「もし(日本が)勝ち切っても、すごい驚きではなかったです」

 試合後、日本代表の岩渕聡監督から発せられた言葉は、決して負け惜しみではなく、本当に勝ってもおかしくなかったことを的確に表現していた--。



フランスに惜敗後に会見を行なった。左から、マクラクラン勉、内山靖嵩、岩渕監督、西岡良仁

 男子国別対抗戦デビスカップ・ファイナルズ(決勝ラウンド)、大会2日目、グループA・ラウンドロビン初戦「日本 vs. フランス」で、日本(ITF国別ランキング17位、以下同)は、フランス(1位)に1勝2敗で惜敗した。

 11月18日からスペイン・マドリードで開幕したデビスカップは、今回から大きくフォーマットが改められ、世界トップ18カ国が、1週間1都市に集結し、いわゆる”ワールドカップ方式”が行なわれている。

 まず、6グループに分けられてラウンドロビン(総当たり戦)が行なわれるが、日本はグループAに入り、フランスとセルビア(8位)と同組になり厳しい戦いが予想された。

 フランスは、過去10回優勝のデビスカップ強豪国で、昨年は準優勝をしている。

 第1試合で、内山靖崇(ATPランキング81位、11月18日づけ/以下同)は、ジョー=ウィルフリード・ツォンガ(29位)に、2-6、1-6で敗れた。27歳の内山は、今季初めてトップ100を突破し、日本チームの第2シングルスに抜擢されたが勝利には至らなかった。

 日本代表選手の中でもトップクラスの冷静な自己分析力で、シングルスの敗戦を振り返った。

「シングルスに関しては、今シーズンの後半すごく調子がよくて、今日の朝のウォームアップでも、自分でもちょっとびっくりするくらい感覚がよかった。勝つイメージを持って試合に入りましたが、デッドラバー(勝負が決した後の試合)ではないシングルスは、今日が初めてでした。コートの中に入ってから自分で何かギクシャクしてしまった部分があったかな。いいポイントもありましたけど、全体をとおして単発になってしまった。

 ただ、今の自分のランキングになって、ああいった選手(ツォンガのようなトップ選手)に勝っていかないと、さらにランキングを上げることができないので、そういう意味でいい経験になったと思います」

 第2試合では、西岡良仁(73位)が、ガエル・モンフィス(10位)を7-5、6-2で破るビッグアップセットを演じてみせた。

「もともとランキングや経験の差はあるもので、10回やって10回勝てる、(自分はまだ)そういうレベルではない。少ないチャンスが、誰にでもあって、そういうものを取りきれるがどうかです」

 これは、西岡がここ1年ツアーに定着して、自分より上の選手を倒すために学んだことだという。モンフィスは、ツアー最終戦・ATPファイナルズの補欠選手として、ロンドンで待機していたため、デビスカップへの調整は明らかに遅れていたが、それも含めて勝負であり、西岡自身の教訓を活かした会心のトップ10選手からの勝利だった。

 1勝1敗になって、第3試合のダブルスを制した方が勝利国になるという重要な局面で、日仏双方がすばらしいコンビネーションを見せ、2時間40分におよんだ激戦の末、内山(D431位)/マクラクラン勉(D44位)は、ピエール=ユーグ・エルベール(D5位)/ニコラ・マユ(D3位)に、7-6、4-6、5-7で惜敗した。

「ダブルスはビッグバトルだった。両チーム共にいいプレーをした。日本選手が100%出し切ったことに敬意を表したい」

 フランス代表のセバスチャン・グロージャン監督は、このように日本ペアをリスペクトすると共に、フランスペアの劇的な勝利も労った。

「ニコラとピエールのことを誇りに思う。ロンドンから着いたばかりで簡単なことではなかったけど、すべてを出し切ってくれた」

 実は、エルベール/マユ組は、日本対フランス戦のわずか2日前に、ATPファイナルズの決勝を戦って初優勝を成し遂げていたため、ロンドンからマドリードへ移動してきたばかりだった。

 一方、今持てる力を単複で出し切った内山は、ベンチで首を垂れてしばらく動くことができなかった。それを並んで座っていた岩渕監督とマクラクランが気遣う場面もあった。

「よっしー(西岡)が勝って、シングルスの負けを挽回できるチャンスをもらえた中で、何とか取り返したい気持ちだった。もちろん相手も強いので簡単じゃないのはわかっていたんですけど、本当に紙一重のところまでいって勝ちきれなかった自分の不甲斐なさ、自分が2敗してしまった申し訳なさ、試合が終わった後に悔しさが込み上げた」(内山)

 これまで日本は、フランスに5戦全敗していたが、今回初勝利まであと一歩届かなかった。だが、岩渕監督には、日本がフランスにただ善戦するだけで終わらないという手ごたえがあった。

「このグループで日本がチャレンジャーになるのは間違いなかった。チームの中では、ただ挑戦をして全力を出して、それで満足ということではなかった。今のメンバーは、今シーズンいい成績を残して、トップの選手にも勝った実績もあるので、今日みたいな展開に持ち込める予想は、ある程度期待も含めてできていました」

 負けはしたものの、日本チームの進化は確実に見られた。ましてや日本のエースである錦織圭抜きで収穫があったのは大きい。各選手によるツアー個人戦での活躍があってのことで、西岡の勝利はその典型だった。マクラクランは、ダブルスのスペシャリストとしてツアーに定着して活躍している力を存分に発揮していた。

 そして、今回特にフランス戦で輝きを放っていたのが内山で、確かに結果は単複2敗ではあったが、内山の2敗は責められるべきものではなく、むしろこの経験が、今後の内山の成長を促すものであると見るべきではないだろうか。

 いかにツアーレベルに定着することが、個々の選手の実力を上げるのに大事なのかを示した一戦になった。今後も日本チームのさらなる進化のキーポイントになっていくのは間違いない。

 11月20日には、ラウンドロビン第2戦で、日本は、ノバク・ジョコビッチ(2位)を擁するセルビアと対戦する。内山がダブルスの試合中に右手の指を痛め、痛み止め薬を飲む場面があったため、もしかしたら日本は2シングルスを変更してくるかもしれない。

 一方、セルビアは、前週にATPファイナルズを戦ったジョコビッチを温存してくる可能性もなくはなく、もしそうなった場合でも、シングルスで34位と40位の選手が相手になるので、日本としては決して簡単な試合にはならないだろう。

 今一度、成長中の日本代表の力が試される。