山崎悠麻(WH2/車いす)が、バドミントンを本格的に再開して約5年になる。ジュニア時代、全国大会にも出場したが、中3で「やりきった」とプレーを辞めた。それからの10年はたくさんの出来事があった。交通事故、就職、結婚、出産――。人生の悲喜を積み重ね、再びバドミントンに向き合い、「東京パラリンピックではダブルスで優勝したい」と語る山崎の思いに迫る。

※本記事は2018年2月に公開したものです。基礎を築いたジュニア時代

 ジュニア時代、厳しいチームで技術をしっかりつけてもらったので、いまの私があります。でも当時、自分でバドミントンを選択しないまま、やっていたせいでしょうね。練習嫌いで有名な子だったんですよ(苦笑)。中学に上がるとき、バドミントンやるんでしょ、という周りの空気に一瞬イヤだなという気持ちがあったのに流れでやりきってしまった。そんなこともあって中学まででいいや、となって。車いすになったのはその直後です。

ジュニア時代を振り返る山崎悠麻

 車いすになってからは、学校生活をしに行って帰るという当たり前のことに慣れるだけでいっぱいいっぱいでした。就職するまで余裕がなかったですね。妹の試合も観に行かなかったし、バドミントンのことまで頭がいきませんでした。

ただ、20歳くらいから体の機能が徐々に回復したんですよ。いま感覚がないのは膝から下。高校卒業後、公務員を目指して専門学校に入ったんですけど、車いすで入れるトイレの場所が遠くて、なんとか近くの狭いトイレに入れないかと試していたのがよかったみたいです(笑)。

 育休中だった2013年、東京で開催された全国障害者スポーツ大会を観に行ったんですよ。そこで小倉さん(理恵・日本代表選手)に「一緒にバドミントンやらない?」と声をかけられて。このときは、次の子の妊娠がわかってすぐ辞めてしまったんですけど、出産した2ヵ月後の2014年10月に復帰し、12月の日本選手権でまさかの準優勝。次の年の世界選手権でベスト8に入って「頑張れば、東京パラリンピックに行けるかも」と初めて思いました。

 趣味としてパラバドミントンを始めるとき、夫に相談したんです。子どもがいる話なので送り迎えとか、手伝ってもらわなければ始められないじゃないですか。そしたら、「やりたいことがあるならやってみれば」って。私がパラバドミントンにのめり込むようになったときは、何も言わずについてきてくれました。夫は家事は得意じゃないですけど、育児はできる人。我が家の大きなアドバンテージです(笑)。

中国選手に惨敗していっそう本気に
2016年のアジア選手権が転機となった

 「まじかー」と衝撃的でした(苦笑)。相手は当時、中学生だったと思うんです。動きが速くて、何がなんだか分からないうちに終わってしまいました。「このままでは中国に勝てない」と肌で感じました。

 より充実した練習環境を求めてNTT都市開発に転職したんです。通常の勤務は週1回に変わり、専任コーチとマンツーマンで練習できるようになりました。一生勤めるつもりだった調布市役所を辞め、競技に集中する道を選んだことは、私の大きな転機でした。

 バドミントンをやっていたので、シャトルの下まで行ってしまえば、相手コートになんとか返せる。だけど、私にはシャトルの下に入るまでが難しい。チェアワークが遅いので、体を痛めやすいという問題も抱えていました。

そこで移籍してから、体づくりと、専任コーチとの技術練習を並行して進めていきました。八の字に動きながら打つとか、細かいチェアワークは専任コーチが来てから始めたことです。厳しい球への対応力が上がりましたね。コーチとはショットのバリエーションを増やすことも頑張っています。

 シングルス準決勝では、勝ちきれなかったことが悔しくて泣きました。長いラリーで相手を押し込められたけど、最後の最後でミスが出てしまった。でも前向きに考えれば、3ゲーム20-22まで粘れたのは大きいし、女子ダブルスでも、7月から組み始めたばかりの(里見)紗李奈ちゃんと予選リーグで優勝ペアと準優勝ペアに競ることができました。

東京パラで目指すダブルスの金メダル
里見紗李奈とのペアで世界の頂へ! ©X-1

 いまダブルスの練習に力を入れているのは、出場権を確実にするためという意味が大きいですが、それだけではありません。実は昔からダブルスが好きで、東京パラリンピックで獲りたいのはダブルスの金メダルなんです。やるからにはシングルスでも勝ちたいですが、いまは優勝とは言えません。シングルスとダブルスの動きはだいぶ違うので、両方追って中途半端になるなら、より極めたいのはダブルスです。

 ドバイの結果は、本当にうれしかったです。紗李奈ちゃんとは、「やっとだね」と話しました。勝てた大きな理由はコンビネーション。女子ダブルスでは、どうしても障がいの重いWH1クラスの紗李奈ちゃんが狙われるので、私がいかにタイミングよく後ろに回って打てるかがカギになる。

アジアパラでは、ローテーションするタイミングがまったくわからなかったけど、ドバイでようやく噛み合ってきた感じです。中国選手のような速さはないぶん、私たちの強みはローテーションになるのかなと思います。

 2人でコートを補い合えれば穴が少なくなり、攻撃のチャンスも生まれます。2人のローテーションがハマったときは本当におもしろい。でも4月にドバイで勝ったから、8月の世界選手権は山場なんですよ。対策してくる中国ペアに対し、私たちがさらに上回る対応ができるか。紗李奈ちゃんとは、どうなるんだろうね、と話しています。

 いまは車いすになる前よりバドミントンが楽しいです。たくさんの人が応援してくれているので、本当に頑張りたい。私を見て障がいのある人が、楽しそうだな、私もやってみようかなと思ってくれるのが一番うれしいです。

text by Yoshimi Suzuki

photo by Hisashi Okamoto