日本で開催される米女子ツアー、TOTOジャパンクラシック(11月8日~10日/滋賀県・瀬田GC)。開幕を前にして、8月の全英女子オープンを制し、一躍女子ゴルフ界のニューヒロインとなった渋野日向子が、あらためて米女子ツアーへの即時参戦を否定…
日本で開催される米女子ツアー、TOTOジャパンクラシック(11月8日~10日/滋賀県・瀬田GC)。開幕を前にして、8月の全英女子オープンを制し、一躍女子ゴルフ界のニューヒロインとなった渋野日向子が、あらためて米女子ツアーへの即時参戦を否定した。
「一年間、アメリカツアーで戦う覚悟がまだできていない。この状態のままアメリカツアーに行っても、絶対に結果は出ないと思います。いずれは行きたいと思っていますが……もっとレベルを上げてから」
環境がまるで異なる国で戦う心の準備とともに、技術不足を、誰よりも本人が自覚している。とりわけ、グリーン周りのアプローチだ。
「レギュラーツアーに出始めた最初の頃より、高い技術を求めるようになってはいます。アプローチも少ないレパートリーでやってきましたけど、これまであまりやっていなかったロブショットも、試合で使っていかないと、アメリカツアーではとても通用しないと思います」
日本で勝利し、英国でも勝利し、一段と勝利を求められる立場となって、より高い技術の必要性を痛感しているのだろう。
飛躍の2019年シーズンも残り4戦--。渋野にとって、今季ツアー4勝目を目指す戦いであると同時に、およそ1500万円差で追う賞金ランキング1位、申ジエとの賞金女王争いを意識したマッチレースでもある。
「(期待される賞金女王への)プレッシャーはないです。先週(米ツアーのスウィンギングスカート台湾選手権に参戦して39位タイで終え)、悔しい思いをした。しっかり勉強した分、日本でいいプレーをして、上位争いができるようにしたい。一試合、一試合、がんばるだけ」
TOTOジャパンクラシックの初日は、幸先よく1番パー5でバーディースタートを決めるも、続く2番でボギー。そこから17番まで、伸ばしては耐え、耐えながら伸ばすゴルフを続け、スコアは4アンダーに達して首位に並んだ。
しかし、チャンスホールとなる最終18番パー5で3パットのボギーを叩いて、首位と2打差の通算3アンダー、9位タイで初日を終えた。
首位と2打差の9位タイで初日を終えた渋野日向子
ラウンド後、いつもの”しぶこスマイル”とは違う、どこか顔が引きつった笑みで、明らかに不機嫌な様子だった。
「情けないですね。もう笑うしかないです。イライラしかしないです。(今日一日が)台無しですね。耐えられるところは耐えられたと思うんですけど、昨日、一昨日と(パッティングの)調子がよくて、距離感も合っていたので、もう少しスコアを伸ばしたかった。もったいないです」
収穫もないわけではなかった。192ヤードの16番パー3では、グリーンを捉え切れず、ボールはグリーン奥の傾斜の強いラフに。しかしそこから、練習してきたロブショットでピンに寄せて、なんとかパーをセーブした。
「まあ、65点ぐらいですね。練習してきたアプローチですが、欲を言えばもう少し寄って欲しかった(笑)。でも、いいパーでした」
この日、同組だったのは、高校時代から憧れていたというレキシー・トンプソン(アメリカ)。米女子ツアー屈指の飛ばし屋である。
「最初(の1番ホール)から(ドライバーで)20〜30ヤードは置いていかれたので、ビックリ! 最後の18番でイーグルを決めるあたりは、スターだなって思います。私とは比べものにならない(苦笑)。あまり、話す機会はありませんでした。ずっと距離の差を感じながら回っていました。アイアンも、ドライバーも、音が違いました」
不満を残すラウンドでも、首位と2打差で初日を終えられたのは及第点だろう。
「もうちょっと気持ちよく終わりたかったですが、この悔しさを明日以降にぶつけたい。今日以上のスコアを出さないと、絶対に上位争いはできない。あと2日、60台で回りたい」
初日にトップに立ったのは、前週の樋口久子 三菱電機レディスの優勝者で、世界ランキングによって決まる五輪代表切符を、渋野(世界ランキング13位)と争っている鈴木愛(同24位)だ。鈴木は言った。
「自分自身が心から出たいというよりは、スポンサーのみなさんや、友だちたちが期待してくれているので、それに応えられるなら応えたい」
渋野は、今季の賞金女王争いにおいては追う立場でありながら、来年の東京五輪の代表権争いでは追われる立場にある。渋野にとって、今大会で米ツアー2勝目(今季ツアー4勝目)を飾ることができれば、ライバルとの差を縮め、あるいは広げることにつながる。