三原舞依の欠場でスケートカナダ出場のチャンスが巡ってきた本田真凜。だが、予想外の厳しい状況のなかで戦うことを強いられた。現地到着後の22日夕方に、田中刑事らと乗っていたタクシーが事故を起こしてしまい、後部座席の中央にいた本田は右脛とおでこを強打し、首にも影響が出たのだ。



アクシデントがあったが、スケートカナダで競技をやり切った本田真凜

 それでも「どうやって自分が気持ちを強く持てるかを、試されているんだという気持ちで頑張りたい」と語り、競技初日のショートプログラム(SP)に臨んだ。

 最初の3回転ループからの連続ジャンプは決めたかに見えたが、セカンドの3回転トーループは回転不足の判定。さらに、次の3回転フリップが2回転になって0点になるミス。後半に入ってからのダブルアクセルから何とか立て直したが、59.20点で10位発進となってしまった。

「事故のあとはちょっとした音や光が怖くなる瞬間があったりして、スピンもこの3日間は1回も練習できていなかった。緊張より不安という感じで演技をしました。でも、首以外はアドレナリンで痛みもほぼなかったので、思い切り滑れたんじゃないかなと思います。もう少ししたら演技のなかの悔しい部分がどんどん出てくるかなと思うけど、今はとりあえずホッとしています」

 こう話していた本田は、夜になるとめまいのような症状も出てきて体調を崩した。スタッフにも無理をしないほうがいいとアドバイスをされ、翌日の試合前は、ホテルから会場に向かうバスの出発時間30分前まで、出場するかどうか迷ったという。

「体はどんどんマシになってきていたし、痛みは自分で我慢できるけど、めまいのような症状は自分でコントロールできないのですごく不安でした。でも、自分には棄権する勇気がなかったので、出ようと決めました」

 フリーのジャンプ構成は、本田武史コーチが6分間練習の直前に手直ししたルッツを外した構成に従った。結局、最初の3回転フリップがノットクリアーエッジの判定になり、最後はレイバックスピンの予定をコンビネーションスピンにしてしまったために0点となったが、連続ジャンプを3回転+2回転とダブルアクセル+1オイラー+2回転サルコウにした構成を滑り切り、120.06点を獲得。合計を179.26点にして6位まで順位を上げた。

 演技後の本田は、「今日はアドレナリンの塊のような感じでした」と明るい表情を見せた。

「自分に『万全な状態だ』と言い聞かせて、強い気持ちを持って最初からできた。終わってみれば心配だった体力の部分でも大丈夫だったので、練習してきた貯金がまだ残っているんだなと思えた。得点も去年頑張っていた時よりもよかったので、次はもっと万全に持っていって高い目標を立てられるようにしたい」

 本田は、2週間前の練習でも頭を打って救急車に乗って病院へ行き、脳震とうと診断されていたという。そこから回復した今大会も、事故で救急車に乗ることになり、「人生で何回かしかしないような機会をもうこれで使い切ったなという感じです。自分でもどう対応すればいいかわからなかったけど、今回は本当に、こういう演技ができたのが自信になるのでよかった」と笑顔で語った。

 次の出場は11月8日からの中国杯。まずは体を回復させることが重要だが、演技構成は元に戻していきたいとも言う。

「今回はレベルを落とした構成だったけど、今回の演技でいいイメージができるようになったので、またジュニアの最初のころのように、元気いっぱいの演技を復活できるように頑張りたいと思います。

 今日も滑る前までは『スケートが自分に合っているのかな』とか、『ほかにできることを探さなければいけないかな』などと考えていたけど、今はスケートを突き詰めていきたいと思うようになった。まだトップのレベルではないけど、今回の演技のよかったところを伸ばしていければと思います」

 苦しんだグランプリシリーズの初戦で、本田は次の戦いに向かう勇気と自信を手にした。