東京・秩父宮ラグビー場に集まった1万7千人の観客が見守る中、関東大学対抗戦(対抗戦)第5試合、明大との対戦が行われた。先週の日体大戦で逆転負けを喫して対抗戦2敗となった慶大は、全国大学選手権(大学選手権)出場のためになんとか踏ん張りたい…

 
 東京・秩父宮ラグビー場に集まった1万7千人の観客が見守る中、関東大学対抗戦(対抗戦)第5試合、明大との対戦が行われた。先週の日体大戦で逆転負けを喫して対抗戦2敗となった慶大は、全国大学選手権(大学選手権)出場のためになんとか踏ん張りたい一戦だ。前半開始9分、SO中楠一期がペナルティーゴールを決め3点を先制し、幸先よいスタートを見せる。しかし、その後は明大の圧倒的なフィジカルと柔軟な攻めに対応できず、終始主導権を握られ3―40で完敗した。これで対抗戦2勝3敗、筑波大と日体大に並ぶ4位となった。慶大が所属する対抗戦Aグループでは上位4校が大学選手権の出場権を得る。早大、帝京大と強豪との試合が残る慶大には痛い敗戦となった。

 
 序盤は大観衆を背にした緊張からか、両チームともにミスが続きゲームをコントロールすることができない。前半3分には明大が絶好の位置でゴールを狙うものの決められず。そこから明大の猛攻を受けるがフランカー山本凱やフッカー原田衛などの低く鋭いタックルによる堅い守りでチャンスを作らせない。9分には、明大のオフサイドからペナルティーゴールを獲得し、今季不動の10番となった中楠が確実に決め3-0とした。昨年の対抗戦と8月の練習試合で明大を破っている慶大が、このまま試合の主導権を握るかと思われた。しかし、17分にはFWが押し込まれトライを献上。その後もSO山沢京平(明大)を中心としたBKの連係のとれた攻撃に翻弄(ほんろう)され、24分、34分と続けて被トライ。3-21となる。前半終了間際、パスを回し徐々に前進するがフッカー武井日向主将(明大)の好タックルやラインアウトのミスもあり、そのまま前半を終える。


ボールキャリーするSO中楠一期 今試合では先制点となるペナルティーゴールも決めた

 
 後半開始早々、FB沖洸成がスピードに乗ってゲインするがミスキックでボールを失う。一方で、明大は前半のBK中心の攻撃からFW中心の攻撃に切り替える。これは後半での逆転負けが多く失速しがちな慶大に対して、より確実性の高いプレーをするのが狙いだろう。その思惑通り屈強な明大FW陣に徐々に押し込まれ、後半17分、29分にトライを決められる。悪い流れを変えたい慶大はCTB三木亮弥に変えて前回の日体大戦でトライを挙げたCTBイサコ・エノサを投入する。しかし、交代で入った選手たちも見せ場を作ることができず、36分にもトライを献上し3-40でノーサイド。 


キックキャッチからゲインするFB沖洸成

 
 慶大は試合を通して明大の隙のない守備を攻略できず、何度かあったチャンスも生かせなかった。フランカー川合秀和副将は「ディフェンスではしっかりお互いコネクトして練習をしてきたがBKでその間を抜かれ」てしまったと振り返る。攻撃でのフォローが遅れ、守備ではフェイントに対応できずブレイクされるなど連係面での課題が残った。とはいえ、個人のプレーが光る場面は見られる。テーマである『UNITY』を胸に15人がリンクし、全員がオプションとなる攻撃ができるかが今後の焦点となる。そしていよいよ次戦は、帝京大に劇的な逆転勝利を収め勢いに乗る早大との対決。連係面での不安とセットプレーの弱さをこの2週間で改善し『陸の王者』の意地を見せることができるか。

(記事 末次拓斗、写真 山本小晴、塩塚梨子)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません








コメント

栗原徹H C*記者会見から抜粋

――きょうの試合を振り返って

慶応大学として明治大学にしっかり勝利したい1日でした。準備は学生とスタッフ一丸となってしてきましたが、なかなかそのプランはうまくいかずに、最後はこのような展開になってしまい非常に残念に思っています。ただ、この対戦をしっかり受け止めて成長していくための糧としていきたいと思っておりますので、今後とも応援よろしくお願いします。本日はありがとうございました。

――中楠(SO中楠一期)は春からスタートして、1年生ながらスタメンを取っていていいところもあったと思うのですが、彼の今の評価を教えてください

彼はベーシックスキルとSOとして必要な決断力のある選手だと思っています。1年生からレギュラーとして活躍していますが、まだまだミスはあります。そのため、これから成長しなければいけないところもたくさんありますが、1年生としては十分に頑張ってくれています。きょうのプレッシャーのかかるゲームでは山沢(山沢京平、明治大)選手といった素晴らしい選手との対戦となりました。このような経験を積ませてしっかり成長していってほしいと思っています。

――次戦は早稲田戦ですが、今年の早稲田の印象と早稲田戦に向けて一言

毎年強みとしている展開ラグビーは今年も早稲田の強みであると思っています。それに加えてFWの強化も進んでいますので、隙のないチームになってきていると思います。慶応としては、できることは限られているので選手一丸となって1つに絞って戦っていきたいと思っています。

フランカー川合秀和副将*記者会見から抜粋

――きょうの試合を振り返って

本当に明治に対して今週1週間、準備はしてきたつもりです。しかし、相手のセットプレーなどの部分でうまく自分たちのアタックができず、またディフェンスではしっかりお互いコネクトして練習をしてきたがB Kでその間を抜かれるといった課題がありました。次の早稲田もB Kが中心となるチームなので、そういった課題の部分にも取り組んでしっかり次の試合に臨みたいと思います。

――ディフェンスに関してなのですが、本当はどのように守ろうとして実際明治はどのようなことをしてきましたか

まずしっかりと前に出るという意味でB KのW T Bの選手が前に出て、内側は強いタックルで止められるようにしたかったが、明治の順目順目のアタックに僕たちFWが追いつけてない部分があり、そこで余られてしまって。順目に攻められた時に抑え切れなかったと思います。

――トライは取れなかったが、本当はどのようなプランで取りたかったのか、明治のどういったところで取れなかったのか教えてください

まずはしっかりセットプレーからのアタックを準備してきました。しかし、このセットプレーのラインアウトやスクラムで劣勢になってしまい、今の自分たちの思い描くようなプレーができませんでした。また、やはり明治の前に出てくるディフェンスに対して、強いブレイクダウンとディフェンスで自分たちのテンポが出せなかったことが、自分たちがやってきたことを出せなかった要因かなと思います。

――スクラムであれだけ押されたのは相当プレッシャーがかかっていたからですか

そうですね。明治もFWのスクラムを強みにしていると思うので、ぼくたちもそれに対して準備をしてきたつもりなのですが、一つ相手が上回っていたのかなと思います。

関東大学対抗戦
慶大スコア明大
前半後半得点前半後半
2119
合計40
【得点】 ▽ゴール 中楠(1PG) 
※得点者は慶大のみ記載
 
関東大学対抗戦Aグループ順位表(11月10日現在)
順位チーム試合得点失点得失トライ
明大55004045335160
早大55003665031655
帝京大540127310017342
筑波大5203167168‐125
日体大5203107275‐16813
慶大5203180909026
7青学大500540307‐2675
7成蹊大500531525‐4945
勝ち数の多い大学を上位とし、勝ち数が並んだ場合は同順位とする。
関東大学対抗戦Aグループ星取表(11月10日現在)
 帝京大早大慶大明大筑波大青学大日体大成蹊大
帝京大●32‐3411/30 11:30秩父宮11/24 14:00秩父宮◯24-22◯80‐7◯59‐30◯78‐7
早大◯34‐3211/23 14:00秩父宮12/1 14:00秩父宮◯52‐8◯92‐0◯68‐10◯120‐0
慶大11/30 11:30秩父宮11/23 14:00秩父宮●3‐40●14‐17◯35‐3●27‐30◯101‐0
明大11/24 14:00秩父宮12/1 14:00秩父宮◯40‐3◯59‐33◯63‐12◯103‐0◯139‐5
筑波大●22-24●8‐52◯17‐14●33‐5911/30 14:00江戸川11/24 14:00敷島◯87‐19
青学大●7‐80●0‐92●3‐35●12‐6311/30 14:00江戸川●18‐3711/24 11:30敷島
日体大●30‐59●10‐68◯30‐27●0‐10311/24 14:00敷島◯37‐1811/30 11:30江戸川
成蹊大●7‐78●0‐120●0‐101●5‐139●19‐8711/24 11:30敷島11/30 11:30江戸川

※秩父宮は秩父宮ラグビー場、熊谷および熊谷Bは熊谷ラグビー場、帝京大Gは帝京大学百草園グラウンド、早大Gは早大上井草グラウンド、足利は足利市総合運動公園陸上競技場、江戸川は江戸川区陸上競技場、秋葉台は秋葉台公園球技場、明大Gは明大八幡山グラウンド、菅平は菅平サニアパークM/C、筑波大Gは筑波大つくばグラウンド、敷島は群馬県立敷島公園サッカー・ラグビー場、上柚木は上柚木公園陸上競技場、たつのこFは茨城たつのこフィールド、ケーズデンキはケーズデンキスタジアム水戸、大和は神奈川大和スポーツセンター競技場、駒沢は駒沢オリンピック公園陸上競技場。