およそ1年後に控える第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)において、侍ジャパンの小久保裕紀監督が打線の主軸として期待している一人が、山田哲人内野手(ヤクルト)だろう。昨年11月に行われた世界野球「プレミア12」では、全8試合に3…

およそ1年後に控える第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)において、侍ジャパンの小久保裕紀監督が打線の主軸として期待している一人が、山田哲人内野手(ヤクルト)だろう。

昨年11月に行われた世界野球「プレミア12」では、全8試合に3番で出場。コンスタントにチャンスメークするなど、つなぎ役に徹し、チームの勝利に大きく貢献した。

つなぎ役の3番として存在感を発揮

プレミア12での山田の成績において、特筆すべきは出塁率だ。打率も.308と及第点と言えるが、出塁率は.526という驚異的な数字。実に11個の四球を選び、10得点を記録した。2015年シーズン、100打点という成績が表すように、ヤクルトではランナーを返す役割を担ったが、侍ジャパンにおいてはつなぎ役に徹していた。

山田は、後ろに筒香嘉智外野手(DeNA)や中田翔内野手(日本ハム)といった好打者が控えていたこと、国際試合で初対戦の投手が多く球筋を見ることが多くなったことを、つなぎ役に徹した要因としている。それにしても、日本のトップチームに初めて参加した国際大会で、チームにおける自身の役割を考え、見事に果たしてしまうのだから大したものだ。


最後に爆発するも、影を潜めたフルスイング

「偉業を達成した2選手に期待している」。プレミア12が始まる前に小久保監督はそう語っていた。2選手とは2015年シーズンにトリプルスリーを達成した山田と柳田悠岐外野手(ソフトバンク)。しかし、柳田はシーズン中に受けた死球による足の怪我の状態が思わしくなく、治療に専念するために大会直前に辞退。小久保監督には、3番に柳田を据え、山田を1番に置くという構想もあったとされるが、オーダーの組み替えを余儀なくされた。

2015年シーズンに圧倒的な数字と桁違いのパワーを見せた柳田の不在を嘆くファンも多かったが、大会が始まると打線が機能。3番の山田がチャンスを演出し、筒香がつなぎ、中田が返すという場面が幾度となく見られた。柳田の不在を感じさせない打線だったと言えばそうなるかもしれないが、メンタルの面で柳田がいるといないとでの影響もあったように思う。

例えば、柳田の代名詞でもある豪快なフルスイング。初見の投手が多く、追い込まれれば状況が不利になる国際試合において、柳田の特長でもある初球から積極的に振っていく姿勢、相手投手に脅威を与えるフルスイングは、味方打者にも勇気と積極性を与えるはずだ。確かに山田は球をよく見て頻繁に出塁したが、スラッガーとしての山田という観点で見た場合、少々物足りなかった。3位決定戦のメキシコ戦では、心理的に吹っ切れた部分からか2打席連続本塁打を放ち、最後の試合でスラッガーとしての片りん、本来の山田らしさを見せたが、準決勝の韓国戦など重要な局面で相手を仕留める一撃を期待していたファンは多かった。

山田も本来は、柳田同様に豪快なフルスイングと積極性が特長。柳田が侍ジャパンの打線に帰還し、2選手が打線に名を連ねるのであれば、柳田が山田に与える化学反応にも期待したい。


一体どこまで進化するか

山田は2015年、トリプルスリーの達成と同時に、38本塁打と34盗塁で史上初の本塁打王と盗塁王の同時獲得を果たした。首位打者は同僚の川端慎吾に。打点王も同じく同僚の畠山和洋にあと一歩及ばなかったが、シーズン終盤には、あわよくば4冠王という期待もかけられていた。ここまで高いレベルで三拍子揃った選手は、長いプロ野球史においても稀有な存在だろう。それもまだ23歳。

「自分はまだまだ伸びると感じている」「今年もトリプルスリーを狙いたい」。そう話す山田は、昨年のシーズン終盤に体力不足を感じたことから、ウエートトレーニングの頻度を増やし、食事改善による体重増加に取り組んでいる。また、昨季は守備率で菊池涼介(広島)を上回りながらも逃したゴールデングラブ賞を狙うため、2月のキャンプではグラブトスやスナップスローにも磨きをかけるなど、守備力向上にも余念がない。

「シーズンでいい成績を残さないと代表には選ばれない」と語り、第4回WBCでも日の丸を背負うことを目標とし、侍ジャパンの主力としての自覚ものぞかせる。プレミア12で体験した日の丸の重さと悔しさが、走好守で頂点を目指す山田の進化をさらに加速させるに違いない。

山田哲人 参考画像(c) Getty Images

山田哲人 参考画像(c) Getty Images

山田哲人 参考画像(c) Getty Images

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