開催中のU-17W杯は金の卵の宝庫。スタンドには世界中のクラブチームのスカウトがずらりと80人以上並んだ。そのほかにも…
開催中のU-17W杯は金の卵の宝庫。スタンドには世界中のクラブチームのスカウトがずらりと80人以上並んだ。そのほかにもエージェント会社や代理人、代理人を目指している弁護士などが観戦。試合は選手のショールームのようだ。

スカウトたちやドゥンガから高く評価された西川潤
photo by Sato Hiroyuki
注目されているのは得点王争いをしている選手なのかといえば、実はそうではない。決勝トーナメント1回戦まで5ゴールでトップのオランダのソンチェ・ハンセンも、それを追うオーストラリアのノア・ボティチも、スカウトたちが興味を持っている上位の選手には入っていない。
逆に注目を浴びているのは、たとえば日本のGK鈴木彩艶(ざいおん)だ。彼はグループリーグで1失点もしていない。おかげで日本は24カ国中、唯一、無失点で決勝トーナメントに勝ち上がった。無失点がいかに貴重かは、ここまでのデータを見ればよくわかる。グループリーグ全36試合で、決められたゴールは123と、非常に多いからだ。
インテルのユースチームに所属するイタリアのデニャンド・ウィリー・ノントは今大会最年少の選手。ソロモン諸島相手にすばらしいゴールを決めたが、この時、彼はまだ15歳と11カ月だった。ここまですでに3ゴールをあげ、イタリア代表でレギュラーの座をしっかりとつかんでいる。パワフルでプレーのセンスもあり、なによりそのスピードには圧倒される。
ブラジルのガブリエル・ヴェロンは国内では人気の注目株だ。すでに名門パルメイラスに所属し”ガブリエル・ジェズス以来の有望選手”とも言われている。パルメイラスはすでに彼が契約途中で移籍する場合の違約金を6000万ユーロ(約72億円)までに釣り上げた。大会後はトップチームでプレーをするはずだ。ブラジルからのもうひとりはカイオ・ジョルジ。すぐにでもA代表に選ばれておかしくない選手だ。ネイマール、ロビーニョなど多くのスター選手を輩出しているサントスの所属で、U-15ブラジル代表時代には3試合で4ゴールを決めた実績を持つ。
フランスのアルノー・カリムエンド=ムインガは誰もが大会のトップ選手に選ぶストライカーだろう。韓国戦での彼のボールポゼッションとスピードあるプレーは、まるでワンマンショーのようだった。同じくフランスのアディル・アウシシュも危険なストライカーだ。2人は同じパリ・サンジェルマンの所属で、すでにトップチームでプレーしている。
アメリカは残念ながらグループリーグで敗退してしまったが、キャプテンを務めていたジョヴァンニ・レイナは、確実に世界で注目される選手となるだろう。すでにドルトムントに籍を置いており、冷静で正確、インテリジェンスもある選手だ。
アルゼンチンのマティアス・パラシオスは多くのヨーロッパのクラブが獲得を狙っている選手だ。勇敢で、攻撃的、彼がいるのといないのではチームは大きく違ってくる。
また、グループFを1位通過したパラグアイのスターはMFのフェルナンド・オベラール。すべての動きは彼なしには語れない。パラグアイリーグでは最年少のプロ選手であり、14歳9カ月で最初のゴールを挙げている。
メキシコのスター、エフライン・アルバレスはアメリカ生まれで、ロサンゼルス・ギャラクシーで育ち、今ではチームの期待の若手だ。ボールを持った彼は常に危険で、今大会で最も得点差が開いた8-0の勝利(ソロモン諸島戦)の立役者でもあり、この得点差のおかげでメキシコは3位で決勝トーナメント進出を決めた。
優秀なのはビッグチームの選手だけではない。アンゴラの10番、ジートは、今大会のグループリーグでの最優秀選手だと私は思う。聡明な選手で、もし私が監督なら何が何でも手に入れたいと思うだろう。彼はいついかなる時も自分が何をすべきかを的確に理解している。
ブラジルを沸かせた日本人選手にも触れないわけにはいかない。日本の2トップ、西川潤と若月大和だ。大会を取材している記者や各チームの監督、スカウトたちの中で、彼らのプレーに驚かされなかった者はいなかった。また、彼らがプロチームに所属しておらず、いまだ学生であることが、さらに人々を驚かせた。
西川は”創造者”だ。日本代表のすべての動きは彼から始まる。敵のDFより数的に劣る時、彼は常に最高のスペースを見つけ出す。そして何よりその強力なシュートは敵にとって脅威だった。西川に比べると若月はよりワイルドだ。ピュアな闘志を常に持っている。思考能力の早さと、スピードの速さが、彼を危険なストライカーに仕立て上げている。個人的にはそこに唐山翔自も付け加えたい。今の調子で成長を続ければ、世界でも通用する選手になるのではないかと思う。
元ブラジルのキャプテン、ドゥンガも日本代表に驚かされたひとりだ。彼は西川を絶賛していた。
「西川は日本代表のなかで最も優れたプレーを見せていた。まさにサッカーをするために生まれてきたような選手だ。これから先が楽しみだ。スピード、危険性においては若月の方が上だが、西川はより多くの重要な資質をそなえている。彼らのような選手がいる日本は、今後が非常に楽しみだ」
最後に、私が選んだグループリーグのベスト選手を紹介しておこう。
1位 ジート(アンゴラ)
2位 アルノー・カリムエンド=ムインガ(フランス)
3位 西川潤(日本)
4位 マティアス・パラシオ(アルゼンチン)
5位 エフライン・アルバレス(メキシコ)
6位 若月大和(日本)
7位 タラス・マグノ(ブラジル)
8位 フェルナンド・オベラール(パラグアイ)
9位 ジョヴァンニ・レイナ(アメリカ)
10位 ガブリエル・ヴェロン(ブラジル)
11位 デニャンド・ウィリー・ノント(イタリア)
12位 カイオ・ジョルジ(ブラジル)
13位 鈴木彩艶(日本)
14位 アディル・アウシシュ(フランス)
15位 ロベルト・ナバロ(スペイン)
これらの選手たちの名前をぜひ覚えておいてほしい。数年後には各国の新聞のトップを飾るかもしれない。