フリーの演技にも注目の集まる宇野昌磨 グランプリ(GP)シリーズのフランス杯では、自身シニア・ワーストの215.84点で8位に終わっていた宇野昌磨。GPシリーズ2戦目となる11月15日のロステレコム杯ショートプログラム(SP)は、フラン…



フリーの演技にも注目の集まる宇野昌磨

 グランプリ(GP)シリーズのフランス杯では、自身シニア・ワーストの215.84点で8位に終わっていた宇野昌磨。GPシリーズ2戦目となる11月15日のロステレコム杯ショートプログラム(SP)は、フランスではしっかり降りていた最初の4回転フリップで転倒したものの、87.29点で4位につけた。

 4回転ルッツ+3回転トーループを決めて首位発進したアレクサンダー・サマリン(ロシア)に5.52点差の結果に、「めちゃめちゃホッとしました」と明るい表情を見せた。

「4回転フリップは6分間練習ではあまり跳べていなかったし、4回転トーループも軸がちょっと左にいっていて……。ただ今回はフリップには固執せず、トーループとアクセルを試合で跳びたいという気持ちでやっていました。それでも試合となったら、フリップを失敗したらトーループの前には『もうミスはしないぞ』という気持ちにもなったし、不安や緊張もあったけど、練習してきたことをしっかり信じてトーループを跳べた。

 セカンドを2回転にしてしまったけど、練習では3回転でちゃんとできているので、そこが課題ですね。それに、そのあとのスピンはちょっとミスをしてしまって急遽変えたから、GOE(出来ばえ点)ではマイナスも付いた。そこも今後は、もっと練習に励まなければいけないポイントだと思いました」

 宇野自身がこう言うように、6分間練習では4回転トーループに2回挑んだが、ともに重心が後方にいってしまう着氷で、3回転トーループを付けられなかった。さらに、そのあとに挑んだフリップも、1回転、2回転、3回転と続き、4回転までは跳べていなかった。

 そんな状況で迎えた本番では、最初の4回転フリップは回転不足を取られて転倒。次の4回転トーループに2回転トーループを付けて連続ジャンプにしたが、次のチェンジフットシットスピンはレベル3になって0.26点の減点。だがフランス杯ではSP、フリーで3本すべて転倒していたトリプルアクセルを、2.51点の加点が付く出来にした。

 最後のステップは気持ちを入れすぎてよろける場面もあり、本人も「練習に比べてあまり深く乗れてないところが多かった」と反省する。

「4回転フリップに関してはもう、シーズン後半へ向けて上げていけばいいかなと考えている。この試合はそれ以外のジャンプを決めるのが課題だったので、とりあえずショートではそれができたかなと思います。練習でできていることが試合でどう出せるかというのを確認することが目的だったけど、前回はたくさん失敗していることもあったから、そんなに失敗を恐れるというわけでもなく、いい感じで練習できたことがよかったと思います。

 僕の場合、試合でも4回転トーループの失敗は多い。練習でできていることを当たり前にやるというのが簡単な人もいるかもしれないですが、僕にとっては難しいことなので、トリプルアクセルも含めてそれが何とかだけどできたことはホッとしています」

 こう話す宇野は、2週前のフランス杯終了後、帰国することなくスイスに行き、ステファン・ランビエルの下で練習をしてからモスクワに入ってきた。さらに今回は、ランビエールが指導するデニス・バシリエフス(ラトビア)も出場しているため、彼が宇野の公式練習や試合で付いていてくれたことも大きい。

 その効果を宇野はこう分析する。

「自分の場合は考え過ぎるところがすごくあると感じていますが、あまり英語が得意ではないので、ステファンと話をしている時、聞き取ろうということを意識して、逆に考え過ぎずにすんでいると思います。あとは『これをやろう』ということを言われた時でも、自分が『どうしようかな』と迷っていても『言われたからやるしかない』という理由づけもできる。昨日の公式練習のフリーの曲かけでも、前だったらけっこう飛ばし飛ばしでやっていたところを通してやれた。そういうところはいい所かなと思います」



宇野に帯同しているランビエル(写真左)

 4回転フリップに関しても「全日本選手権までにできるかどうかわからないけど、『たぶんできるようになる』という自信はあるので大丈夫です」と手ごたえをつかみつつある。

 今回のフリーは、フランス大会では冒頭に入れていた4回転サルコウは外し、2番目のジャンプだった4回転フリップ以下を繰り上げ、4番目に3回転ループを入れる構成の予定だ。14日の公式練習の曲かけでは、それを通しでやってほぼノーミスで滑り切っていた。  

 SPで悪夢のようだったフランス杯の結果を少し払拭できたはずだ。フリーでは逆転優勝も視野に入れた、攻めの滑りを見せてくれそうだ。