フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第3戦・フランス杯。今季GP初戦となる宇野昌磨は10月31日、開催地のグルノーブルで公式練習を行なった。

 コーチ不在という異例の状態でシーズン3試合目を迎える宇野は「(前の試合だったフィンランディア杯後の練習で)できることはやってきたんですけど、自分が思っていた最低は脱することができた。4回転サルコウの練習も始めることができました。なかなか4回転フリップが安定しないところはありますけど、決して跳べないわけではない。自分の調子がすごくいいわけではないけど、この試合に向けて練習を積み重ねてきたので、やっとスタート地点に立ったかなという実感はある」と、意気込みを語った。



フランス杯の公式練習に臨んだ宇野昌磨

 この日の公式練習では、まだ氷としっくりきていない様子が見られた。4回転ジャンプの確率が悪く、とくに4回転フリップはなかなか跳べない。パンクしたり、空中で体がばらけてステップアウトになったり、両足着氷だったり、転倒したりを繰り返していた。だが、最後は構成に組み込んでいるジャンプをしっかりと成功。4回転ではフリップ、トーループのほかに今季習得しつつあるサルコウ、そして、トリプルアクセルの単独と3回転アクセル+1回転オイラー+3回転フリップをクリーンに跳んでみせるなど、トップスケーターの実力をアピールした。曲かけの通し演技は流す程度の軽目の調整となった。

 練習でなかなかはまらなかった4回転サルコウについては、フランス杯のフリーで導入するつもりで練習してきたという。

「フリーで跳びたいと思っていますが、まず、サルコウを成功させるよりも、そのあとのジャンプであるフリップやトーループで失敗しないようなことを考えています」

 今大会の優勝争いは、スケートアメリカを3連覇したネイサン・チェン(アメリカ)と宇野の一騎打ちとなりそうだが、宇野の発言はやや控えめだ。

「今季はいろいろあり、調整が遅れたのもあったんですけど、だんだん調子が上がっていけばいいかな、と。外国人選手のように終盤に向けて調子を上げていくようにできればいいかな。ただ、どうしても慣れていないので、調子が悪い自分を受け入れられなくて……。

 今季は自分にそんなに期待していないし、いまの僕はネイサン選手と争えるほどのものは持っていないし、たとえ順位が上だったとしても、それは偶然であって、決して僕の実力が上回っているとは思わない。まずは自分がやりたいこと、やらなきゃいけないこと(をやり)、あとは少しでもスケートを楽しめたらなと思います」

 宇野にとって、まさに今季のテーマは「楽しむこと」。そして、追い求めるものは「理想の表現力」だという。ショートプログラム(SP)はシェイ=リーン・ボーン氏、フリーはデビッド・ウィルソン氏と、初めて海外の著名振付師と組むことで、また新たな宇野の魅力を引き出してもらおうとしている。

「(表現面の)手応えのあるところはあります。ただ、やっぱりジャンプを入れるとなかなか難しいところがあります。SPだと、どうしてもジャンプが終わるまでが踊りきれないところがあったりとか、ジャンプを入れた時に体力がなくてステップも微妙なものになったりとか。手応えを感じていながらも、(ジャンプと表現面を両立させることの)難しさを痛感しているところですね。

 フリーでもいいものができていると思っているんですけど、通した時に、なかなか自分の求めているものに届かないことが多いなと感じています。それでも、いろいろな新しいことを取り入れて、成長した自分らしい演技を見せられたらいいなと思っています」

 宇野は、順位や得点とは別の次元で臨もうとする今季に懸ける強い信念と意欲を口にした。