ときに、もっと評価されていいと思う選手がいる。サンフレッチェ広島の柏好文も、そのひとりだろう。 今シーズン、ここまでJ…
ときに、もっと評価されていいと思う選手がいる。サンフレッチェ広島の柏好文も、そのひとりだろう。
今シーズン、ここまでJ1で8得点。チーム内における最多得点である。特筆すべきは、彼がFWでもなければトップ下でもなく、ウイングバックだということだ。

積極的な攻撃参加を見せるウイングバックの柏好文
結果こそスコアレスドローに終わったが、11月23日に行なわれたJ1第32節の鹿島アントラーズ戦でも、柏はたびたびサイドから好機を作り出した。
前半30分には、逆サイドから展開されたボールに対して、鹿島の右SBを務める内田篤人の裏に走り込むとクロスを供給。前半42分には巧みなパスワークでマークを外すと、ペナルティエリア内の森島司へと鋭いパスを通した。得意のドリブルで自ら仕掛けるだけでなく、周囲を使うプレーにも磨きがかかっている。
「(川辺)駿やモリシ(森島司)といった若い選手たちが試合に絡んでくるようになったなかで、チームとしてボールを持てるようになってきているのは大きいと思う。そこには、自分たちが積み重ねて確立してきたものがある。
左サイドに関していえば、自分とモリシ、そこに(佐々木)翔やゴロー(稲垣祥)が加わって、たとえ相手に対策を練られたとしても、しつこくパスをつないでSBの裏のスペースに侵入していくことが何回もできていたと思う。しかもその崩しが、どこが相手であってもできる。練習からやってきたものが自信を持って出せているからこそ、相手の隙を突くことができていると思います」
得点数に表われているように、柏の真骨頂は鹿島が主導権を握りつつあった後半に見られた。オフサイドにはなったが、アディショナルタイムには速攻と見るや自陣から駆け上がると、ドウグラス・ヴィエイラのパスを受けてシュートしたのである。
「どちらも得点を獲りたいという思いから、全体的に間延びしていたので、相手がつきにくいところは斜めに走ることだと思った。結果的にオフサイドになって悔しいですけど、(相手ゴール前に)侵入できたところまではよかったので、これを続けていくことが大事だと思う。オフサイドになったシーン以外にもチャンスは作れていましたからね」
ただドリブルで相手を切り裂くだけでなく、フィニッシュにも顔を出す。しかも、試合終盤になっても運動量が落ちることはない。これこそが、柏の強みでもある。
「いつも言うんですけど、調子が悪いとかいいとかがないんですよね。いつも普通。そういうプレーヤーだと自分としては思っている。波がなく、常にハイパフォーマンスを出し続けられることが自分の強みです。
年齢的にも32歳になって、普通ならば下がってくるところで、さらに成長しているなって感じさせるプレーをしたい。この年齢でも成長できるということを証明したいとも思っているんです。今シーズンは数字でもそれを証明できているので、自信を持ってやっていければいいかなって」
自身も語るように、32歳になった。ただ、本人の言葉にもあるように、衰えるどころか向上を実感している。
「(フィジカルコーチの)池田誠剛さんからも、普通は30歳を過ぎると下降していくところ、自分はそのピークに達しているにもかかわらずコンディションが上がってきているって、声をかけてもらったんですよね」
そんな柏に対して、城福浩監督からはこんな要求があったという。
「昨季は4バックでしたけど、今年は(3−4−2−1になって)ウイングバックとしてお前が強みを出せる位置だと言われました。得点も含めて期待しているとも。今シーズンが開幕して間もないころ、『ふたケタ得点、いけるだろう』と言われていたんです」
チームは勝利から3試合遠ざかっているが、驚異的な数字をマークするウイングバックにかかる期待は大きい。
「今日もそうですけど、引き分けではなく勝ちに持っていかないといけない。チャンスを作れてきているので、チームとして自信を持っていいと思う。ここからさらに上に行くには、どんなに悪い試合でも勝ち切ることが大事になってくる。
決め切る、仕留めるというところは、セットプレー1発で勝つというのでもいい。経験がある、ないに関係なく、ピッチに立っている選手たちがそれを感じつつ、もっとうまく試合を運ぶことができれば、相手にとってもっとやっかいなチームになれると思います」
32歳のベテランらしくチームについて語れば、個については思いがほとばしる。
「結果を残してパフォーマンスがよければ、いつか代表に呼ばれるものだと思っている。それには続けていくしかないですし、現状、声がかからないということは、まだまだ足りないんだと。
もっともっと結果を残していけば、きっと、いつかは無視できない存在になる。それくらいの向上心を持ってやっていきたい。国内には32歳になってもこれだけできる選手がいるってところを見せたいんですよね」
選ばれるか、選ばれないか、ではない。そう思い続けることが、心の火を燃やし続ける秘訣であり、向上心につながってもいる。
32歳にしてキャリアハイの結果を残すウイングバック--。今シーズンは残すところ2試合。そして、指揮官との約束の数字まで、あとふたつである。