「才能があり、謙虚で、頭もいい。レアル・マドリードとセレソン(ブラジル代表)、両方の未来を担う選手だ」 クラブでも代表でもチームメイトであるMFカゼミーロの言葉だ。ブラジル代表でもデビューを果たしたロドリゴ・ゴエス ロドリゴ・ゴエス、18歳…

「才能があり、謙虚で、頭もいい。レアル・マドリードとセレソン(ブラジル代表)、両方の未来を担う選手だ」

 クラブでも代表でもチームメイトであるMFカゼミーロの言葉だ。



ブラジル代表でもデビューを果たしたロドリゴ・ゴエス

 ロドリゴ・ゴエス、18歳。名門サントスの下部組織育ちで、ネイマールに憧れ、少年時代はプレースタイルから髪型まですべて真似していた。決して体格に恵まれているわけではないが、傑出したスピードと高度なテクニックを持ち、常にゴールに直結するプレーを選択する。右利きだが左足も同様に使えるウィンガーで、決定力も高い。

 6月中旬、ロドリゴは日本代表FW久保建英とほぼ同時期にレアル・マドリードへ入団している。久保は移籍金なしでの入団で、プレシーズン期間中に懸命にアピールしたものの、トップチームには残れず、8月下旬、スペイン1部マジョルカへ期限付き移籍した。一方、ロドリゴの移籍金は4500万ユーロ(約54億円)。ジネディーヌ・ジダン監督の判断でクラブに残り、カスティージャ(レアル・マドリードB)を経て、9月、トップチームに昇格した。

 9月25日、ラ・リーガ(スペインリーグ)のオサスナ戦の後半26分にデビューを果たすと、その直後、左サイドで斜め後ろからのロングパスを見事にコントロールしてすぐに前を向き、マーカーを抜き去って右足でゴールを決めた。

 その後、10月30日のレガネス戦で初めて先発出場すると、右からの折り返しを左足ボレーで決めている。圧巻だったのは、11月のチャンピオンズリーグ(CL)、ガラタサライ(トルコ)戦だった。ロドリゴは右ウイングとして先発し、日本代表の左SB長友佑都と対峙した。

 前半4分、左後方からのロングパスを受けると、驚異的な加速で内側へ切れ込んで長友ら2人を外し、左足でファーサイドへ蹴り込んだ。その3分後には、左からのクロスを頭で決め、後半のアディショナル・タイムには巧みにゴール前へ走り込んでスルーパスを引き出し、GKのタイミングを外して右足で流し込んだ。

 CLにおける18歳と301日でのハットトリック達成は、史上2番目の若さ。左足、頭、右足を用いた「完全ハットトリック」達成は史上最年少だと、世界中のファンを驚嘆させた。

 さらに今回、ロドリゴはセレソンに初招集され、11月15日のアルゼンチン戦と19日の韓国戦でプレーした。それぞれ、後半26分からと後半43分からの出場だった。

 ただ、アルゼンチン戦はセレソンが劣勢で、パスがほとんど回ってこず、一度もボールを持って前を向けなかった。韓国戦は出場時間が短すぎた。ブラジルのメディアは、「今が伸び盛りのロドリゴになぜもっと時間を与えなかったのか」と、チッチ監督を痛烈に批判した。

 ロドリゴは2001年1月9日、サンパウロ郊外のオザスコで生まれた。父親は、国内の中堅クラブで右SBとしてプレーしたプロ選手。歩けるようになると、すぐに父からフットボールの手ほどきを受けた。6歳で地元のアマチュアクラブの下部組織に入り、8歳でサンパウロFCのフットサルチームに入団。10歳の時にサントス関係者の目に留まり、勧誘を受けた。

 当時、サントスではネイマールが大ブレイクしており、ブラジル中の少年が彼に憧れていた。ロドリゴも例外ではなく、「サントスに入ったらネイマールに会えるかもしれない」と考えてクラブを移った。フットサルと並行してU-11の練習に参加した。

 以来、常に年齢より上のカテゴリーに在籍して主力を張った。2017年、16歳でU-17サンパウロ州選手権に出場し、22試合で24得点。U-20を飛び越してトップチームへ昇格すると、ネイマールより3カ月早い16歳10カ月でデビューした。初ゴールは、2018年3月のコパ・リベルタドーレスのナシオナル(ウルグアイ)戦。当時17歳2カ月で、この大会におけるブラジル人選手の最年少得点記録を塗り替えた。

 以後は欧州のビッグクラブからオファーが殺到。最終的にレアル・マドリードとバルセロナの一騎打ちとなったが、昨年6月、ロドリゴが18歳になる今年1月以降にレアル・マドリードへ移籍するという契約を結んだ。

 昨年はサントスでレギュラーとなり、ブラジルリーグで35試合に出場して8得点3アシスト。今年の序盤は4試合に出場して1得点2アシストで、6月にスペインへ渡った。

 家族と一緒に住むことで、初めての外国での生活にも容易に馴染んだ。プレシーズン期間中にチーム戦術を理解し、チームメイトとの連係を構築しながら能力をアピール。徐々にジダン監督の信頼を勝ち取っていった。

 11月中旬までの2カ月間に、ラ・リーガで4試合に出場して2得点、CLでは2試合で3得点。計5得点は、エースストライカーであるフランス代表カリム・ベンゼマの11得点に次ぐチーム2番目だ。

 さらに、驚愕すべきデータがある。途中出場が多かったためプレー時間が短く、90分当たりの平均得点に換算すると1.36。これは、現時点のラ・リーガ得点王であるベンゼマの1.02を大きく上回る。

 レアル・マドリードでは、左右どちらかのウイングとしてプレーする。ベルギー代表エデン・アザール、スペイン代表のルーカス・バスケスとイスコ、1歳年上のブラジル代表ヴィニシウス・ジュニオールら強力なライバルがいるが、レギュラー獲得まであとひと息だ。

 また、セレソンでは2列目の両サイドで起用されており、そこには右サイドにはガブリエル・ジェズス(マンチェスター・シティ)、リシャルリソン(エバートン)ら、左サイドにはネイマール(パリ・サンジェルマン)らがいる。

 今後、レアル・マドリードでもセレソンでも、さらに多くの出場機会を与えられるはずだ。その一方で、対戦相手から徹底的に研究され、マークが格段に厳しくなり、暴力的なファウルを受けることもあるだろう。これらの事態に賢明に対処し、結果を出し続けることができるかどうか。また、一時的な成功に奢ることなく、謙虚に努力を積み重ねることができるかどうか。その先に、世界トップクラスのアタッカーへの道が開けてくる。

 ロドリゴにとって、ここからが本当の勝負となる。