写真:2019年世界選手権での早田ひな(写真左)と伊藤美誠(写真右)/提供:ittfworldスポーツ界において、人間が審判をしている以上、判定にミスや疑惑が生じることは致し方がない。サッカーや野球でも過去に物議を醸した判定が多く存在する。…

写真:2019年世界選手権での早田ひな(写真左)と伊藤美誠(写真右)/提供:ittfworld

スポーツ界において、人間が審判をしている以上、判定にミスや疑惑が生じることは致し方がない。サッカーや野球でも過去に物議を醸した判定が多く存在する。ときに時速100キロも超えるラリーが繰り広げられる卓球も例外ではない。

このページの目次

1 ビデオ判定導入のきっかけとなるか みまひなペアの不運2 スポーツ界に残る誤審の歴史2.1 ・神の手ゴール(サッカー)2.2 ・WBC日本対アメリカ 世紀の大誤審2.3 2000年シドニー五輪柔道 篠原の銀メダル3 各スポーツの誤審対策

ビデオ判定導入のきっかけとなるか みまひなペアの不運

2019年4月に行われたハンガリーのブダペストで開催された世界卓球選手権大会での疑惑の判定を覚えているだろうか。

女子ダブルス決勝、伊藤美誠・早田ひなのペアは中国の孫穎莎・王曼昱と対峙。互角の戦いを繰り広げゲームカウント2−2で迎えた第5ゲームに事件は起きた。9−9から早田が放ったサーブを相手がレシーブミスし、貴重な1点が入ったかに見えたが、審判の判定はレット。サーブがネットに掠ってから相手コートに入ったという判定で、早田のサーブはやり直しとなった。

その直後、中国に得点され、最終的に日本ペアは2−4で敗れた。映像を見る限り、早田のサーブがネットに掠ったようには見えない。世界選手権決勝という大舞台で起きたこの混乱は大きな議論を呼んだ。

野球、サッカーをはじめビデオ判定が一般的となった現代でも、卓球界はまだビデオ判定が浸透していない。五輪や世界選手権といった大きな大会だけでもビデオ判定システムを導入すべきなのだろうか。この一件の当事者である伊藤もビデオ判定の導入に賛成の意を示している。

卓球日本代表が不利を受けた誤審は他にもある。

2014年のワールドツアー・ジャパンオープン決勝、水谷隼対于子洋(中国)の一戦だ。




写真:2014年ジャパンオープンの水谷隼/撮影:アフロスポーツ

第3ゲーム7−4で水谷がリードして迎えた場面、于子洋の打球はアウトに見えたが、入っていたとの判定。水谷が抗議をしたものの認められず、そのまま于子洋の得点となった。

水谷は試合後「明らかに入っていないボールなのに相手の得点になり興奮してしまった。あのボールが試合の勝敗を分けた。あのあとのゲームは覚えていない」とコメントしている。

スポーツ界に残る誤審の歴史

・神の手ゴール(サッカー)

1986年メキシコW杯の準々決勝、アルゼンチン対イングランド戦。アルゼンチン代表のマラドーナが左手でゴールを決めた。映像を確認すると明らかだが、審判はゴールを認めた。このゴールは「神の手」ゴールと言われ、サッカー界のレジェンド・マラドーナの最も有名なエピソードとして知られている。

後にマラドーナ本人も「(誤審を防ぐための)テクノロジーが確立されていたら、あのゴールはなかっただろう」と当時の判定が誤りであったことを認めている。

・WBC日本対アメリカ 世紀の大誤審




写真:デービッドソン主審に抗議する王監督/撮影:Newscom/アフロ

第1回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、日本対アメリカ戦で日本代表西岡剛のタッチアップの判定を巡って大誤審が発生。
勝ち越しのランナーとしてホームを踏んだはずの西岡だが、相手監督から抗議が入ると判定は一転。3塁ベースからの離塁が早かったとされアウトとなった。

貴重な勝ち越し点を取り消された日本代表は、3−4でこの試合を落とすこととなった。日本国内では判定を覆した張本人であるボブ・デービッドソン主審に対する不満の声が多くあがり、今もなお野球ファンの間では悪い意味で最も有名な外国人審判員となっている。

2000年シドニー五輪柔道 篠原の銀メダル

 
シドニー五輪男子柔道100キロ超級決勝、日本の篠原信一はフランスのドイエと対峙。

内股を仕掛けてきたドイエに篠原は内股透かしで応戦、ドイエが背中から落ち、篠原の「一本勝ち」かに見えた。だが、判定は「一本」ではなかったどころか、ドイエに「有効」の判定。

篠原は敗れ、勝ち取ったかに見えた金メダルは幻となった。国際柔道連盟は後に、ドイエの有効は誤審との見解を発表している。

各スポーツの誤審対策




写真:2019年世界選手権での早田ひな(写真奥)と伊藤美誠(写真手前)/提供:ittfworld

上記のように、スポーツに誤審はつきものだ。

審判が完璧ではないことは誰もが承知しているし、いくら審判技術の向上に取り組んでも限界があり、納得のいかないジャッジも時にはある。しかしそこでメンタルを崩さない本当の強さが選手たちには求められている。

また、昨今は各界でビデオ判定の導入などの対応が進んでいる。サッカーではVAR、野球ではビデオ判定・リクエスト制度、柔道ではジュリー(審判委員)制度などが導入されはじめた。その是非を問う声はありつつも、より正確なジャッジに近づいていることには違いない。

卓球も、国際卓球連盟(ITTF)が2019年内にもビデオ判定を試験的に導入すると発表している。選手、ファンの双方が報われるような、そのスポーツの魅力を最も発揮できる審判体制が整うことを期待したい。

文:石丸眼鏡