だが、巧みに変化球を織り交ぜる緩急をつけた配球も魅力。そんな左腕の力を十二分に引き出したのが、バッテリーを組む九鬼隆平(秀岳館)だった。

■結成間もないバッテリーに生まれた信頼、快投寺島は「基本(リードを)任せています」

 台湾・台中市で開催中の第11回BFA U-18アジア選手権。2日に行われたセミファイナルラウンド第1戦で、日本は寺島成輝(履正社)と早川隆久(木更津総合)がノーヒットノーランの継投を見せ、中国を8-0で破った。中でも光ったのは、7回を無安打13奪三振1四球無失点という準完全投球で、中国打線を圧倒した寺島のピッチング。ややもすると、力強いストレートだけに目を奪われがちの寺島の投球だが、巧みに変化球を織り交ぜる緩急をつけた配球も魅力で、そんな左腕の力を十二分に引き出したのが、バッテリーを組む九鬼隆平(秀岳館)だった。

 1回先頭打者から4者連続三振に仕留めた。球にキレがあるため、球速以上に速く見える寺島のストレートに対し、中国打線はまったくタイミングがあっていなかった。振り遅れるばかりか手も出ない。ミットを構える九鬼は「成輝の一番いいボールは真っ直ぐだと思う。中国も合っていなかった」と積極的にリードした。中盤からは変化球を投入。「真っ直ぐで勝負していっても打たれることもあるので、早い回はとりあえず真っ直ぐでどんどん押して、その相手の対応を見てからいろいろ考えようと言っています」という狙い通り、緩急でタイミングを狂わされた中国は手も足も出ず。寺島の快投劇につながった。

 招集から練習期間を含めても、結成わずか10日ほどの即席バッテリーだ。それでも寺島は「私生活からピッチング、野球のことも話しやすい。基本(リードを)任せています」と全面的な信頼を置く。九鬼自身「コミュニケーションを取ることを大切にしています」と積極的に話し掛け、「野球のことを話すのも大事だけど、彼の野球の時だけじゃなくて私生活の性格を把握することも大事」と、あっという間に打ち解けた。何よりも、日本全国の高校を代表する投手たちのボールを受けられるのがうれしい。「本当に素晴らしいボールが来る。(短期間のチームだと)キャッチャーは難しいって言われることもあるんですけど、ああいうピッチャーを受けると、本当に楽しいですね」と目を輝かせた。

■4回には左翼ポール際に先制ホームラン「あそこから勢いづいた」と指揮官

 実はこの日、中国の先発を務めた左腕サンも、想像以上の投球を見せた。1回に内野安打で出塁、2回と3回には四球で出塁したが、それでも三塁まで到達できず。小枝守監督は「できれば(打順が)一廻りの間に点を取りたかったんですけど取れなかった」と振り返ったが、漂い始めた嫌なムードを払拭したのが、4回先頭で打席に立った九鬼の先制ホームランだった。打席に入ると、初球を迷わず振った。「センターから右中間(への打球)を狙っていたが、インコースに来たので、振り抜いたらホームランになりました」という打球は、照明の薄暗い球場で左翼ポール付近に、文字通り消えていった。

 先制点を奪った日本は、佐藤勇基(中京大中京)がスクイズで1点を追加すると、5回にも林中勇輝(敦賀気比)の左中間を破る3点三塁打などで、結局8点を奪うことに成功。小枝監督は「九鬼が1本打ってくれて、そこから勢いづいたかなって感じは否めないですね」と、リードはもちろんバットでも大貢献した九鬼を褒めた。

 2大会ぶりの優勝を目指す日本は、3日に韓国と対戦。もし負けたとしても決勝戦に進む可能性は残されるが、そこは他力本願にはなりたくない。「(打者のタイミングが合ってきた時)どうかわすかじゃなくて、どう攻めていけるかっていうのが大事だと思います」という積極的な姿勢で投手陣を盛り立てる九鬼が、残り2戦でどんなリードを見せるか。ホームには頼れる女房役がどっしりと構えている。